ASUSのPro WS WRX90E-SAGE SEマザーボードのマニュアルから、AMDのThreadripperシリーズに3D V-Cache技術が導入される可能性が浮上している。Threadripperにこの技術が加われば、特に技術計算やデータ集約型の作業において性能が大幅に向上することが期待される。

AMDはすでに、EPYCプロセッサーでの3D V-Cache導入により技術計算で50%の性能向上を実現している。さらにCloudflareがGenoa-Xの導入を決定するなど、V-Cache技術の応用範囲は広がっている。今回の動きは、ワークステーション市場でのAMDの競争力を一層強化するもので、Intelに対する市場シェア拡大を狙った重要な一手となる可能性がある。

AMDの3D V-CacheがThreadripperに適用される背景と意義

AMDの3D V-Cache技術は、もともとゲーミング向けのRyzen X3Dプロセッサーで発展してきた技術であるが、その用途はゲームに留まらない。特に、2021年に登場したMilan-X(EPYCプロセッサーに3D V-Cacheを搭載)では、技術計算などの高負荷なタスクにおいて50%もの性能向上を実現しており、その実績は業界内でも高く評価されている。

最近では、CloudflareがGenoa-X(Zen 4アーキテクチャのEPYCと3D V-Cacheを搭載)をクラウドサーバーに採用するなど、企業用途においてもV-Cacheの優位性が認められている。

これらの動きから、3D V-Cacheは単なるゲーム技術にとどまらず、データ集約型のワークロードや技術計算など、広範な用途において性能向上が期待できる技術であることがわかる。ASUSのWRX90マザーボードのマニュアルに示された「オーバーライド」の存在は、こうしたAMDの戦略がThreadripperにも及ぶ可能性を示唆している。

Threadripperがこの技術を採用すれば、ワークステーション市場においてさらなる性能向上が見込まれ、AMDは市場シェア拡大への有力な手段を手にすることとなるだろう。

ASUSマニュアルに見られる「オーバーライド」の示唆とAMDの狙い

ASUSのPro WS WRX90E-SAGE SEマザーボードのマニュアルには、「X3D/V-Cacheのオーバーライド」設定が記載されている。この項目が存在することは、通常のThreadripperには意図されていないキャッシュ設定がThreadripperシリーズに対して導入される可能性を強く示唆していると考えられる。

3D V-Cacheを搭載することで、データをキャッシュから迅速に引き出すことができ、特に技術計算やレンダリングといった処理において劇的なパフォーマンス向上が期待される。

AMDはすでにRyzen 7 9800X3Dのプロセッサーにおいて、従来のV-Cache搭載モデルと比較して低温での高周波数動作を実現している。この成果に基づき、3D V-Cacheの設計や製造技術は大きく向上していると考えられる。

したがって、ThreadripperにおいてもV-Cacheを導入することは、AMDにとって論理的な選択であり、実現性も高いと推測される。DLCompareが報じたこのASUSマニュアルの記載は、今後のAMDのワークステーション向け戦略を予感させるものである。

AMDの市場戦略とThreadripperの未来への期待

Threadripperに3D V-Cacheが採用された場合、AMDは特にIntelが優勢とされるワークステーション市場においてさらに競争力を強めることが予想される。ワークステーション市場は高収益なセグメントであり、企業ユーザーにとって性能向上と効率化は重要な投資対象であるため、AMDにとってこのセグメントの拡大は重要な成長戦略となる。

また、Zen 5ベースのThreadripperに3D V-Cacheが導入されれば、技術計算やデータサイエンスなどの高度な処理を担うプロフェッショナルのニーズに応える性能を発揮し、さらなる需要拡大につながるだろう。Intelとシェア争いを繰り広げるAMDにとって、3D V-Cacheのような革新的な技術は差別化の鍵であり、ワークステーション市場におけるシェアをさらに確保するための有効な手段となる。