AMDはサンフランシスコで開催された「Advancing AI 2024」イベントにて、最新のEPYC ‘Turin’ 9005シリーズを発表した。この第5世代のサーバーチップは、最大192コアを搭載し、500WのTDPを誇る。企業やAI、クラウド向けに設計され、特にIntelのXeonプロセッサに対して圧倒的なパフォーマンス向上を実現している。

EPYC ‘Turin’ 9005シリーズの概要と主な特徴

AMDは新世代のサーバー向けプロセッサEPYC ‘Turin’ 9005シリーズを発表した。このシリーズは、最新のZen 5アーキテクチャを採用し、最大192コア、384スレッドという驚異的な性能を提供する。また、最大500WのTDP(Thermal Design Power)を持ち、TSMCの3nmプロセス技術を採用したZen 5cコアを活用している点が特徴だ。

これにより、データセンターやAIワークロード向けに高度なパフォーマンスを発揮し、特に高密度な計算処理や仮想化環境において優位性を示す。新しいEPYC ‘Turin’シリーズは、AMDの従来製品に比べてインテルのXeonプロセッサを圧倒的に凌駕するパフォーマンスを実現しており、エンタープライズ市場における新たな標準を打ち立てることを目指している。

特に、AMDはこのシリーズにおいて、AI処理における強化をアピールしており、これが今後のクラウドやデータセンターにおける運用コストの削減やパフォーマンス向上に寄与することを強調している。これにより、企業にとっての競争力強化が期待される。

192コアZen 5チップの性能と競合との比較

AMDのフラッグシップモデルである192コア搭載のEPYC 9965は、インテルのXeon Platinum 8952+と比較して、2.7倍の高速性能を持つとされている。ビデオトランスコーディングでは4倍、高性能計算(HPC)アプリケーションでは3.9倍のパフォーマンス向上が見込まれており、仮想化環境においても1.6倍のコア性能を誇る。この性能差は、データセンターの効率を大幅に向上させることが可能である。

また、5GHzの高周波数モデルEPYC 9575Fも発表されており、こちらは前世代のZen 4モデルと比較して最大28%の性能向上を実現している。このモデルは特にAI GPUワークロードの加速において優れたパフォーマンスを発揮し、AI関連のタスクにおける処理能力を飛躍的に高める。これにより、AIアプリケーションやビッグデータ処理の分野でのAMDの存在感は一層強まるだろう。

インテルの第5世代Xeonとの性能比較では、まだ詳細なベンチマーク結果が不足しているものの、EPYC ‘Turin’シリーズは、その優れたコア数と効率性により、今後の競争で大きなアドバンテージを持つと見られている。

データセンターやAIワークロードにおける利点

EPYC ‘Turin’ 9005シリーズは、特にデータセンターやAIワークロード向けに最適化されている。AI推論タスクでは、AMDの192コアEPYC 9965が、同様のインテル製品に比べて3.0倍から3.8倍の高速処理を実現しており、GPUを利用したAIワークロードでも高いパフォーマンスを発揮する。また、このシリーズは、混合ワークロード環境での効率性にも優れており、汎用計算とAI処理を同時に行う場面で特に強みを見せる。

データセンター向けには、AMDは従来のサーバーの効率を大幅に向上させる提案を行っている。例えば、1,000台の旧型Xeonサーバーをわずか131台のEPYC ‘Turin’サーバーに集約できるとし、電力消費を68%削減し、サーバー数を87%減少させることが可能としている。このように、性能だけでなく、運用コストやエネルギー効率の面でも、EPYC ‘Turin’シリーズは大きなメリットを提供する。

AI分野においても、AMDは推論タスクやトレーニング作業において、非常に高い効率性と性能を発揮することが期待されており、データセンターの将来を大きく変革する可能性がある。

新世代サーバーチップがもたらす未来

AMDは、EPYC ‘Turin’ 9005シリーズの発表を通じて、サーバーチップ市場におけるリーダーシップを強化しようとしている。このシリーズは、特にデータセンターやAI関連の企業にとって、将来的なコスト削減と性能向上をもたらす製品である。AMDは、これまでの製品世代を通じてサーバー市場でのシェアを拡大してきており、今や34%のシェアを占めるまでに成長している。

EPYC ‘Turin’シリーズは、最大192コアの高性能モデルを含む豊富なラインナップを展開しており、あらゆる企業のニーズに対応できる。また、サーバーのアップグレードプロセスを円滑にするために、既存のプラットフォームと互換性を持たせる戦略を採用しており、顧客の運用フローに最小限の影響を与えることを目指している。これにより、企業は迅速に最新技術を導入し、競争力を維持することが可能となる。

この新しい世代のサーバーチップは、単なる性能向上にとどまらず、エネルギー効率や運用コスト削減にも寄与する。そのため、今後のサーバー市場におけるEPYC ‘Turin’シリーズの影響力はますます大きくなると予測される。