アリババは、新たなRISC-Vベースのサーバー向けCPU「XuanTie C930」を発表した。AIや高性能コンピューティング(HPC)向けに設計されており、同社にとって初のサーバーグレードのRISC-Vプロセッサとなる。このチップは今月から出荷される予定で、アリババの研究機関Damo Academyが開催した北京のイベントで発表された。

C930の詳細な仕様は公開されていないが、中国メディアの報道では「SPECint2006ベンチマークで1GHzあたり15ポイントを記録した」との情報もある。アリババはこれまでArmベースの「Yitian 710」で高い実績を示しており、C930も期待が集まるが、一般市場向けではなく、性能評価の機会は限られるかもしれない。

さらに、アリババはC930に続く新しいRISC-Vチップ「C908X」「R908A」「XL200」の開発も発表した。RISC-Vはオープンソースの命令セットアーキテクチャであり、米中間の技術摩擦の影響を受けにくい。アリババは今後もRISC-V市場における影響力を強め、独自の技術開発を加速させていくとみられる。

アリババのXuanTie C930は何が特別なのか RISC-Vアーキテクチャの可能性

アリババが発表したXuanTie C930は、サーバー向けCPUとしてRISC-Vを採用している点が最大の特徴である。RISC-Vはオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)であり、プロプライエタリなx86やArmに対する代替技術として注目されている。特に、中国企業にとっては米国の技術規制を回避しながら独自のチップ開発を進める手段として、RISC-Vの活用が加速している。

このC930は、AIやHPC(高性能コンピューティング)向けに設計されており、アリババが「初のサーバーグレードのRISC-Vプロセッサ」と位置付けている。しかし、現時点では具体的なコア数やクロック速度、キャッシュサイズといった詳細な仕様は公表されていない。

一部の中国メディアによれば、SPECint2006ベンチマークで1GHzあたり15ポイントを記録したとされるが、この数値が公式なものかどうかは不明である。RISC-Vは従来のx86やArmと比べて柔軟性が高く、開発者が独自のカスタマイズを施しやすいことが利点とされている。

アリババがこの技術を採用した背景には、競争力のあるクラウドインフラの構築があると考えられる。これまでRISC-Vは組み込み機器やIoT分野での利用が中心だったが、C930の登場によりサーバー分野でも本格的に活用される可能性が広がる。

C930のパフォーマンスと市場への影響 競争力はどこまであるのか

XuanTie C930のパフォーマンスについては、まだ詳細なベンチマーク結果が公開されていないため、現時点での実力は未知数である。しかし、アリババの過去の実績を考慮すると、高い性能を備えている可能性はある。

同社のArmベースCPU「Yitian 710」は、クラウド向けプロセッサとして非常に高い評価を受けており、一部の効率性ベンチマークではIntelのXeon Platinum 8488Cを上回るスコアを記録した。C930も同様に、特定のワークロードに最適化された設計が施されていると考えられる。

ただし、現時点ではこのチップが一般市場に流通する予定はなく、アリババのクラウドサービス向けに限定される可能性が高い。そのため、第三者による詳細な検証が行われる機会は限られ、実際のパフォーマンスがどの程度のものなのかを判断するのは難しい。また、RISC-Vを採用したことで、C930は従来のx86やArmベースのサーバーとどの程度の競争力を持つのかも注目される点である。

RISC-Vはオープンソースであるため、開発コストの削減や柔軟な設計が可能だが、既存のエコシステムとの互換性という課題もある。特に、商用サーバー市場ではx86が圧倒的なシェアを持ち、Armも徐々に勢力を拡大している中で、RISC-Vがどの程度の影響力を持つのかは不透明である。

今後の展開 RISC-Vがサーバー市場で主流になる日は来るのか

アリババはC930の発表とともに、さらなるRISC-Vチップの開発計画を明らかにした。AIアクセラレーション向けの「C908X」、自動車用途の「R908A」、高速接続向けの「XL200」など、用途ごとに異なるプロセッサを開発する方針である。これにより、RISC-Vの活用範囲はクラウドやデータセンターだけでなく、モビリティやエッジコンピューティングにも広がる可能性がある。

RISC-Vはオープンソースであるため、開発者や企業が自由にアーキテクチャをカスタマイズできるメリットがある。一方で、既存の商用ソフトウェアとの互換性や、エコシステムの成熟度といった課題も存在する。特に、サーバー市場ではx86が長年にわたって支配的な地位を築いており、Armベースのプロセッサでさえ、その牙城を崩すのに時間を要している。

ただし、RISC-Vは中国をはじめとする各国の企業が注力しており、オープンなアーキテクチャとしての利点を活かせる場面は増えていくだろう。アリババはDamo Academyを通じてRISC-Vの研究開発を進めており、今後も高性能なプロセッサを投入する可能性がある。C930の実力がどの程度のものなのか、今後の技術動向に注目が集まる。

Source:Tom’s Hardware