Intelの最新世代プロセッサ「Raptor Lake」および「Raptor Lake Refresh」を愛用するパワーユーザーにとって、液体金属サーマルペーストの選択は一種の賭けとなっている。最新の調査で、冷却効率を重視してこのペーストを利用したユーザーが保証を受けられないケースが報告された。

特に、Core i9-14900Kで不具合が生じた場合でも、液体金属が使用されているとIntelは保証請求を拒否する。液体金属はCPUの識別情報を損傷し、これが原因で保証無効が適用される。Intelはかねてから、このサーマルペーストの使用が腐食性を伴うことから保証を無効とする方針を維持してきたが、問題はRaptor Lakeユーザーの間で深刻化している。

液体金属は優れた冷却効果を発揮する一方で、電気伝導性が高く、慎重な扱いが求められる。CPUの性能を最大化したいユーザーにとって、そのリスクは一考の価値がある。

Intelの保証拒否と液体金属の危険性とは?

Intelが保証の無効化を明確にした理由の一つには、液体金属がCPUのヒートスプレッダーを腐食する危険性があることが挙げられる。HKEPCの調査によると、Raptor Lakeの一部ユーザーが不具合で保証を利用しようとした際、液体金属の使用が原因で対応を拒否された事例が確認されている。

この腐食によってCPU表面の識別情報が消失することが問題であり、Intelは保証適用のためにこの識別情報の確認を必須とする。特に高性能な冷却効果を期待するエンスージアストが好む液体金属だが、Intelの保証ポリシーにおいては一切の例外が認められない。

事実、液体金属は高い熱伝導率で注目される一方、電気を通しやすいという特性があり、プロセッサ上のコンデンサなどに接触することで即座に故障を引き起こす可能性がある。このため、Intelにとって液体金属はリスク要因として厳重な対応がなされているのだ。

AMDも同様の方針を採用する理由と市場の反応

Intelだけでなく、AMDも液体金属を使用した場合の保証無効化を明確にしており、同様のリスク管理方針が市場に浸透しつつある。AMDの方針も、液体金属の腐食性や高い電気伝導性に起因しており、製品の耐久性を保つためにはこの決定が必要とされる。冷却効果を向上させる目的で液体金属を利用するユーザーが増える中、依然として保証無効のリスクを冒すユーザーは少なくない。

特にパワーユーザー層やオーバークロックを実行する層にとっては、この冷却材は魅力的であり、保証が無効になると知りながらも採用するケースが続く。こうした状況からも、エンスージアスト層は性能向上を優先し、リスクを自己責任で受け入れている現状がうかがえる。一方、メーカー側は液体金属の利用による事故や保証請求の増加を防ぐため、警告と対策を強化し続けている。

液体金属の選択はエンスージアストの自己責任か?

液体金属の使用による冷却効果の向上は、多くのエンスージアストにとって無視できない魅力であるが、保証の無効化というリスクも見逃せない。

特に、市販の既製品として液体金属が適用されたシステムではなく、個人が追加で冷却材を塗布する場合、保証の適用外となることがほぼ確実だ。液体金属が発揮する優れた熱伝導率は、CPUやGPUの冷却効果を飛躍的に向上させるものの、電気的なトラブルや腐食による識別情報の消失といったリスクも伴う。

そのため、IntelやAMDの公式ポリシーに従うならば、工場出荷時の仕様で十分な冷却効果が得られる場合、個別に液体金属を使用するのは推奨されないと考えられる。結果として、自己責任で液体金属を選択するユーザーは、パフォーマンスの向上と保証無効のリスクを天秤にかけ、慎重な判断が求められる。