AMDが新たに発表したEPYC 4124Pプロセッサは、AM5ソケットに対応したビジネス向けのCPUである。Zen 4アーキテクチャを採用し、DDR5メモリのサポートや省電力性を備えたこのCPUは、小規模サーバーやホスティングマシン向けに設計されている。

外観こそRyzen 7000シリーズに似ているが、その内部には高度なセキュリティ機能を搭載し、特定のビジネスニーズに応えるプロセッサとしての違いが際立っている。

EPYC 4004シリーズの特徴と用途

AMDのEPYC 4004シリーズは、Zen 4アーキテクチャを採用したビジネス向けプロセッサである。このシリーズは、特に小規模サーバーや専用ホスティングマシン向けに設計されており、高い信頼性と効率的なパフォーマンスを実現することを目的としている。最大16コアのモデルまでラインナップされており、コア数に応じたパフォーマンスのスケーリングが可能である。

特筆すべきは、AM5ソケットに対応している点である。従来のEPYCプロセッサが使用していたSP5ソケットに比べ、AM5ソケットはコンシューマ向けのRyzenシリーズと同様の互換性を持つ。このため、DDR5-6000メモリを使用することができる点も、特に中小企業にとっては魅力的である。

EPYC 4124Pは、4コア8スレッド構成で、基本クロック3.8GHz、ブーストクロック5.1GHzを誇る。TDPは65Wと、省エネルギー設計が施されており、長時間稼働させる環境においても優れた電力効率を発揮する。これにより、サーバーの運用コスト削減に寄与しつつ、必要なパフォーマンスを提供する点が、このシリーズの大きな特徴である。

Ryzenとの違い – パフォーマンスとコスト面での比較

EPYC 4004シリーズは、外観こそRyzen 7000シリーズに似ているものの、内部構造や性能面では異なる方向性を持つ。特に、パフォーマンスに関してはRyzenがゲームや高負荷なコンシューマ用途に最適化されているのに対し、EPYC 4004はビジネス向けの安定性と省エネルギー性能に重きを置いている。

例えば、4コアのEPYC 4124Pと、6コアのRyzen 7600Xを比較した場合、Cinebench R23ベンチマークでは、Ryzen 7600Xの方が約50%高速であった。これは、Ryzenがより多くのコアを持つため、マルチスレッド性能に優れているためである。しかし、用途によっては、この差はさほど重要ではなく、Remnant 2などの一部アプリケーションでは、両者のパフォーマンス差がほとんど見られないこともある。

コスト面でも、EPYC 4124Pは160ユーロで販売されており、同価格帯のRyzen 7500Fよりも高価である。しかし、EPYCシリーズが持つ高度なセキュリティ機能や信頼性を考慮すれば、特定の業務用途ではむしろ適切な選択肢となる。特に、長時間稼働を求められるサーバー用途においては、性能だけでなく、電力効率やデータ保護が重要な要素となる。

オーバークロックの試みとその結果

EPYC 4124Pには、Ryzenシリーズと同様にオーバークロック機能が備わっている。この機能を試したYouTuberのder8auerは、4124Pをデフォルトの5.1GHzから5.65GHzまでクロックを引き上げることに成功した。これにより、Cinebench R23でのパフォーマンスが11%、ゲームタイトルRemnant 2では10%向上するという結果が得られた。

しかし、このオーバークロックは1.45Vの高電圧を必要とし、電力消費が大幅に増加するという代償も伴った。EPYCシリーズは、そもそも省電力を目的とした設計であるため、オーバークロックによるパフォーマンス向上が必要な場面は限られるだろう。

さらに、EPYC 4124Pはそのままでも優れた電力効率を発揮するため、オーバークロックを行わない方が長期的にはよりメリットが大きいと考えられる。特にビジネス用途では、安定性と信頼性が求められるため、過度なオーバークロックは推奨されない。とはいえ、オーバークロックにより、一定のタスクでのパフォーマンス向上が期待できる点は、ハードウェアエンスージアストにとって興味深い機能である。

専門的なセキュリティ機能の強化

EPYC 4004シリーズは、Ryzenシリーズに比べてセキュリティ機能が強化されている点が大きな特徴である。特に、企業向けの環境では、データの保護や攻撃への耐性が重要視されるが、この点においてEPYCシリーズは、Ryzenよりも一歩進んだセキュリティ対策を提供している。

EPYC 4124Pを含むこのシリーズには、ハードウェアレベルでの高度な暗号化機能や、セキュリティの脆弱性を狙った攻撃に対する防御機能が組み込まれている。これにより、ビジネスクリティカルなデータを取り扱うサーバーや、ホスティング環境での使用において安心感が得られる。

また、セキュリティ強化がコストパフォーマンスに与える影響も無視できない。Ryzenシリーズと比べて、多少のコスト増加が見られるものの、データ保護の重要性を考慮すれば、ビジネス用途においてはむしろコスト削減に寄与する可能性がある。データ漏洩やサイバー攻撃による損害を防ぐための投資と捉えることができ、特に中小企業にとっては魅力的な選択肢である。