Googleは、Google Playセキュリティ報奨プログラム(GPSRP)を終了することを発表した。このプログラムは、人気のあるAndroidアプリに潜む脆弱性を見つけ、責任を持って報告することをセキュリティ研究者に奨励するために2017年に開始されたものである。終了の理由として、Googleは報告される脆弱性の数が減少したことを挙げているが、これはAndroid OSのセキュリティ強化の成果であるとしている。

GPSRPの概要とその役割

Google Playセキュリティ報奨プログラム(Google Play Security Reward Program、以下GPSRP)は、2017年にGoogleによって導入された。このプログラムは、Androidアプリのセキュリティを強化するために設計され、セキュリティ研究者に対して、脆弱性を発見し責任を持って報告することを奨励する仕組みであった。

当初、GPSRPは特定の開発者のアプリのみを対象としており、リモートコード実行や不正なデータ盗難といった深刻な脆弱性に対して報奨金が支払われた。最大で5,000ドルが支払われるケースもあり、研究者にとっては大きなインセンティブとなっていた。

2019年には、対象範囲が大幅に拡大され、1億以上のインストール数を誇る全てのGoogle Playアプリが対象となった。このプログラムは、セキュリティ研究者の報告をもとに、アプリの脆弱性を自動で検出するチェック機能の開発にも寄与しており、Google Play全体のセキュリティ強化に貢献してきた。

Googleは、このプログラムを通じて収集したデータを活用し、数十万ものアプリに対して修正が行われるよう支援してきた。これにより、Google Playにおけるユーザーの安全性が向上し、より安全なアプリが提供されるようになったのである。

プログラム終了の背景と理由

Googleは、GPSRPの終了を決定した背景として、報告される脆弱性の数が減少したことを挙げている。これは、Android OS全体のセキュリティが向上し、脆弱性が減少したためであるとGoogleは説明している。

特に、Android OSのセキュリティポスチャー(セキュリティの姿勢)と機能強化の取り組みが効果を上げた結果、研究者から報告される「アクション可能な」脆弱性が減少したことが、プログラム終了の主な理由であるという。これにより、GPSRPが当初設定された目標をほぼ達成したと評価されている。

また、Googleは、プログラム終了に際して、参加していた研究者に感謝の意を表している。GPSRPにおける報告は、AndroidおよびGoogle Play全体のセキュリティ改善に不可欠であったと述べ、報告された脆弱性はすべて処理され、修正されることを約束している。

プログラム終了は、セキュリティ研究者にとって報奨金の機会が減少する一方で、Androidアプリのセキュリティが向上したことを示すポジティブな側面も含んでいる。

プログラムの成果と影響

GPSRPは、開始から終了までの間に、多くの重要な成果を上げてきた。プログラムが始まった翌年には、すでに30件以上の脆弱性が報告され、合計10万ドル以上の報奨金が支払われた。その後、報告された脆弱性の数は増加し、報奨金の総額も増加した。

2019年には、報奨金の最大額が2万ドルに引き上げられ、より多くの研究者がプログラムに参加するようになった。また、報告された脆弱性は、Googleの自動チェック機能にフィードバックされ、100万以上のアプリに対して修正が行われた。これにより、Google Play全体のセキュリティが大幅に向上し、ユーザーが利用するアプリの安全性が高まった。

しかしながら、プログラムの終了は、全ての脆弱性が解決されたわけではないことを意味する。特に、独自のバグバウンティプログラムを持たない開発者によるアプリに対する脆弱性報告のインセンティブが失われることになる。今後、こうしたアプリに対するセキュリティ対策が十分に行われるかどうかが課題となるだろう。

今後のセキュリティ対策の展望

GPSRPが終了することにより、Googleは他のセキュリティプログラムに注力する姿勢を示している。特に、AndroidおよびGoogleデバイスセキュリティ報奨プログラムが今後の主軸となる見込みである。このプログラムは、GPSRPと同様に、セキュリティ研究者が脆弱性を報告することで報奨金を得られる仕組みであり、Android全体のセキュリティをさらに強化することを目的としている。

また、Googleは、今後もセキュリティに対する取り組みを継続し、他のセキュリティプログラムや新しい技術を導入することで、Android OSとGoogle Play全体のセキュリティを向上させる方針である。これにより、ユーザーがより安全にアプリを利用できる環境を整えることが期待されている。

プログラム終了後も、セキュリティ研究者との協力関係を維持し、彼らからの報告を受け入れることで、潜在的な脆弱性の早期発見と修正を続けることが求められる。Googleのセキュリティ対策が今後どのように進化していくか、引き続き注視が必要である。