Qi2は、磁石を利用した「マグネティック・パワー・プロファイル(MPP)」を採用し、充電器との位置合わせを最適化することを目的としたワイヤレス充電規格である。しかし、2024年8月には磁石を搭載しないQi2対応デバイスが登場する可能性が指摘され、ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(WPC)の対応が二転三転したことで、消費者の混乱が深まっている。

さらに2025年1月には、「Qi2 Ready」という新たな規格が登場し、磁石を内蔵せずともQi2技術を利用可能とする方針が打ち出された。これにより、当初のQi2の定義が曖昧になり、実際にどのデバイスが完全なQi2互換なのか分かりづらくなっている。

この問題の中心にいるのが、サムスンのGalaxy S25シリーズだ。同シリーズはQi2 Ready対応の可能性が指摘されているが、公式の認証リストや仕様には明記されておらず、実際の互換性が不透明なままとなっている。サムスンの発言とWPCの見解が食い違っているため、Qi2の未来はますます複雑なものとなっている。

Qi2の定義が揺らぐ?WPCの対応がもたらす混乱

Qi2は、ワイヤレス充電の標準規格として業界を統一するはずだった。しかし、ワイヤレス・パワー・コンソーシアム(WPC)の発表が相次ぎ、Qi2が何を意味するのか分かりにくくなっている。特に「Qi2 Ready」という新たなカテゴリが追加されたことで、消費者が誤解する可能性が高まっている。

本来、Qi2は「マグネティック・パワー・プロファイル(MPP)」を前提とし、磁石を用いた位置合わせによる効率的な充電を特徴としていた。しかし、2024年8月には「エクステンデッド・パワー・プロファイル(EPP)」のデバイスもQi v2.0に準拠する可能性が浮上し、Qi2が磁石を必須とするかどうかが曖昧になった。さらに、2025年1月に「Qi2 Ready」という新たな規格が発表され、Qi2技術を採用しながらも磁石を搭載しないスマートフォンが登場する可能性が示唆された。

WPCは「Qi2 Ready」デバイスについて、特定のアクセサリーを使用することで磁石による充電が可能になると説明しているが、消費者にとってはどのデバイスが完全なQi2互換なのか見分けがつきにくい状況となっている。Qi2ロゴの有無によって互換性が判断できた従来のシステムと異なり、追加の情報を確認しないとQi2対応の範囲を理解できないのは問題だろう。今後、WPCがどのような対応をとるのかが、Qi2の未来を左右することになりそうだ。

Galaxy S25のQi2対応は本当に「完全互換」なのか?

サムスンのGalaxy S25シリーズは、Qi2技術を採用する最初のAndroidスマートフォンの一つとされている。しかし、その実態は単純ではなく、Qi2の「完全互換」と言えるのか疑問が残る。

WPCのデータベースにはGalaxy S25 Ultraが「Qi2.1認証済み」と記載されているが、「Qi2 Ready」についての言及はなく、磁石の有無に関する明確な情報も提供されていない。さらに、サムスンはGalaxy S25シリーズについて「最大15WのQi2ワイヤレス充電をサポートしている」と述べているが、詳細を確認すると「ケースを利用すれば」という但し書きがついている。これが「Qi2 Ready」の仕様に基づくものなのか、それとも従来のQi2とは異なるものなのかは不明瞭だ。

また、WPCはかつてGalaxy S25向けの「Qi2.1認証済みサムスン純正マグネティックケース」をリストに掲載していたが、その後削除したという事実もある。これにより、Galaxy S25が磁石搭載のQi2デバイスなのか、それとも磁石非搭載の「Qi2 Ready」なのか、公式情報だけでは判断が難しくなっている。

Qi2は本来、充電の利便性を向上させるための規格だったが、Galaxy S25のケースでは、かえってQi2の定義が不明瞭になり、消費者が誤った認識を持つリスクが高まっている。サムスンやWPCが明確な説明を行わない限り、Qi2の「互換性」という言葉の意味すら曖昧になりかねない。

ワイヤレス充電の未来はどこへ向かうのか?

Qi2がワイヤレス充電の標準として広く普及するはずだったが、規格の変更と定義の曖昧さによって状況は複雑になっている。このままでは、ワイヤレス充電の未来に混乱をもたらす可能性がある。

Qi2の登場により、AppleのMagSafeとの互換性が強化されることが期待されていた。しかし、Androidメーカーが統一した基準でQi2を採用しなければ、AppleとAndroidのワイヤレス充電が完全に統合される未来は遠のくかもしれない。特に、今回の「Qi2 Ready」のような例外が登場することで、Qi2が単なる「ワイヤレス充電の一バージョン」になってしまう可能性もある。

また、Qi2は最大15Wの充電速度を提供するとされているが、一部のAndroidデバイスでは独自の急速充電技術が用いられ、Qi2よりも高い出力が可能なものもある。そのため、消費者がQi2対応デバイスを選ぶメリットが明確でなくなる可能性も考えられる。

ワイヤレス充電の未来を考える上で重要なのは、規格の統一と明確な情報提供だ。WPCやスマートフォンメーカーが一貫した仕様と説明を行わなければ、Qi2は利便性の向上どころか、消費者の混乱を招く結果になりかねない。今後、Qi2がどのように進化していくのかが、ワイヤレス充電の普及を左右する大きな要因となるだろう。

Source:Android Central