AMDは、AI市場でのリーダーシップを目指し、新たなCPU・GPUソリューションを発表した。これにより、同社はNvidiaとの競争をさらに激化させ、AIチップ市場における存在感を強化することを目指している。

特に、AIアクセラレーター「Instinct MI325X」は、大規模言語モデルのトレーニングや推論で他社製品を凌駕する性能を持つとされ、AIインフラ市場での大きな武器となる。

急成長するAIチップ市場に挑むAMD

AI技術の進展に伴い、AIチップ市場は急成長を遂げている。市場調査会社MarketsandMarketsによれば、2023年のAIチップ市場の規模は1,230億ドルに達し、2028年には3,110億ドルにまで拡大すると予測されている。この成長の中で、長らく市場を支配してきたのはNvidiaである。NvidiaのGPUは、AIのトレーニングや推論に必要な高性能な計算能力を提供し、多くのAIインフラを支えている。

これに対抗する形で、AMDは新たなAIアクセラレーターやネットワーキングソリューションを発表し、AIチップ市場でのシェア拡大を目指している。特に、最新のEPYCプロセッサやInstinctシリーズのアクセラレーターは、AI関連の負荷の高いタスクを高速かつ効率的に処理することを目的としている。

AMDのCEOであるリサ・スーは、「データセンターとAIは、AMDにとって大きな成長機会であり、EPYCとInstinctプロセッサを通じて、ますます多くの顧客に対応していく」と述べ、AIインフラ市場への積極的な姿勢を強調している。AMDは、AI技術の発展に伴う膨大な計算需要に応えるべく、さらなるイノベーションを追求している。

AMD Instinct MI325Xアクセラレータの性能と展望

AMDが発表したAIアクセラレーター「Instinct MI325X」は、同社のCDNA 3アーキテクチャに基づいて設計されており、大規模言語モデルのトレーニングや推論など、AI関連のタスクに特化した性能を誇る。特に、MI325XはMicrosoft、OpenAI、MetaなどのジェネレーティブAIプラットフォームで利用されており、他社製品に対して優れたパフォーマンスを提供するとされている。

このアクセラレーターは、AIワークロードをより迅速に処理するために設計されており、データセンターやクラウド環境での大規模なAIインフラをサポートすることが期待されている。AMDは、MI325Xが競合製品に比べて優れたトレーニング性能を提供し、AI分野での地位をさらに強固にするとしている。

MI325Xの量産出荷は2024年第4四半期に開始される予定であり、Dell Technologies、Hewlett Packard Enterprise、Lenovoなどのパートナーから2025年第1四半期にシステムの提供が開始される見通しである。また、AMDは次世代のInstinct MI350シリーズも開発中であり、こちらは2025年後半にリリースされる予定である。AIアクセラレーターの進化は、AMDがAI市場で競争力を維持するための重要な要素である。

次世代ネットワーキングソリューションとEPYCプロセッサーの進化

AIインフラの構築には、計算能力だけでなく高速なネットワーキングも不可欠である。AMDはこれに対応するため、2つの新たなネットワーキングソリューションを発表した。1つは「Pensando Salinaデータ処理ユニット(DPU)」であり、もう1つは「Pensando Pollara 400ネットワークインターフェースカード(NIC)」である。これらのソリューションは、AIネットワークの前端と後端でそれぞれ異なる役割を果たす。

Pensando Salina DPUは、AIネットワークの前端で400ギガビット/秒のスループットを提供し、AIの高負荷なデータ処理をサポートする。一方、Pensando Pollara 400は、加速器間の通信を高速化するために設計されており、業界初の「Ultra Ethernet Consortium(UEC)」対応のAI NICとして注目されている。

これらのネットワーキングソリューションは、2025年前半に市場に投入される予定であり、AIインフラの効率性と性能を大幅に向上させると期待されている。また、AMDは最新のEPYCプロセッサも発表し、AI、クラウド、エンタープライズ向けのリーダーシップを強化している。

AIインフラ市場におけるAMDの拡大戦略

AMDは、AI市場でのリーダーシップを確立するため、戦略的な買収と技術開発を加速している。最近の動きとしては、AIインフラ市場への本格的な参入を目指し、ZT Systemsを49億ドルで、フィンランドのスタートアップ企業Silo AIを6億6,500万ドルで買収したことが挙げられる。これらの買収は、AMDがAIインフラ市場における競争力を強化するための重要な一手である。

特にZT Systemsは、Nvidiaの独占的な地位に挑むべく、AI向けのハードウェアソリューションを提供する企業であり、AMDにとって大きな武器となることが期待されている。また、Silo AIの買収は、AIソフトウェアの開発能力を強化し、AIインフラの総合的な提供能力を拡大する狙いがある。

AMDのリサ・スーCEOは、「データセンターAIアクセラレータ市場は2028年までに5,000億ドルに達する見込みであり、AMDはオープンイノベーションを通じて、スケールとパフォーマンスの両面でAIインフラを提供していく」と述べている。AMDは今後、AI技術の進展と共に、さらなる市場シェア拡大を目指している。