インテルは、高性能コアを搭載したXeon 6500および6700シリーズを発表した。この新CPUは最大86コアを搭載し、AIやネットワーキング、ストレージアプリケーションを想定した設計となっている。8チャネルのDDR5メモリサブシステムや最大136本のPCIeレーンを備え、さまざまなアクセラレータと組み合わせた高性能システム構築が可能だ。
1Pから8Pまでの構成に対応し、エントリーレベルのシングルソケットからエンタープライズ向けの大規模システムまで幅広く適用できる。最大4TBのメモリをサポートし、DDR5-8000 MRDIMMにも対応。新たに採用された「Intel TDX Connect」により、CPUとPCIeデバイス間の暗号化接続も可能となった。
このチップは従来のXeonと比べ、ワークロードによって最大54%のパフォーマンス向上を実現するとされる。一方で、超高密度プロセッサを求める用途には適さない可能性もある。エンタープライズ向けの新プラットフォームとして、既存のXeon 6900シリーズとどう棲み分けされるかが注目される。
最大86コアと強化されたメモリ性能がもたらす新たな可能性
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インテルのXeon 6500/6700シリーズは、最大86コアを搭載し、シングルソケットから8ソケット構成まで対応する設計となっている。このコア数は、エンタープライズ向けのワークロードやクラウド環境でのパフォーマンス向上を意識したものだ。特に、メモリ帯域幅の向上が顕著で、DDR5-8000 MRDIMMを含む8チャネルのDDR5メモリに対応しており、最大4TBのメモリ容量を確保できる。
また、PCIeレーンの拡充も見逃せないポイントだ。シングルソケット構成で最大136本、マルチソケット環境では88本のPCIeレーンを提供し、CXL 2.0にも対応している。これにより、大規模なストレージやアクセラレータカードの活用が容易になり、特にAI処理やデータベース負荷の高いシナリオで効果を発揮する。
コアごとのパフォーマンス向上もポイントであり、インテルは従来のモデルと比較して14%から54%の性能向上を実現したと主張している。ワークロードによる差異はあるものの、これにより複雑な計算処理や並列処理の最適化が期待される。一方で、1ソケットあたり128コアの超高密度構成が求められるユースケースには向かない可能性があるため、用途によっては他の選択肢も検討が必要だ。
Xeon 6500/6700シリーズが採用する新技術「Intel TDX Connect」とは
Xeon 6500/6700シリーズの新機能のひとつに、「Intel TDX Connect」がある。この技術は、CPUとPCIeデバイス間の暗号化通信を可能にし、機密性の高いデータを外部アクセラレータと安全にやり取りすることを目的としている。
特に、AIワークロードではGPUなどの外部プロセッサとのデータのやり取りが多く、この暗号化接続によりセキュリティを維持しつつオーバーヘッドを最小限に抑えることができる。また、従来のセキュリティ機能と比較して、Intel TDX ConnectはPCIeバス経由のデータ転送時に暗号化を施すため、メモリ上のデータを直接保護する仕組みとは異なる。
これにより、AI処理だけでなく、ストレージやネットワークアプライアンスにも適用でき、クラウド環境やエッジコンピューティングでのデータ保護に大きなメリットをもたらす。この技術の導入により、インテルはセキュリティ機能の強化とともに、外部アクセラレータとのシームレスな統合を進める狙いがあると考えられる。
特に、AIモデルの学習や推論では、大量のデータがCPUとGPU間でやり取りされるため、この種の暗号化通信は重要な意味を持つだろう。今後、クラウド環境や企業向けデータセンターでの採用が進む可能性がある。
Xeon 6900シリーズとの違いと用途の棲み分け
Xeon 6500/6700シリーズは、パフォーマンスコアを搭載しつつも、より高価なXeon 6900シリーズとは異なる用途を想定している。6900シリーズは、よりハイエンドなワークロード向けに設計されており、最大8ソケット構成の大規模なエンタープライズ環境での使用を前提としている。
対して、6500/6700シリーズは、比較的コア数を抑えた設計であり、特定のワークロードに最適化されている。この違いは、主にターゲットとする市場によるものだ。例えば、AI推論やクラウドアプリケーション、データ処理などではXeon 6500/6700シリーズの構成で十分な性能を発揮できる。
一方で、膨大なスケールのエンタープライズワークロードや、極端に高い並列処理を必要とするタスクでは、Xeon 6900シリーズのほうが適している可能性が高い。インテルがこのような棲み分けを行う背景には、市場におけるニーズの細分化があると考えられる。
大規模データセンターやAI処理に最適化されたプロセッサを求める企業が増える一方で、特定用途に特化したコストパフォーマンスの高いCPUも求められている。Xeon 6500/6700シリーズは、そうしたバランスを重視した選択肢のひとつとなり得るだろう。
Source:Tom’s Hardware