AMDの次世代APU「Krackan」が、ASUSの検証用ラップトップを通じて明らかになった。リークされたベンチマークデータによれば、3つのZen5コアと3つのZen5cコアを組み合わせたユニークなクラスター構成が特徴となっている。この6コアモデルはRyzen AI 5 340とされ、最大4.0GHzのブーストクロックを持つエンジニアリングサンプルが評価中である。
Ryzen AI 300シリーズの一部であるKrackanは、AIワークロード向けに設計され、50TOPSの処理能力を備えたXDNA2 NPUを搭載する。また、同シリーズには最大16コアの上位モデルも含まれる予定であり、今後のAI対応プロセッサ市場において注目を集める存在となりそうだ。発売時期は2025年初頭が見込まれ、CES 2025での正式発表が噂されている。
AMD Krackanの設計思想を解剖する Zen5とZen5cの融合が意味するもの
AMD Krackanは、3つのZen5コアと3つのZen5cコアを組み合わせた独自のCPU構成を採用している。この「3+3」クラスター設計は、高性能なZen5コアと省電力を重視したZen5cコアを融合させることで、性能と効率を最適化する狙いがあると考えられる。
このようなハイブリッド設計は、従来のモノリシックなアプローチから脱却し、特定のタスクや使用シナリオに応じたリソース割り当てを可能にする新たな戦略だ。
AMDは過去にもZenアーキテクチャの改良を重ねてきたが、Zen5とZen5cの併用は、AI対応プロセッサの新たな可能性を示している。特に、低電力コアで日常的な処理をカバーしながら、高性能コアでAIワークロードの要求を満たす仕組みは、ノートPC市場や組み込み機器市場での競争力を高めるものとみられる。この設計の成功は、今後のプロセッサ市場における競争の方向性をも左右する可能性がある。
こうした革新は、AMDがライバル企業であるIntelやNVIDIAに対抗するための明確な戦略であるとも解釈できる。特にXDNA2 NPUの搭載は、50TOPSという圧倒的な演算能力を背景に、AIワークロードでの圧倒的な優位性を目指していることを示唆している。
AMD Ryzen AI 300シリーズの未来像 競合と市場展望
Ryzen AI 300シリーズは、AIワークロードに特化したラインナップとして位置付けられており、Krackan、Strix Point、Strix Haloという三つの製品群が確認されている。この中でもKrackanは、最もコア数が少ない6コアモデルでありながら、同シリーズのエントリーポイントとして重要な役割を果たすとみられている。
AMDの公式発表によると、Krackanは2025年初頭に市場投入される予定であり、CES 2025での正式発表が予測されている。このタイミングは、他社の次世代製品発表と競合する形となる可能性が高く、業界全体の注目が集まることは間違いない。
一方で、Ryzen AI 300シリーズの上位モデルは最大16コアを搭載し、AIワークロードだけでなく、ゲーミングや高性能計算の分野でも存在感を示すことが期待されている。
AMDのこうした展望には、AI対応プロセッサ市場の拡大における競争力確保という明確な意図があると考えられる。特に、XDNA2 NPUの採用やコア数の多様性は、NVIDIAのAI GPUやIntelの次世代CPUと直接競合する構図を作り出すだろう。この分野の競争は、単なる性能比較にとどまらず、エネルギー効率や価格競争力といった多角的な視点での評価が重要となる。AMDがRyzen AIシリーズで市場のシェアを拡大できるかどうかは、今後数年間における技術革新と市場動向にかかっているといえる。
エンジニアリングサンプルが示す可能性 製品完成度と市場投入への課題
今回のリークで注目されたエンジニアリングサンプルは、AMDのOPNコード「100-000001600-40」を持つものであり、Ryzen AI 5 340と推定されている。このサンプルは、4.0GHzのブーストクロックを実現しているものの、最終製品が同様の仕様を維持するかは未確定である。エンジニアリングサンプルは、製品の初期段階での性能検証や改良を目的としており、実際の製品仕様とは異なる可能性が高い。
一方で、こうしたサンプルのリークは、開発プロセスや市場投入の課題を浮き彫りにすることが多い。今回のケースでは、ASUSがAMDのリファレンスボード「KoratPlus-KRK」を使用している点が明らかになっており、製品化に向けた具体的な動きが進行中であることを示している。
また、インターネットに接続されていたことでベンチマークデータが流出した点は、開発段階におけるセキュリティ課題を指摘するものともいえる。
これらの状況を踏まえると、AMDがKrackanの製品化に向けて解決すべき課題は少なくない。一方で、これらの課題をクリアした場合、同社がAI対応プロセッサ市場で新たな地位を築く可能性は十分にあるといえる。