AMDは、データセンター市場でのシェア拡大を目指し、384コアや768スレッドを搭載した多コアCPUを発表している。しかし、この多コア化に伴うリスクへの懸念も高まっている。こうした中、AMDのサーバー事業を率いるダン・マクナマラ氏は、「これらの懸念は過剰である」との立場を示し、同社の分析に基づき、問題が小さいことを強調した。

AMDが提示するデータセンター向け多コアCPUの利点

AMDは、データセンター向けに提供するEpycプロセッサの多コア化を進め、最大384コア、768スレッドに達するCPUを発表している。この技術的進展により、従来のIntelシステムに依存してきた多くの企業が、数台のIntelサーバーを1台のAMD多コアシステムに置き換えることが可能になった。

この大規模な統合により、システムの消費電力と運用コストを大幅に削減することができる。たとえば、AMDのCEOであるリサ・スー氏は、131台のEpycサーバーが1,000台のIntel Cascade Lakeシステムに匹敵する性能を提供でき、エネルギー消費を68%削減できると主張している。

もちろん、AMDの最上位192コアのEpycプロセッサの価格は$14,813と高価であり、導入コストは決して安くはない。しかし、導入後のエネルギー効率や物理スペースの節約が企業にとって大きなメリットとなり得るため、コスト対効果は高いとされる。

多コア化のリスクは「過大評価」とAMDが反論

AMDのサーバー事業を統括するダン・マクナマラ氏は、多コアCPUの普及に伴うリスクへの懸念が業界で広まっていることに対し、「過大評価されている」と反論している。マクナマラ氏によると、Epycのような多コアCPUを搭載したシステムでは、部品の故障がシステム全体に与える影響はそれほど大きくない。

例えば、Epycシステムが搭載する384コアのCPUは、従来のシステムよりもはるかに高い耐障害性を持っていると彼は説明している。また、システムの一部が故障した場合でも、他のコアが継続して機能するため、全体の稼働が止まることは少ないという。AMDは、この多コアシステムの強みを示すデータを数多く持っており、それを顧客に提供することで、懸念を払拭している。

データセンターの近代化や統合は、現在の業界全体で進んでおり、AMDだけが直面する課題ではない。しかし、同社はこの分野での強みを活かし、他の競合企業に対して優位性を維持している。

CPU市場で進むインテルとの競争

AMDとIntelの間での激しい競争は、ますます熾烈化している。最近、IntelはGranite Rapids Xeon 6プロセッサを発表し、128のパフォーマンスコアを搭載する製品を公開した。また、144コアのEコアを搭載したモデルも登場しており、クラウドやウェブスケールでの大規模展開をターゲットにしている。

これに対し、AMDはEpycシリーズのコア数を192まで拡大し、5GHzのクロック速度を実現する製品を投入している。これにより、単純なコア数の競争だけでなく、クロック速度や性能面でもIntelに対抗する姿勢を鮮明にしている。

この競争は、企業がどのCPUを選択するかという選択肢を増やす一方で、より高度な技術が必要とされる時代に突入している。IntelとAMDは、それぞれの強みを活かしながら、データセンター向けの市場で互いにシェアを奪い合っている。

高クロックと大容量キャッシュで差別化を図る新CPU

AMDの新しいEpycシリーズの中でも、特に注目されているのが64コアの9575Fや、16コアの9175Fである。これらのプロセッサは、最大5GHzのクロック速度と、非常に大きなL3キャッシュを搭載しており、特に高性能な計算処理や仮想化環境において高いパフォーマンスを発揮する。

9575Fは、既存のEpyc 4マザーボードに対応しており、400Wの消費電力でGPUホストとしても優れた性能を持つ。一方、9175Fは、16コアながら512MBものL3キャッシュを搭載し、コアライセンスの制約を受ける高性能計算(HPC)用途に最適化されている。

これにより、AMDは単に多コア化を進めるだけでなく、特定のニーズに応じた製品ラインを展開し、競合との違いを明確にしている。高クロックと大容量キャッシュを武器に、Intelからシェアを奪う戦略を進めていると言える。