Appleは、サブスクリプションサービス「Apple News+」の新機能として、レシピコンテンツを提供する「Apple News+ Food」を発表した。Apple News+の契約者向けに提供され、提携メディアによる厳選されたレシピを閲覧・保存できる。
iOS 18.4およびiPadOS 18.4の一部として4月にリリースされ、米国、英国、カナダ、オーストラリアの4カ国で利用可能となる。Appleは独自のレシピアプリを開発するのではなく、ニュースプラットフォーム内にレシピ機能を統合する形を選択した。
この新機能には、AllrecipesやBon Appétitを含む30以上のパートナーメディアが参加し、数万件のレシピを提供する。Apple Newsアプリの「Today」フィードから利用でき、料理ジャンルや調理時間などのフィルター検索が可能。
レシピの読みやすさを重視し、広告なしのクリーンなUIや「クッキングモード」も搭載される。一方で、ユーザー自身のレシピ追加機能やWeb・SNSからのレシピインポート機能は含まれず、Appleのエコシステム内に閉じたサービスとなる。Appleのこの新たな動きが、レシピアプリ市場にどのような影響を与えるのか注目される。
Apple News+ Foodがもたらす新たなレシピ体験とは
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Apple News+ Foodは、これまでのレシピアプリとは異なるアプローチを取っている。一般的なレシピアプリでは、ユーザーがWeb上の多様なレシピを収集し、個別に管理する仕組みが多い。しかし、AppleはApple News+の枠組み内で、厳選されたメディア提供のレシピのみを扱うことで、クオリティと一貫性を重視した。広告なしのシンプルなUI、キュレーションされたレシピコレクション、フィルター検索など、ユーザーにとって使いやすい設計が施されている。
また、「クッキングモード」やタイマー連携など、調理時の利便性を向上させる機能も追加されている。レシピを読みながら操作しやすいフルスクリーン表示や、タップで直接タイマーを起動する仕組みは、スマートフォンやタブレットを活用する現代の料理スタイルに適している。特に、Appleのエコシステムに組み込まれることで、他のApple製品との連携が期待される点も特徴的だ。
一方で、ユーザーが自由にレシピを追加できない点や、SNSのレシピを取り込めない点は、柔軟性の面で制限がある。これまでのレシピ管理方法と異なるため、既存のレシピアプリユーザーがどのように受け入れるかが注目される。Appleの意図は、単なるレシピ収集アプリではなく、編集部が厳選した高品質なレシピコンテンツを提供することで、料理に関する新たな体験を生み出すことにあると考えられる。
Apple News+ Foodのレシピ提供戦略と独立系アプリへの影響
Apple News+ Foodは、独立系のレシピアプリとは異なり、完全にパートナーメディアのレシピに限定している。AllrecipesやBon Appétit、Epicuriousといった著名なメディアのレシピが一元的に閲覧できる点は、従来のレシピアプリとは一線を画す。Appleは、Web上に散在するレシピを統合するのではなく、信頼性の高いソースのみを厳選することで、質の担保を図っている。
また、レシピ提供の仕組みとして、AppleはGoogle検索を介さず、Apple Newsアプリ内で完結する形を取っている。これにより、パートナーメディアは検索流入に依存せず、Apple News+の購読者を直接ターゲットにできる。これは、近年Google検索のアルゴリズム変更によってWebサイトの訪問数が減少する中で、メディア側にとって新たな読者獲得の手段となる可能性がある。
しかし、この戦略は独立系のレシピアプリにとって厳しい競争環境をもたらす。特に、無料で利用できるレシピアプリは、Appleの影響力が強まることでユーザーを奪われる可能性がある。また、個人の料理ブロガーやSNSでレシピを発信するクリエイターにとっても、Apple News+ Foodのようなプラットフォームに参加しない限り、露出機会が制限される懸念がある。Appleがどこまでこの分野に踏み込むかによって、今後のレシピコンテンツ市場の構造が大きく変化するかもしれない。
Apple News+ Foodの今後の展開とエコシステムの強化
Apple News+ Foodは、単なるレシピ検索ツールではなく、Appleのエコシステム全体に影響を与える可能性がある。Appleはこれまで、iOS 18の「Passwords」やスポーツ情報アプリ「Sports」など、特定のニーズに応じたサービスを次々と展開してきた。Apple News+ Foodもその一環として、ライフスタイルの一部に組み込まれるよう設計されている。
今後、Appleはこの機能をさらに拡張する可能性がある。例えば、Apple Watchとの連携により、レシピの工程ごとに通知を送る機能や、HomePodと連動して音声操作でレシピを確認できる仕組みが考えられる。また、Apple Healthと連携し、カロリー管理や栄養バランスを考慮したレシピ提案機能が追加される可能性もある。
ただし、現在のApple News+ Foodはサブスクリプションサービスの一部であり、月額料金が発生する点が普及の鍵を握る。すでにApple News+を利用しているユーザーにとっては追加コストなしで楽しめるが、新規ユーザーにとっては価格が障壁となる可能性がある。Appleが今後、より多くの国やプラットフォームに展開し、機能を拡張していくことで、どのような進化を遂げるのか注目される。
Source:TechCrunch