AMDの最新モバイルワークステーション向けAPU「Ryzen AI MAX+ 395 “Strix Halo”」が、3DMark Time Spyのテストで非常に高いスコアを記録した。特に統合グラフィックス「Radeon 8060S iGPU」は、従来のRadeon 890Mと比較して3倍以上の性能向上を実現している。
AMDは「Strix Halo」シリーズをハイエンド向けAPUとして位置づけており、最大16コアのZen 5 CPUと40基のRDNA 3.5ベースのiGPUコアを搭載。特にグラフィックス性能の強化が顕著で、これまでの統合グラフィックスを凌駕する水準に達している。
リークされた3DMark Time Spyの結果では、Radeon 8060SがミドルクラスのdGPUに匹敵する性能を発揮しており、従来の統合GPUでは考えられなかったレベルのパフォーマンスを提供することが示唆された。
この新しいAPUは、ハイパフォーマンスなノートPCやコンパクトなワークステーションに最適な選択肢となる可能性が高い。2025年上半期には搭載PCが登場する予定であり、今後のさらなる詳細情報にも注目が集まる。
Ryzen AI MAX+ 395の内部構造―強化されたCPUとGPUの組み合わせ
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AMDの「Ryzen AI MAX+ 395 “Strix Halo”」は、モバイルAPUとしては類を見ないスペックを誇る。最大16コアのZen 5 CPUに加え、40基のRDNA 3.5ベースのGPUコアを統合し、パフォーマンスの飛躍的向上を実現している。この組み合わせにより、従来の統合GPUでは対処しきれなかったタスクも、独立型GPUに匹敵するレベルで処理可能となる。
特に注目すべきは、Radeon 8060S iGPUの性能だ。前世代のRadeon 890Mは16基のCUを搭載していたが、Ryzen AI MAX+ 395では2.5倍となる40基のCUを実装している。これにより、同じ統合グラフィックスながら、パフォーマンスは3DMark Time Spyスコアで約3倍に向上。統合型ながらも、エントリークラスのdGPUを凌ぐ処理能力を持つ点は大きな進化だ。
また、CPUのパフォーマンスも見逃せない。Ryzen AI MAX+ 395はZen 5アーキテクチャを採用し、16コア構成によりマルチスレッド性能を最大限に活かしている。特に、グラフィックス負荷の高い作業やAI処理を伴うアプリケーションでは、CPUとGPUがシームレスに連携することで、より効率的な処理が可能となる。
これまでの統合型APUの枠を超え、モバイル環境でもデスクトップ級のパフォーマンスを求めるユーザーにとって、革新的な選択肢となるだろう。
消費電力と冷却の課題―TDP 120Wの影響と最適化の必要性
Ryzen AI MAX+ 395の性能向上に伴い、消費電力と発熱の問題も無視できない。従来のモバイルAPUはTDP 30~45Wが主流だったが、「Strix Halo」は最大120Wに設定されている。これは一部のデスクトップCPUに匹敵する数値であり、ノートPCに搭載する場合、冷却性能が大きな課題となる。
TDPが高いということは、それだけ発熱量も増加する。一般的なノートPCの冷却機構では対応が難しく、効果的なヒートシンクやベイパーチャンバー、強力なファンが必要になる可能性が高い。また、バッテリー駆動時間にも影響を及ぼし、パフォーマンスを維持するためには高性能な電源管理が求められるだろう。
ただし、高いTDPは必ずしもデメリットではない。Ryzen AI MAX+ 395は、これまで統合GPUが苦手としていた高負荷な処理にも対応可能であり、dGPUを省略した薄型ノートPCやポータブルワークステーションに適している。
消費電力が増加しても、冷却機構を最適化することで持続的なパフォーマンスを維持できる可能性がある。メーカー各社がどのような冷却技術を導入するのかが、実際の製品化において重要なポイントとなるだろう。
統合GPUの未来―Radeon 8060SはdGPUを置き換えるか?
Ryzen AI MAX+ 395に搭載されるRadeon 8060S iGPUは、統合GPUとしては異例の性能を持ち、エントリークラスのdGPUと比較しても遜色のないスコアを記録している。では、この流れが続けば、将来的に統合GPUが独立型GPU(dGPU)を完全に置き換えることはあり得るのだろうか。
統合GPUの最大の強みは、デバイスの小型化やコスト削減に貢献できる点だ。従来、ゲーミングノートPCやワークステーションではdGPUが必須とされていたが、Radeon 8060Sのような高性能統合GPUが登場することで、GPUを別途搭載せずとも快適なグラフィックス処理が可能になる可能性がある。
ただし、現時点ではdGPUが不要になるとは言い切れない。最新のハイエンドゲームや3Dレンダリング、AI推論などのタスクでは、より多くの演算ユニットと専用VRAMを持つdGPUの方が依然として有利である。特に、NVIDIAやAMDのハイエンドGPUと比較すると、統合GPUにはまだ明確な限界が存在する。
とはいえ、Ryzen AI MAX+ 395が示したように、統合GPUは着実に進化を遂げている。今後、APUの開発が進むにつれ、一般的な用途ではdGPUを不要とする時代が来るかもしれない。特に、消費電力を抑えつつ高性能を実現する技術が発展すれば、統合GPUがPC市場の主流になる可能性も十分に考えられる。
Source:Wccftech