Intelが新たに発表した「Core Ultra 5 245K」は、AI対応を特徴とするArrow Lakeシリーズの一翼を担うデスクトップ向けCPUである。NPUの統合やチップレット設計の採用といった技術革新が注目される一方で、従来型のCore i5ユーザーに馴染み深いゲーミング性能やコストパフォーマンスにおいて課題が浮き彫りとなった。

特に、新しいLGA 1851ソケットの採用により、互換性が失われた点が多くのユーザーにとってハードルとなる。クリエイティブ用途では一定の成果を示したが、総合的な評価は3.75/5と控えめなものに留まった。この新型CPUは、未来志向の設計を重視するユーザーにとっては魅力的だが、進化の評価は分かれると言えよう。

Core Ultra 5 245Kに搭載されたNPUの実力と課題

IntelがCore Ultra 5 245Kに初めて統合したNPU(ニューラルプロセッシングユニット)は、このCPUをAI時代に適応させるための鍵となる技術である。

NPUの存在はクリエイティブ作業やAI処理でのパフォーマンス向上を可能にするとされており、特に画像処理や動画編集の分野での応用が期待されている。Premiere Proのテストでは、このNPUによる最適化が一部のプロセスで速度を向上させたと報告されている。

一方で、Windows環境下ではNPUが十分に活用されていないことが課題として指摘されている。MicrosoftがOSレベルでの対応を強化することが求められるが、現時点では具体的な最適化のタイムラインは明確ではない。この点で、ハードウェアがソフトウェアの対応に依存するジレンマが見られる。

IntelがArrow Lakeシリーズで示した未来志向の設計は評価に値するが、同時にソフトウェアエコシステムの成熟が伴わなければ、その潜在能力を発揮できない危険性もはらんでいる。これは、進化を目指す半導体業界において多くの企業が直面する共通の課題と言えるだろう。


新設計のLGA 1851ソケットがもたらすアップグレードのジレンマ

Core Ultra 5 245Kは新たにLGA 1851ソケットを採用しており、これによりZ890チップセットとDDR5 SDRAMの利用が可能となった。この設計変更はメモリ速度の向上や最新規格のサポートといった利点をもたらす一方で、従来のLGA 1700ソケットとの互換性を失う結果となった。

これにより、既存のマザーボードやDDR4メモリを使用するユーザーは、CPUの交換とともに大規模なシステムアップグレードを強いられる。

特に、Z890チップセットは高性能なThunderbolt 4やWi-Fi 6Eを標準搭載しており、これらの機能が必要ないユーザーにとっては過剰な投資となる場合がある。新しいソケットがもたらすアップグレードのメリットは、長期的な将来性を重視する層には有利だが、コストパフォーマンスを重視する層にとっては不満要素となる可能性がある。

Intelの公式発表によれば、この設計変更は性能向上を目的とした不可欠なステップであると説明されている。しかし、競合他社のRyzenシリーズが互換性を維持しながら進化を続けている現状を考えると、この選択がユーザーの支持を得るかどうかは未知数である。


ゲーミング性能の停滞とその背景にある電力効率への注力

Core Ultra 5 245Kは、電力効率と熱管理の向上を重視した設計となっている。消費電力は最大152Wに抑えられ、14700Kの250Wと比較して大幅な効率化を達成している。これにより、動作温度も72度に留まり、従来のハイエンドCPUと比べて優れた冷却性能を誇る。この点は、エネルギー効率を重視するユーザーや静音性を求める層にとって大きなメリットと言える。

しかし、その一方でゲーミング性能は前世代のCore i5 14600Kに劣る結果を示した。特に、Formula 1 2022のような一部のタイトルを除き、パフォーマンスの向上は限定的である。ゲーミング市場での競争が激化する中、この結果は新モデルへの移行をためらわせる要因となるだろう。

電力効率を重視する戦略は環境意識の高まりを反映したものではあるが、ゲーミング市場で求められる高パフォーマンスとトレードオフの関係にある。このバランスをいかに調整するかが、今後の製品戦略において重要な課題となるだろう。