Appleは、新型のエントリーレベルiPad(第11世代)を発表した。デザインは前モデルと同様ながら、プロセッサーはA14 BionicからA16に強化され、処理性能が向上。基本ストレージは64GBから128GBに倍増し、より多くのデータを保存できるようになった。

ディスプレイは10.9インチから11インチに微増し、解像度や輝度は据え置き。カメラは12MPのフロント・リアカメラを維持しつつ、Smart HDR 4に対応した。一方で物理SIMスロットは廃止され、eSIMのみの対応となる。

A16チップ搭載でパフォーマンス向上 前モデルとの違いは?

第11世代iPadは、プロセッサーにA16 Bionicを採用し、処理性能が向上した。前モデルのA14 Bionicと比較すると、CPUやGPUのパフォーマンスが強化されており、特にグラフィック処理やAI関連の計算で優位性がある。Neural Engineも16コアとなり、機械学習の処理が高速化された。これにより、画像編集やゲームプレイなど負荷の高いアプリの動作がよりスムーズになると考えられる。

一方で、MシリーズではなくAシリーズの採用が続いている点は注目すべきだ。上位モデルのiPad AirやiPad ProがMシリーズへ移行している中、エントリーモデルのiPadはAシリーズのまま進化を続けている。これにより、価格を抑えながらも最新のプロセッサーを搭載し、バランスの取れたモデルとしての位置付けを維持している。

また、基本ストレージが64GBから128GBに増量した点も大きな変化だ。アプリのサイズが年々増加している中で、64GBでは容量不足を感じる場面が多かったが、128GBに倍増したことで、写真や動画、アプリをより多く保存できるようになった。ただし、microSDカードには依然として非対応であり、クラウドストレージや外部ストレージの活用は必要となるだろう。

eSIM専用モデルに移行 物理SIM廃止の影響は?

第11世代iPadでは、物理SIMスロットが廃止され、eSIMのみの対応となった。これはAppleの近年の流れを反映した変更であり、iPhone 14シリーズ以降、一部の地域ではeSIM専用モデルが主流になっている。iPadにおいても、この流れが本格化した形だ。

eSIMのメリットとして、SIMカードの差し替えが不要になり、オンラインでキャリアを切り替えられる点が挙げられる。特に海外旅行や複数キャリアを利用するユーザーにとっては利便性が高い。一方で、物理SIMに対応していた前モデルに比べて、キャリアの対応状況やeSIMの設定手順がネックになる可能性もある。

また、格安SIMを利用していたユーザーにとっては、対応状況が重要なポイントとなる。すべてのMVNOがeSIMに対応しているわけではないため、既存のプランが利用できるかどうかを事前に確認する必要がある。物理SIMを使用していたユーザーにとっては、乗り換えのハードルが上がる可能性があり、この変更をどう評価するかは利用環境による部分が大きい。

デザインの変化は最小限 価格据え置きの狙い

第11世代iPadのデザインは、第10世代とほぼ変わらず、寸法や重量、カラーバリエーションも引き継がれている。ディスプレイは10.9インチから11インチへわずかに拡大したものの、解像度や輝度に変更はなく、基本的な使用感は同じままとなっている。これは、製造コストを抑えながらもスペックの向上を実現するAppleの戦略と考えられる。

価格面では、128GBモデルが$349と、第10世代の64GBモデルと同じ価格に設定された。ストレージが倍増したにもかかわらず、価格が据え置かれた点は魅力的だ。256GB、512GBの上位モデルも用意され、選択肢が広がった。セルラーモデルは$499からと、Wi-Fiモデルに比べて価格は上がるが、eSIM専用化により通信契約の自由度が増した点は評価できる。

ただし、外観の変化がほとんどないため、新鮮さを求めるユーザーには物足りなさを感じるかもしれない。特に、iPad ProやiPad Airのようなベゼルの薄型化やリフレッシュレートの向上がない点は、最新モデルとしてのインパクトに欠ける部分でもある。それでも、価格を抑えながら性能を向上させたことで、コストパフォーマンスに優れた選択肢となるだろう。

Source:NotebookCheck.net