データセンター向けのAIインフラにおいて、アーム(Arm)のカスタムCPUが急速に普及している。ハイパースケーラーやクラウドビルダーは、独自設計のアームCPUと専用アクセラレータを用いることで、AI処理の効率とコスト削減を実現している。

アームは、命令セットアーキテクチャ(ISA)を基盤に、機械学習推論に特化したCPUの機能を強化。これにより、AI処理の大部分をCPUで賄い、レイテンシやセキュリティを改善している。さらに、AIアクセラレータを自社で設計する企業が増加しており、アームはその需要に応えるべく、インターコネクト技術やチップレットシステムの開発を進めている。

これにより、データセンターのAI対応力が多様化し、特定のワークロードに特化したインフラ構築が可能になった。アームの技術は、既存のGPUと共にAIインフラの中核を担い、データセンターの次世代構造を構築する原動力となっている。

データセンターで進化するAI向けカスタムArm CPUの役割

AI技術の普及に伴い、データセンターのインフラも急速に変化している。その中で、Armが提供するカスタムCPUは、多様なAIニーズに対応するための重要な要素となっている。特に、ハイパースケーラーやクラウド事業者が自社開発するArmベースのCPUは、機械学習推論を中心にしたAI処理の効率化を目指している。

これにより、高性能なベクトル演算やテンソル演算が可能となり、従来のAIワークロードに新たな選択肢が増えている。The Next Platformが報じたように、特に注目されるのが、機械学習推論のプロセスがCPU上で行われる点である。

従来、GPUに依存していた計算処理が、CPUでの推論により、レイテンシ低減とセキュリティ強化が可能となった。Armは、これを支える技術スタックの充実に向け多大な投資を行い、企業がAI処理を取り入れやすい環境を整えている。

既存のアルゴリズムとAIモデルを並行して活用するデータセンターは、カスタムArm CPUによりAIワークロードの多様化を実現し、効率的なインフラ構築を支えている。

AIアクセラレータ開発を支援するArmの新たなアプローチ

Armの戦略的な進化の一環として、独自のAIアクセラレータを設計する企業に対する支援が挙げられる。現在、世界で50〜80社に及ぶ企業が独自のAIアクセラレータ設計を進めているとされ、Armはその需要に応えるべくインターコネクト技術やチップレット技術の開発を加速させている。

特に、Ampere Computingが提供するArmベースのサーバーCPUは、企業がコスト効率とパフォーマンス向上を両立させる手段として導入が進んでいる。ダーモット・オドリスコル氏(Armプロダクトソリューション部門副社長)は、CPUとアクセラレータ間の迅速な通信がデータセンターでのAI活用において極めて重要であると強調する。

Armの取り組みは、独自のアクセラレータ開発をサポートしながら、データセンターにおけるAI機能の多様化と最適化を可能にしている。また、企業がインテルやAMDといった仲介業者を排除し、自社制御でシステムを構築できる体制を整えたことも、コスト削減や運用効率化に大きく貢献しているといえる。

チップレットとインターコネクトが切り開く未来のデータセンター設計

Armの第三の柱として注目されるのが、チップレットとインターコネクト技術の強化である。これにより、チップレットを用いた柔軟なシステム構築が可能となり、各企業は自社のニーズに合わせたCPUやXPUのカスタマイズができるようになっている。

特に、Armの「Chiplet System Architecture」や「Compute Sub System」などの知的財産パッケージは、AIやHPC(高性能計算)に特化したデータセンターのニーズを満たすために設計されている。オドリスコル氏は、アクセラレータが特定の計算機能と密接に結びつくことで、効率的なAI処理が可能になると述べる。

これは、Nvidiaの「グレース/ホッパーモデル」にも似たアプローチで、さまざまなワークロードに対応するための柔軟性を提供している。Armのチップレット技術は、データセンターが持つ多様なAIニーズに対応し、特化したインフラ構築の選択肢を広げる重要な要素であり、今後のAIインフラの発展においても中心的な役割を果たすと期待される。