Intelの新世代モバイルプロセッサCore Ultra 9 275HXが、PassMarkのベンチマークでAMDのRyzen 9 7945HX3Dを7%上回るスコアを記録した。さらに、前世代のCore i9-14900HXより34%高速という驚異的な結果が出ており、特にシングルスレッド性能で9%の向上が見られる。

この275HXは、Intelの新アーキテクチャArrow Lake-HXを採用し、デスクトップ向けのCore Ultra 200Sシリーズと同様の設計を持つ。ただし、BGAパッケージを採用し、高TDPに最適化されている点が特徴だ。特に、ノートPC向けとして高性能な専用GPUと組み合わせることが前提のチップ設計となっている。

Intelの最新ゲーミングノートPCは、NvidiaのRTX 50モバイルシリーズの登場と同時に市場に投入される見込みであり、来月以降のリリースが期待されている。次世代モバイルチップ市場の競争が激化する中、AMDのZen 5ベースの新モデルが登場することで、今後のベンチマーク結果がどう変化するかも注目される。

Intel Core Ultra 9 275HXの性能を支える新アーキテクチャArrow Lake-HXの特徴

Intelの新型プロセッサCore Ultra 9 275HXは、従来のモバイル向けCPUと一線を画すArrow Lake-HXアーキテクチャを採用している。この設計は、デスクトップ向けのCore Ultra 200Sシリーズと多くの共通点を持ちながら、ノートPC向けに最適化されている点が特徴だ。特に、TDP(熱設計電力)の調整や、パッケージングの変更が重要なポイントとなる。

Arrow Lake-HXはBGA(Ball Grid Array)パッケージを採用しており、マザーボードに直接はんだ付けされる形となる。これにより、省スペース化が図られ、ノートPCの設計自由度が増す一方で、交換やアップグレードは不可能となる。

また、従来のArrow Lake-Hシリーズとは異なり、SoCタイルにLPE(Low Power Efficiency)コアを搭載しない設計となっている。これにより、バッテリー駆動時の省電力性能よりも、ピークパフォーマンスを重視した構成がとられていることが分かる。

さらに、PBP(Processor Base Power)は55Wと高めに設定され、最大で160Wまでスケールアップする可能性がある。これは高性能GPUと組み合わせた際の冷却機構や電力供給能力によって、パフォーマンスが大きく左右されることを示している。実際、ゲーミングノートPC向けの設計として、RTX 50モバイルシリーズとの組み合わせが想定されており、冷却システムの強化が必須となるだろう。

こうした仕様から考えると、Arrow Lake-HXは単なる省電力ノートPC向けではなく、ハイパフォーマンスを求めるユーザー向けに最適化されていることが分かる。専用GPUとの併用が前提となるため、グラフィック性能を求めるクリエイターやゲーマー向けの製品が主流となることが予測される。


PassMarkベンチマークで示されたCore Ultra 9 275HXのパフォーマンスとその影響

IntelのCore Ultra 9 275HXがPassMarkのベンチマークでRyzen 9 7945HX3Dを7%上回るスコアを記録したことは、モバイル向けCPU市場における競争に大きな影響を与える可能性がある。この比較で特筆すべき点は、単にAMDを上回っただけでなく、前世代のCore i9-14900HXと比較して34%ものパフォーマンス向上を達成した点にある。

PassMarkのスコアでは、シングルスレッド性能が特に注目される。Core Ultra 9 275HXはシングルスレッドテストで9%の向上を記録しており、これはIntelの**Lion Coveアーキテクチャ(高性能コア)Skymontアーキテクチャ(高効率コア)**の改良によるものと考えられる。

クロック速度はi9-14900HXより400MHz低下しているにもかかわらず、この結果を達成していることから、アーキテクチャの改良が実際のパフォーマンスに大きく寄与していることが分かる。しかし、この結果をそのまま受け入れるのは早計だ。なぜなら、PassMarkの結果は一つのテストデータに基づくものであり、実際の環境では異なる結果が出る可能性があるからだ。

特に、冷却システムや消費電力の管理によって、実際の使用環境での性能は変動する。加えて、AMDもZen 5ベースの新型モバイルプロセッサ「Fire Range」シリーズを準備しているため、今回の優位性が長期的に維持されるかどうかは不透明だ。

また、IntelのノートPC向けCPUとしての重要な課題の一つに電力効率の問題がある。Arrow Lake-H世代のCPUの一部は、Meteor Lake世代のSoCタイルを流用しているため、最新のプロセス技術を完全には活用できていない。これが275HXの電力管理や発熱にどのような影響を与えるのか、今後の詳細なテストが求められる。


今後の展望と発売時期に関する最新情報

IntelのArrow Lake-HXシリーズを搭載したノートPCは2024年第3四半期後半に登場予定とされている。これに伴い、各メーカーから新たなハイエンドゲーミングノートPCやクリエイターノートPCが順次発表されることが予想される。特に、NvidiaのRTX 50モバイルシリーズの登場と連動して、市場にはハイスペックなノートPCが続々と投入されることになるだろう。

一方で、Intelの最新CPUがMicrosoftのCoPilot+の要件を満たさない点も注目すべきだ。CoPilot+はAI支援機能を強化するプラットフォームであり、これに適合するのはIntelのLunar Lakeシリーズのみとなる。そのため、AI機能を重視するユーザーにとっては、Arrow Lake-HX搭載ノートPCの選択肢が最適であるかどうか、慎重な判断が求められる。

また、これらの新型プロセッサの実力を正確に評価するには、今後の独立したレビューや実機テストが重要となる。特に、冷却性能がどの程度維持されるのか、バッテリー駆動時のパフォーマンスはどのように変化するのか、といった点が実際の使用感に大きく影響するからだ。

これらの要素を踏まえると、IntelのCore Ultra 9 275HXが持つ性能のポテンシャルは高いものの、実際の使用環境でのバランスがどのように最適化されるかが鍵となる。特に、高TDPの影響がどのように作用するかは、今後のゲーミングノートPC市場において重要なポイントとなるだろう。

Source:Tom’s Hardware