AppleはiPhone向け5Gチップの内製化を進め、QualcommやBroadcomなどの主要サプライヤーへの依存からの脱却を目指している。これに伴い、5GとWiFiチップの分離設計が進行中であり、iPhone SE 4には初めてApple製の5Gモデムが採用される予定である。
Appleの独自技術は、長期的なサプライチェーン戦略を含んだ重要な展開といえる。
Appleが追求する「自社製チップ」開発の背景
Appleが5Gチップを自社で開発する背景には、主にQualcommとの長期的な競争力強化がある。Appleは、モデムやWiFiなどの主要な通信技術を自社開発することで、他社の技術に依存しない製品戦略を取っている。特にQualcommは長らくAppleにとって主要なモデムサプライヤーであり、その依存から脱却するためには、独自の技術力が求められていた。
これによりAppleは、製品のカスタマイズ性を強化し、供給網のコントロールを握ることができる。また、BroadcomもWiFiチップの供給元であるが、Appleはこれに代わる技術を自社開発することで、サプライヤーとの交渉力も高められる。Kuo氏の分析によれば、Appleの5GモデムとWiFiチップは当面の間別々の設計で進行するが、これは将来的な統合を視野に入れた過渡期の戦略と考えられる。
こうした自社製チップへのシフトは、Appleが将来の製品ラインアップにおいて、より一貫したハードウェアとソフトウェアの融合を実現するための布石となる。
iPhone SE 4とiPhone 17シリーズにおけるApple製5Gチップの採用計画
Ming-Chi Kuo氏の報告によると、Appleの独自5Gチップはまず2024年春に登場するiPhone SE 4に採用される見込みである。この機種では、Appleの5GチップとBroadcom製のWiFiチップが組み合わされるが、iPhone 17シリーズでも同様にBroadcom製のWiFiチップが引き続き使用される。
つまり、Appleは5Gにおいては自社開発を進める一方で、WiFi技術に関しては当面Broadcomのサポートを受け続けることになる。この背景には、5GモデムとWiFi機能の開発工程や技術仕様が異なることが影響していると考えられる。
特に、AppleがQualcomm製の5Gチップから独自製に移行する過程で、複数のチップサプライヤーを並行利用することでリスクを抑えながら製品安定性を保とうとしていることが伺える。iPhone SE 4を足掛かりに、Appleは徐々に自社製5Gモデムの搭載を広げていき、最終的にはWiFiを含む通信技術全体を自社内で完結させる体制を目指しているとみられる。
自社製5GとWiFiチップの統合が意味するもの-Appleの長期的ビジョン
Appleが5GチップとWiFiチップを独立させた上で進行するこのプロジェクトは、将来的な技術統合を見据えたものと考えられる。Appleはまず、異なる通信技術を別々に管理することで、技術開発の課題や調整を進めつつ、最適化のステップを踏んでいる。
今後、統合チップへの移行が進めば、電力効率や性能が飛躍的に向上する可能性があり、他社との競争優位性も増すと期待される。さらに、自社製チップの導入は、ハードウェアとソフトウェアの密接な連携による製品体験の向上につながるだけでなく、Appleが主導する通信技術の標準化にも貢献する可能性がある。
このようにAppleは、5GやWiFiなどの通信技術においても他社依存を最小限にし、自社エコシステム内での一貫性と最適化を追求することで、次世代のモバイル体験を提供しようとしている。Appleのこうした技術戦略は、スマートフォン業界全体にとっても新たな基準を示すこととなるだろう。