NvidiaがAIトレーニング用に採用する高帯域幅メモリ(HBM)チップの供給を巡り、韓国のSK HynixとSamsungが競争を繰り広げている。これまでNvidiaは主にSK HynixからHBMチップを調達していたが、中国市場向けの「H20」プロセッサにSamsungのHBM3を初採用したことで、両社間の競争が一層激化している。
さらに、次世代HBM4の量産を巡り、両社はNvidiaの次世代GPU「Rubin R100」に対応するために生産スケジュールを前倒ししている。AIの進展に伴い増加するNvidiaのメモリ需要に応えようと、Samsungは投資家向けに製造能力の拡大計画を発表した。この戦略により、Nvidiaと提携を拡大することで収益性の高いビジネスチャンスを確保したい考えだ。
高帯域幅メモリ(HBM)がAIの進展に果たす役割とNvidiaの狙い
高帯域幅メモリ(HBM)は、AIトレーニング用プロセッサにおいて極めて重要な要素である。NvidiaがAIプロセッサにHBMを採用する背景には、従来のメモリ技術であるグラフィックスダブルデータレート(GDDR)にはない性能がHBMに備わっているからだ。
GDDRメモリはGPU基板上に配置されるが、HBMはプロセッサの近接に配置可能であり、処理速度を大幅に向上させる。AIモデルのトレーニングでは膨大なデータ処理が要求されるため、HBMの高速性と効率性が不可欠とされる。
Nvidiaは、最新のGPUアーキテクチャでこの技術を活用し、高度なAI処理能力を実現しようとしているが、メモリ供給の制約がその障壁となる可能性がある。また、SK HynixとSamsungがHBMの提供を巡って競争を繰り広げることで、Nvidiaの選択肢は広がり、供給リスクの緩和が期待される。
Nvidiaが今後もAIの進展に寄与するためには、こうしたメモリ技術の革新と供給確保が欠かせない。メディアCCNによれば、NvidiaのCEOジェンセン・フアン氏もSK Hynixに対してHBM4の生産加速を依頼しており、この分野でのリーダーシップを維持しようとする意図が窺える。
HBM4を巡る競争と次世代GPU「Rubin R100」への期待
次世代HBM4チップの大量生産は、Nvidiaが次期GPU「Rubin R100」に向けて進める重要なプロジェクトである。もともとSK Hynixが2026年を目標にしていた大量生産を、Nvidiaの要請を受け、2025年後半に前倒しする形となった。これに対抗してSamsungも、同じタイミングでの量産を目指し準備を進めている。
次世代GPUに求められる高度な処理性能にHBM4の性能がいかに寄与するかは、今後の市場の動向に影響を与えるだろう。両社が生産スケジュールを前倒しする背景には、AIトレーニングや推論処理の需要が今後も拡大し続けるという市場の読みがある。
AI技術の進展に伴い、AI関連のプロセッサ市場でNvidiaは支配的な位置にあるため、メモリ供給の安定確保はビジネス戦略上重要な要素となる。CCNの報道が示す通り、SK HynixとSamsungの双方がHBM4で競合しながらも、Nvidiaとの関係強化に注力することで、今後の成長機会を確保しようとする動きが伺える。
Samsungの供給チェーン拡充とNvidia提携拡大の可能性
今年7月、Nvidiaは中国市場向けに開発したH20プロセッサにSamsungのHBM3を初めて採用した。この決断は、供給チェーンのボトルネックを解消し、GPU生産の安定化を図るための戦略とされる。Samsungはこの提携の拡大を好機と捉え、製造能力の強化を進めている。
特にAI向けの高付加価値製品に対する需要が高まる中、HBM3Eなど次世代製品の販売比率を引き上げる方針を明らかにしている。Samsungにとって、Nvidiaとの提携は収益性の高いビジネスチャンスであり、将来的にはさらに深い協力関係へ発展する可能性がある。
しかし、同時にSK Hynixとの競争も激化するため、SamsungがNvidiaの要求に応じて品質面でも競争力を維持し続けられるかが今後の焦点となる。