MicrosoftはmacOS向けのOneDriveに、Windows版には実装されることのない2つの新機能を導入した。今回のアップデートにより、macOS版OneDriveでは特殊文字を含むファイル名の作成が可能になり、さらに外部ドライブへの同期がサポートされる。

Windowsではシステムの仕様上これらの機能を実現できないため、macOSユーザー限定の特典といえる。特に、外部ドライブへの同期機能は厳しい条件が課されるものの、ストレージの拡張や利便性の向上に大きく寄与することが期待される。

Windowsでは実現不可能な特殊文字対応の背景とは

Windows版のOneDriveでは長年、ファイル名に特殊文字を使用できない制約があった。今回のmacOS版アップデートでは、この制約が取り払われ、「?」「*」「/」「:」「|」などの特殊文字を含むファイル名が許可された。この変更は、Windowsのファイルシステムが持つ技術的な制約と、macOSの柔軟なファイル管理システムの違いに起因する。

WindowsのファイルシステムであるNTFSやFAT32では、特定の文字がOSの内部処理に使われているため、ファイル名に使用することができない。例えば、「?」や「*」はワイルドカードとして動作し、「:」はドライブの区切りとして機能する。

一方、macOSはUNIXベースのファイルシステムを採用しており、こうした特殊文字の使用に制約がないため、Microsoftはこの仕様をmacOS版OneDriveに適用することができた。しかし、macOS版OneDriveにこの機能が追加されたとはいえ、Windows、iOS、Android、Web版のOneDriveでは特殊文字がHTMLエンコードされるため、ファイルの扱いには注意が必要となる。

たとえば、macOSで「file:name.txt」と名付けたファイルをOneDrive経由でWindows環境に同期すると、「file%3Aname.txt」といった別の表記に変換される可能性がある。これにより、ファイル共有時に意図しないトラブルが発生することも考えられる。

このアップデートは、macOSユーザーにとって利便性を向上させる一方で、Windowsユーザーとの互換性を考慮する必要があることを示している。異なるOS間でOneDriveを利用するユーザーは、これまで以上にファイル名の管理に注意を払う必要があるだろう。


外部ドライブへの同期がもたらす可能性と制約

今回のアップデートで特に注目すべき点は、macOS版OneDriveが非Homeドライブ、つまり外部ストレージへの同期をサポートしたことだ。従来、OneDriveのデータはHomeディレクトリ内にしか保存できず、外付けSSDやHDDを活用したストレージの拡張が難しかった。しかし、この新機能により、特定の条件を満たした外部ドライブに直接データを保存できるようになった。

この機能を利用するには、macOS 15.0以降を搭載し、OneDrive 25.004以上をインストールする必要がある。また、外部ドライブはAPFSフォーマットであることが必須で、FileVaultによる暗号化が求められる。

さらに、macOSによって「取り外し不可・イジェクト不可」と認識される必要があり、単なるUSBメモリやネットワークストレージでは利用できない。つまり、ストレージの拡張手段としては非常に魅力的だが、利用可能な環境が大幅に制限されるという課題もある。

また、この機能を活用するには、一度現在のOneDrive同期を解除し、新しい外部ドライブに同期を設定し直す必要がある。これは、すでにOneDriveを利用しているユーザーにとっては手間となるため、簡単な移行ツールの提供が望まれる部分だ。

加えて、外部ドライブへの同期が可能になったことで、OneDriveをより大容量のデータストレージとして活用できる可能性があるが、APFSのフォーマットや暗号化要件などを考慮すると、すべてのユーザーが容易に導入できるわけではない。

この機能は特定のユーザーにとって大きな利便性をもたらすものの、技術的なハードルが高いため、今後のアップデートでより柔軟な設定が可能になることが期待される。


macOS版OneDriveの進化とWindows版との格差

今回のアップデートにより、macOS版OneDriveはWindows版とは異なる独自の機能を持つことになった。特に、特殊文字を含むファイル名のサポートや外部ドライブへの同期機能は、macOSのファイルシステムの特性を活かしたものであり、Windows版では実現不可能な機能だ。

これは、MicrosoftがmacOS版のOneDriveを単なるWindows版の移植ではなく、独立したプラットフォーム向けに最適化されたアプリとして開発していることを示している。一方で、Windows版OneDriveには、Windows環境に特化した高度な統合機能が存在する。

たとえば、「Files On-Demand」機能によるクラウド上のデータ管理や、Windows Explorerとの深い統合があり、これらはmacOS版にはない利点となる。しかし、macOS版に今回のような独自機能が追加されることで、両者の差はますます広がっていく可能性がある。

Microsoftは、Windows版とmacOS版のOneDriveをそれぞれのOSに最適化しながら開発を進めているようだ。今後、macOS版OneDriveがさらにmacOS独自の機能を活かしたアップデートを重ねていけば、Windowsユーザーが羨むような独自機能が増えていくかもしれない。今回のアップデートは、その兆候のひとつといえるだろう。

Source:XDA