AMDは、サンフランシスコで最新のチップセットを発表し、ビッグAIの実装に向けたデータセンター技術を包括的に提供する姿勢を強調した。CEOのリサ・スーは、AIアクセラレータ市場が2028年までに5000億ドル規模に成長すると予測し、AMDのEPYC CPUおよびInstinct GPUポートフォリオを強化する計画を発表した。NvidiaやIntelに対抗する形で、AMDは革新とオープンエコシステムの重要性を訴えた。

AMD、ビッグAI市場への戦略的進出を発表

AMDは、サンフランシスコで最新のEPYC CPUおよびMI325X GPU・DPUを発表し、ビッグAIの実装を進めるデータセンター技術の包括的なプロバイダーとしての地位を確立する意向を示した。CEOのリサ・スーは、AMDが唯一、CPU、GPU、ネットワーキングソリューションをすべて提供できる企業であるとし、AIアクセラレータ市場が2028年までに5000億ドル規模に達すると予測している。スーは、製品のリリーススピードをさらに加速させ、特にNvidiaとの競争に対抗することを強調した。

AMDの戦略は、EPYCやInstinctポートフォリオを通じた技術革新の推進に加え、オープンなエコシステムのパートナーとの協力を通じた業界をリードするネットワーキングソリューションの提供にある。Nvidiaの統合システムとは対照的に、AMDはオープンなアプローチを採用し、パートナーエコシステムの重要性を強調している。このアプローチにより、より柔軟なAIソリューションが可能となり、競争力をさらに高めると考えられる。

EPYC 9005シリーズCPUの性能とAI対応の向上

AMDは、新しいEPYC 9005シリーズのCPUを発表した。このシリーズは、「Zen 5」コアアーキテクチャを採用し、最大192コアのCPUを提供する。特に、GPUを活用したAIソリューションに最適化された64コアのEPYC 9575Fは、AIワークロードに必要なデータ供給能力を最大化するため、最大5GHzまでブーストすることができる。この性能は、競合他社のプロセッサよりも28%高速な処理を可能にする。

「Zen 5」アーキテクチャは、企業やクラウドワークロードで最大17%のIPC(命令あたりのクロック数)向上を提供し、AIや高性能コンピューティング(HPC)では37%の向上を実現している。EPYC 9965は、MetaのLlama 3.1-8BのようなAIモデルで1.9倍のスループット性能を提供し、エンドツーエンドのAIワークロードで3.7倍の性能を発揮する。これにより、AIのトレーニングや推論の効率が大幅に向上し、ビッグAIの実装を加速させる。

MI325X GPU、Nvidiaを凌駕するメモリと性能

AMDは、CDNA 3アーキテクチャに基づいたInstinct MI325X GPUを発表し、業界トップクラスのメモリ容量と帯域幅を実現した。このGPUは、256GBのHBM3Eメモリを搭載し、6.0TB/sの帯域幅を提供する。NvidiaのH200 GPUと比較して、1.8倍のメモリ容量と1.3倍の帯域幅を持つことが特徴だ。また、MI325Xは、理論上のFP16およびFP8の計算性能でH200を1.3倍上回る性能を誇る。

AMDの発表によれば、この性能は、Mistral 7BやLlama 3.1 70BなどのAIモデルの推論性能をH200よりも最大1.4倍向上させる結果をもたらしている。MI325Xは、2024年第4四半期に生産が開始され、2025年第1四半期にはDell、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoなどのプラットフォームプロバイダーからシステムが利用可能になる予定である。AMDは、GPUの価格については未発表であるが、その圧倒的な性能により、競争力の高い製品となることが予想される。

パートナーエコシステムでのオープン性を強調

AMDの新たな戦略の特徴は、オープンなエコシステムを強調する姿勢にある。特に、Nvidiaが統合型のシステムを構築しているのに対し、AMDはパートナーと連携し、各社の強みを活かした柔軟なAIインフラストラクチャを提供する方針を示している。CEOのリサ・スーは、AMDがデータセンター向けの包括的なソリューションを提供することができる唯一の企業であるとし、他社のパートナーと協力しながら、業界をリードするAIソリューションを提供していくと語っている。

また、AMDはUltra Ethernet Consortium(UEC)に対応した製品を発表しており、このオープンなネットワーク技術を活用してパフォーマンスを向上させる方針である。特に、Pensando DPUとAI NICは、AIクラスタとネットワーク間のデータ転送を効率化し、次世代AIネットワークを支える重要な技術として注目されている。このようなオープンで柔軟なアプローチにより、AI市場でのさらなる競争力強化が期待されている。