AMDが2024年第3四半期において、データセンター市場でIntelを初めて収益面で上回った。報告されたデータセンター収益は35億4900万ドルで、前年同期比122%増という驚異的な伸びを見せた。この成長の要因は、EPYCプロセッサへの需要急増である。
特に最新のEPYC 9005「Turin」プロセッサが市場で高い評価を得ており、Zen 5および5cコアアーキテクチャを搭載した主力製品EPYC 9965は、データ処理性能とエネルギー効率の両面でリードしている。この好調なデータセンター分野に対し、Intelは収益減少が続いており、AMDの市場拡大に対抗すべく、今後も激しい競争が予想される。
AMDの収益全体も前年同期から18%増加しており、68億1900万ドルに達した。クライアント部門や埋め込みセグメントでも成長が見られた一方、ゲーミングセグメントは不調で、前期比でも29%の減少となっている。しかし、データセンター分野での躍進により、AMDは市場においてIntelと対等以上に渡り合う姿勢を鮮明にした。
データセンター市場におけるEPYCプロセッサの急成長とその背景
AMDのデータセンター収益がIntelを初めて超えた背景には、EPYCプロセッサの驚異的な成長がある。特に、最新のEPYC 9005「Turin」シリーズはデータ処理性能の向上とコア数の増加により、企業の高負荷ワークロードに応える性能を実現した。
EPYC 9965モデルは、192コアと384スレッドを備え、L3キャッシュ384MB、TDP500Wといった強力なスペックで、クラウドプロバイダーやデータセンター運営企業からの関心を引き寄せている。これにより、AMDのEPYCシリーズは、高性能が求められるAIやビッグデータ分析、クラウドコンピューティングといった先端分野で競争力を大きく高めた。
TechSpotの報告によると、こうした高性能プロセッサの登場がデータセンター分野の収益拡大を後押しし、前年同期比で122%もの増加を実現したとされている。これまでIntelの独壇場だったデータセンター市場において、EPYCの成功はAMDの収益構造にも大きな影響を与えており、データセンター関連が売上全体の重要な一角を占めるようになっている。
こうした変化は、Intelにとっても市場シェア確保に向けた課題を一層鮮明にするだろう。
AMDとIntelの戦略的アプローチの違い
AMDとIntelがそれぞれ進める戦略的アプローチには、明確な違いがある。AMDは新しいZen 5アーキテクチャを搭載したEPYCシリーズに注力し、データセンター向けの多コア・多スレッド処理に最適化した製品開発を加速させてきた。
これにより、クラウドやAI向けの高性能・高効率なプロセッサ市場で強い競争力を発揮している。一方、Intelは「Granite Rapids」と「Sierra Forest」といった新しいXeonシリーズで高性能コアを増強しつつも、エンタープライズ市場での信頼性を前面に打ち出している。
AMDのEPYC 9005シリーズが多コアで高効率を重視しているのに対し、IntelのXeonシリーズはエンタープライズやAI分野での安定稼働を目指し、セキュリティやシステム統合といった面で優位性を確保しようとしている。
両社の戦略の違いは、特定の用途に応じたプロセッサ選択の多様化を生み、企業の導入選択肢を広げる要因にもなっている。このことは、データセンター市場のさらなる成長とともに、各企業が求める技術的要件に応じた製品選びを支えると考えられる。
今後のデータセンター市場における競争の行方
AMDのデータセンター分野での収益がIntelを超えたことは、単なる数値の逆転にとどまらず、データセンター市場全体の競争構造の変化を予兆している。
Intelは以前より、データセンターやAI分野でのシェアを大きく占めていたが、AMDがEPYCシリーズで勢いを増し続けることで、Intelは一部のシェアを失いつつある。この競争が激化する中、両社の技術革新が市場全体にどのような影響を及ぼすかが注目される。
さらに、EPYCの成長は、クラウド市場やエッジコンピューティングといった分野でも活躍の場を広げており、データセンター市場全体が大きな転換期を迎えているといえる。IntelがXeonシリーズで今後の反撃を試みる中、AMDがデータセンター向けにさらなる技術革新を進めていくことが予想される。
各社が新たなプロセッサ技術で競争を続けることで、データセンター分野のさらなる進化が期待され、同分野への投資が活発化する可能性もある。