AMDが開発中の次世代CPU「Krackan Point」がGeekbench AIベンチマークに出現し、独自の3+3コア構成が注目を集めている。このチップはZen 5アーキテクチャを採用し、デュアルクラスター設計による6コア/12スレッドを特徴とする。

各クラスターはZen 5とZen 5cを3コアずつ搭載しており、AI性能やエントリー市場向けの効率的な設計が評価される可能性が高い。ASUS製ノートPCに搭載された試験モデルはAIベンチマークで2019ポイント(シングル精度)を記録。型番は「100-000001600-40_Y」とされ、2025年初頭の市場投入が見込まれている。

廉価なプラットフォーム向けに設計されながらも、次世代ゲームコンソールやAI活用における役割が期待されている。

独自設計が示す3+3コア構成の可能性とその背景

AMDがKrackan Pointで採用した3+3コア構成は、Zen 5とZen 5cアーキテクチャを組み合わせたデュアルクラスター設計に基づいている。これは、メインストリーム向けCPU市場での競争力を高めるための選択と考えられる。この設計により、コストを抑えつつも、複数の用途に対応可能なバランスの取れた性能を実現する狙いがあると見られる。

特筆すべきは、各クラスターに3コアずつ搭載する方式だ。従来の対称的なマルチコア構成とは異なり、異なる用途や負荷に応じた柔軟な処理が可能となる。例えば、Zen 5cは省電力性能を重視して設計されており、エネルギー効率が重要なシナリオで活躍する可能性がある。一方、Zen 5は高性能タスクを担う設計だ。この組み合わせが、エントリーレベルの製品としても十分な競争力を確保する鍵となる。

このアプローチは、モバイル機器や軽量デバイスでの採用を念頭に置いたものと推測される。また、AI対応の強化が明確に示されている点も見逃せない。Geekbench AIスコアが示す通り、Krackan PointはAI処理を重視した設計であり、同セグメント内の他製品との差別化を図っている。AMDがエントリー市場でどのような戦略を展開するのか、注目される展開である。

AI性能の強化が示唆する次世代活用の展望

Krackan PointのGeekbench AIベンチマーク結果は、その設計がAI性能を重視していることを物語っている。このプロセッサは、シングル精度で2019ポイント、量子化スコアで3773ポイントを記録しており、AI推論や軽量な機械学習タスクに向けた最適化が行われている可能性が高い。特に、AI専用ハードウェアとしての役割を期待されるNPUの存在が、これらのスコアに影響を与えている。

AMDがこの性能をどのように活用するかは今後の市場戦略次第だが、手頃な価格帯でのAI処理能力提供を目指していると考えられる。これは、スマートデバイスや家電、さらには軽量なゲームコンソールなど、多岐にわたる製品での利用を想定している可能性を示唆している。

一方、同じベンチマークで見られるスコアがエンジニアリングサンプルの段階であることを踏まえれば、最終製品では更なる性能向上が期待される。AI利用が今後ますます重要視される中、こうした専用設計が競争力を持つ製品を生み出す原動力となるだろう。AMDが手頃な価格帯でAI能力を普及させる先駆者となる可能性も否定できない。

発売時期と用途が示す市場戦略の方向性

Krackan Pointの投入時期は2025年初頭とされており、エントリーレベル市場をターゲットにしている。この市場戦略には、手頃な価格と効率性を武器に、より広範なユーザー層へリーチする狙いがあると考えられる。また、次世代ゲームコンソール向けに採用される可能性が示唆されており、この点が特に注目される。

次世代チップ「Z2 Extreme」の基盤となる可能性があることから、従来のZ1 Extremeと比較して大幅なバッテリー効率の向上とパフォーマンスの強化が期待される。これにより、ゲームプレイ中の快適性が向上し、持ち運び可能なデバイスの利便性がさらに強化されるだろう。ただし、Strix Pointを採用するハンドヘルドデバイスの台数が限定的であるとの情報もあり、Krackan Pointがこの領域でどれだけの役割を果たせるかは未知数である。

AMDの市場戦略として、このラインナップがどのように他社製品と差別化を図るのか、またユーザーにどのような価値を提供するのかが今後の焦点となるだろう。製品化と市場投入が近づく中で、さらなる詳細が明らかになることを期待したい。