インテルが新たに投入したCore Ultra 200Hシリーズが、ノートPC向けプロセッサの常識を覆す進化を遂げた。特に最上位モデルのCore Ultra 9 285Hは、前世代を圧倒する処理能力を実現し、一般的なアプリケーションの動作速度を約2倍に引き上げるなど、性能面での飛躍が目覚ましい。

一方で、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)が搭載されていないため、AI関連の処理には不向きという弱点もある。テストに使用されたMSI Prestige 16 AI Evoは、この新型CPUの性能を存分に発揮できる構成を持ち、特にバッテリー持続時間は15時間を超える優秀さを誇る。

ゲーム性能は平均40~58fpsとまずまずだが、高リフレッシュレートを求めるユーザーには物足りなさもある。デスクトップ向けの同シリーズが期待を下回った中で、ノートPC版は逆にインテルの評価を回復する可能性を秘めている。今後の市場競争の中で、この新プロセッサがどのような評価を得るのか注目だ。

新アーキテクチャが生んだ圧倒的なパフォーマンス向上

Core Ultra 200Hシリーズの最大の特徴は、Intelの最新アーキテクチャによる劇的なパフォーマンス向上だ。従来のLunar Lake世代と比較して、Pコア(パフォーマンスコア)にはLion Cove、Eコア(効率コア)にはSkymontが採用されており、それぞれの処理能力が飛躍的に向上している。

特に、マルチスレッド処理においては約2倍の性能向上が確認されており、動画編集やレンダリングなどの負荷が高い作業でも快適に動作する。また、統合GPUとしてIntel Arc 140Tが搭載されている点も見逃せない。3DMark Time Spyのスコアでは、AMD Ryzen AI 9 HX 370の統合GPUとほぼ互角の性能を示し、エントリーレベルのゲームであれば快適にプレイできる環境が整っている。

ただし、AAAタイトルを高画質・高フレームレートで楽しむには、外付けGPUを搭載したモデルを選ぶ必要がある。それに加え、AI推論性能についてはやや課題が残る。AI処理に特化したNPUが搭載されていないため、AIベースのワークロードではLunar Lake世代のNPU搭載モデルに遅れを取る結果となった。

これにより、画像生成や機械学習といった用途では競合と比べて不利になる可能性がある。それでも、総合的なCPUパフォーマンスと消費電力のバランスは優れており、特に長時間のバッテリー駆動を求めるユーザーにとっては大きな魅力となるだろう。

バッテリー持続時間と省電力性能の向上がもたらす恩恵

新たなCore Ultra 200Hシリーズでは、消費電力とパフォーマンスのバランスが大幅に最適化されている。特に、MSI Prestige 16 AI Evoでのテスト結果では、約15時間50分という驚異的なバッテリー寿命を記録しており、従来のIntel製ノートPC向けプロセッサと比較して飛躍的に向上している。これは、Intelが近年推進している省電力アーキテクチャの改良が大きく貢献していると考えられる。

この持続時間の長さは、外出先での作業や長時間の利用が求められるユーザーにとって大きなメリットとなる。特に、動画視聴やウェブブラウジングといった軽負荷のタスクであれば、1日中充電を気にすることなく使い続けることが可能だ。加えて、Core Ultra 200Hは低TDP(45W前後)ながら、デスクトップ並みのパフォーマンスを発揮する点も注目すべきポイントである。

一方で、バッテリー性能が向上した背景には、Eコアと超低消費電力Eコアの改良が大きく影響している。Skymontアーキテクチャを採用したEコアは、従来よりも高効率な処理が可能になり、低負荷時の消費電力を大幅に抑えることができる。

その結果、動画編集やゲーミングといった高負荷作業と、日常的な省電力動作を両立できるようになった。この特性は、Intelが目指す「デスクトップ級のパフォーマンスとモバイル級の省電力性」という目標に沿ったものだといえる。

次世代PCの選択肢としてのCore Ultra 200Hの立ち位置

Core Ultra 200Hシリーズの登場により、ノートPCの性能は新たなステージへと進化した。しかし、このプロセッサがすべてのユーザーにとって最適な選択肢となるかどうかは用途による。AI関連のタスクを頻繁に扱う場合、NPU性能が強化されたLunar Lake(Core Ultra 200V)や、AMD Ryzen AI 300シリーズを選ぶほうが適している可能性が高い。

一方で、AI処理をそこまで重視しない場合には、Core Ultra 200Hは圧倒的なCPUパフォーマンスと長時間のバッテリー駆動を両立した魅力的な選択肢となる。特に、動画編集や3Dレンダリング、プログラミングといった負荷の高い作業を快適にこなせる点は、従来のモバイル向けプロセッサでは達成できなかった領域である。

また、ゲーム性能についても、統合GPUの性能向上によりエントリークラスのタイトルであれば快適に動作する。しかし、高解像度・高リフレッシュレートを求めるユーザーには、外付けGPUを搭載したモデルや、ゲーミング向けのCore HXシリーズのほうが適している。

今後、Intelはモバイル向けプロセッサ市場において、AMDやQualcommとさらに激しい競争を繰り広げることになるだろう。その中で、Core Ultra 200Hシリーズは、バッテリー持続時間を重視しつつも、最大限のパフォーマンスを求めるユーザーにとって強力な選択肢となることは間違いない。今後のアップデートや、各メーカーのノートPCとの組み合わせにも注目が集まるところだ。

Source:PCWorld