レノボは新シリーズ「ThinkPad X9 Aura Edition」を発表し、Apple MacBook Airに対抗するための革新的なモデルを投入した。特徴的なLunar Lakeプロセッサを搭載し、RAMがCPUに直接統合されているほか、最大2TBのM.2 2242 SSDを搭載可能である。

14インチと15インチのモデルにはどちらもIntel ARC Xe2 GPUを採用し、Wi-Fi 7およびBluetooth 5.4が標準装備されているが、LTEや5G通信機能は非搭載だ。筐体はシルバーアルミニウムを使用し、従来の黒基調から大きくデザインを一新。

伝統的な赤いスティック型ポインタは廃止され、中央に大型触覚トラックパッドを配置して操作性を高めた。さらにThunderbolt 4やHDMI、USB-Aなどの多様なポートを備え、薄型デザインながら接続性を重視している。ビジネス向けモデルとしての路線を変え、Appleユーザー層を意識した戦略が見える新機種である。

ThinkPadシリーズの大胆な変化と設計コンセプトの進化

レノボは従来の「黒いビジネスPC」という固定観念を覆し、ThinkPad X9 Aura Editionにアルミニウム製シャーシとシルバー仕上げを採用することで、Apple製品に寄せた洗練された外観を実現した。このデザイン変更により、ビジネス用途だけでなく、デザインや質感を重視する幅広い層へのアピールを狙った意図がうかがえる。

特に、象徴的な赤いTrackPointを廃止し、大型の触覚式トラックパッドを導入した点は画期的だ。これにより操作性が向上し、トラックパッドを多用するユーザーにとってより直感的な操作が可能となった。NotebookCheck.netの報道によれば、「MacBook Airを意識した革新」として、競合製品との一線を画す狙いがあることを示唆している。

レノボは伝統と新規性のバランスを取り、既存ユーザーからの賛否を引きつつも、新たな市場開拓を目指していると考えられる。

ハードウェア性能と拡張性の特徴

ThinkPad X9 Aura Editionは、インテルのLunar Lakeプラットフォームを採用し、CPUに統合された16GBまたは32GBのRAMを提供する仕様が目を引く。これにより、電力効率の向上と高速なメモリアクセスが可能となっている。一方で、メモリの増設は不可能であるため、導入時点でのスペック選択が重要となるだろう。

SSDはコンパクトなM.2 2242モジュールで最大2TBまで対応しており、ストレージの拡張性は保持している。加えて、Intel ARC Xe2 GPUの搭載により、グラフィック性能も確保されているため、ビジュアル重視の業務にも対応できる仕様となっている。しかし、LTEや5Gなどのモバイル通信機能が搭載されていない点は、従来のビジネスPCと比較すると通信面での柔軟性に欠けるといえる。

そのため、Wi-Fi 7を標準搭載することで次世代通信環境に適応し、オフィス内やカフェなど固定ネットワークを想定した設計となっていると分析できる。外出先での長時間の通信利用を必要とするビジネス利用者にとっては、別途モバイルルーターなどのデバイスを用意する必要があるかもしれない。

豊富なポート構成とユーザー体験への影響

AppleのMacBook Airは軽量化のためポート数が限定的であるが、ThinkPad X9 Aura Editionは「エンジンハブ」と呼ばれる設計によって多様なポートを装備している。Thunderbolt 4が2基、HDMIポート、3.5mmオーディオジャックに加え、15インチモデルにはUSB-Aポートも搭載されているため、複数の周辺機器を使用する場面でもドングルの使用を最小限に抑えられる。

ビジネス現場ではプレゼンテーションやリモート会議で外部ディスプレイ接続を行う場面が多いため、これらのポートは利便性を高める要素となる。また、3.5mmオーディオジャックの搭載は、ワイヤレスイヤホンではなく有線ヘッドセットを愛用する利用者層への配慮ともいえる。

ただし、この設計により重量や筐体厚が若干増加する可能性は否めない。そのため、軽さと薄さを重視するユーザーにはMacBook Airが引き続き魅力的であるだろう。レノボの戦略は「性能と利便性」を重視した選択肢を提供することで、ポート不足に悩む層に向けた明確なアプローチといえる。