Appleが新型iPad miniを発表し、「高負荷のグラフィックを必要とするAAAゲームもプレイ可能」と主張している。しかし、実際のゲーム体験はどうなのか。A17 Proチップを搭載しているものの、これまでのiPhone 15 Proでのテスト結果から、その性能には疑問が残る。特に、大型ディスプレイと低いピクセル密度が影響を及ぼす可能性が高い。
A17 Proチップの実力とは
新型iPad miniにはA17 Proチップが搭載されており、Appleはこれを「高負荷のグラフィックを必要とするAAAゲームでも快適にプレイできる」とアピールしている。しかし、このチップの実力については疑問の声もある。
iPhone 15 ProでもA17 Proチップを使用しており、いくつかのAAAタイトルでのパフォーマンスに課題が見られたのだ。特に「Resident Evil Village」や「Assassin’s Creed Mirage」などのゲームでは、グラフィック設定を高くすると30fps以下にフレームレートが低下し、プレイの快適さが損なわれたとの報告がある。
この問題は単にフレームレートだけでなく、フレームタイムの不安定さにも関連している。フレームタイムとは、GPUが1フレームを描画するのにかかる時間であり、これが安定しないとカクつきが発生する可能性が高まる。
AAAゲームのような高負荷のタイトルにおいて、A17 Proチップの性能は限界を感じさせる結果となっている。
実際のゲームプレイにおけるパフォーマンス問題
A17 Proチップを搭載したiPhone 15 Proでは、いくつかの人気AAAゲームのプレイ中にパフォーマンスの問題が確認されている。例えば「Resident Evil Village」では、設定を最高にすると30秒以内にクラッシュすることがあり、低めの設定でもフレームレートの変動が激しいとの報告があった。
「Assassin’s Creed Mirage」でも、30fpsの制限下でプレイしているにもかかわらず、高密度のエリアでは20〜25fpsにまで落ち込むことがあった。さらに、「Death Stranding」では、比較的安定した30fpsを維持できる場面もあったが、建物の周辺や車両の移動中にはパフォーマンスが著しく低下する傾向が見られた。
これらの問題は、AAAゲームのグラフィックを犠牲にしてプレイ可能な状態にするための妥協策であるが、それでもなお十分な快適さを提供できていないのが現状だ。
iPad miniのディスプレイがもたらす課題
iPad miniのディスプレイは8.3インチで、解像度は2266×1488ピクセル、ピクセル密度は326ppiである。一方、iPhone 15 Proのディスプレイは6.1インチで460ppiと高いピクセル密度を誇る。つまり、iPad miniでは同じゲームをプレイしても、画面サイズが大きい分、グラフィックの粗さがより目立つ可能性がある。
ディスプレイが大きくなると、グラフィック設定を低くしても細部の劣化がより顕著に現れるため、プレイヤーにとっては視覚的な体験が劣化する恐れがある。さらに、iPad miniの画面が大きいため、処理するべきピクセル数も多くなり、その分パフォーマンスへの負担が増すことになる。これらの点から、iPad miniでのAAAゲームプレイはより厳しい条件に直面することが予想される。
モバイル向けゲームとAAAタイトルの違い
Appleは新型iPad miniについて、AAAゲームのプレイが可能であると主張する一方で、その具体例として「Zenless Zone Zero」などのモバイル向けに最適化されたゲームを挙げている。これらのゲームはもともとモバイルデバイス向けに開発されており、AAAゲームのように高いグラフィック負荷を想定していない。
そのため、パフォーマンスが安定しやすい。一方、AAAゲームは本来、専用の高性能ハードウェア向けに設計されているため、モバイルデバイスではパフォーマンスの劣化を避けられないことが多い。Appleの主張は、一部のモバイルゲームの快適な動作を根拠にしているが、AAAゲームのような高負荷なタイトルにおいて同様の体験を期待するのは難しい現実がある。