ゲーム用ハンドヘルドデバイスを手掛けるAYANEOが、「AYANEO Flip DS」と「Flip KB」の生産を無期限に停止すると発表した。Flip DSはNintendo DSのようなデュアルスクリーン、Flip KBはフルキーボードを搭載し、特にFlip DSはIndiegogoで86万ドル以上を集めるなど注目を集めていた。

AYANEOは戦略的優先順位を理由に生産中止を決定。支援者には全額返金や他製品との交換オプションが提供されるが、すでに受け取ったユーザーへの対応はない。生産中止の背景には、製造上の問題や市場の需要、コスト面の課題など複数の要因が考えられる。AYANEOは今後もハンドヘルド市場での展開を続けるとしているが、今回の決定はファンにとって大きな衝撃となりそうだ。

AYANEO Flip DSとFlip KBの生産停止の背景 予想以上に厳しかった開発の壁

AYANEOはFlip DSとFlip KBの生産を無期限に停止すると発表したが、その背景にはいくつかの要因が考えられる。まず、Flip DSはデュアルスクリーンを採用し、Windows 11を搭載したことで従来のハンドヘルドと大きく異なる設計となっていた。この仕様は高い独自性を持つ反面、開発や生産の難易度を大幅に引き上げた可能性がある。

特に、Windows 11が2画面に最適化されているとは言い難く、ソフトウェアの最適化に苦戦した可能性がある。さらに、コントローラー一体型のハードウェアにおいても、適切なバランスやユーザー体験を確保するための課題があったと考えられる。Indiegogoで86万ドル以上を調達したものの、試作段階を超えて量産に移行する段階で大きな障壁に直面した可能性がある。

Flip KBについても、フルキーボードを搭載することで他のポータブルデバイスと差別化を図ったが、その分コストや設計面での制約が増加した可能性がある。AYANEOは毎年複数の新製品を発表しており、その中でFlipシリーズが戦略的に優先度を下げられた結果、生産中止の決断に至ったと考えられる。

支援者への影響と返金対応 クラウドファンディングのリスクが浮き彫りに

AYANEOはFlip DSとFlip KBの生産停止に伴い、Indiegogoで支援したユーザーに対して返金または他のAYANEO製品との交換オプションを提供するとしている。しかし、支援者の立場からすると、期待していた製品が届かないという状況は大きな失望を伴うものだ。

特に、Indiegogoは伝統的なオンラインショッピングとは異なり、プロジェクトの成功を保証するものではないため、今回のケースはクラウドファンディングのリスクを改めて浮き彫りにしたといえる。返金手続きは「30日以内にメールで申請する」という形で案内されているが、迅速な対応が求められる。

AYANEO側も「カスタマーサポートが対応する」としているが、過去のクラウドファンディングプロジェクトでは返金対応が遅れるケースも少なくない。万が一、メールの返信がない場合は、Webサイトのライブチャットを利用するよう促されているため、支援者は早めのアクションが必要となる。

また、すでにFlip DSやFlip KBを受け取った支援者には返金や交換のオプションが提供されないため、今後のサポート体制にも注目が集まる。AYANEOは「支援者のフィードバックを重視する」とコメントしているが、製品を受け取ったユーザーがどのようなサポートを受けられるのかは明確にされていない。クラウドファンディングの性質上、完全な保証がないことを再認識させる出来事となった。

AYANEOの今後の展開 Flipシリーズの中止が示唆するもの

AYANEOはFlip DSとFlip KBの生産を中止する一方で、ハンドヘルドゲーム市場での展開を続けると明言している。しかし、今回の決定は同社の戦略転換を示唆しているともいえる。AYANEOはここ数年、次々と新製品を投入してきたが、Flipシリーズのような独自性の強いモデルは開発コストや市場の需要とのバランスを取るのが難しいことを改めて証明した形となった。

市場ではSteam DeckやROG Ally、Legion Goといった強力な競合が存在し、AYANEOのような独立系メーカーにとっては生産コストや販売戦略の面で大きな課題がある。

Flipシリーズが成功すれば、クラムシェル型のハンドヘルドデバイスという新たなジャンルを切り開く可能性もあったが、市場の需要が見込み通りでなかった、あるいは開発コストが見合わなかったことが今回の決定の背景にあると考えられる。

一方で、AYANEOは「新たなハンドヘルドデバイスの開発を続ける」としており、今後もポータブルゲーミング市場に挑戦していく意向を示している。Flipシリーズの生産中止が示すのは、独自性の追求が必ずしも成功につながるわけではないという現実だ。

しかし、AYANEOが過去にリリースしてきたモデルの中には高く評価されたものも多く、今後の新製品がどのような方向性を打ち出すのか注目が集まる。

Source:Windows Central