「バッテリーを長持ちさせたいだけなのに、急にiPhoneが重くなった気がする」――iPhone 15 Proで省電力モードを使ったとき、そんな違和感を覚えたことはありませんか。

単に120Hzが60Hzに下がっただけでは説明できない“カクつき”や“ワンテンポ遅れる操作感”は、多くのユーザーから報告されています。実際、ベンチマークではシングルコア性能が通常時の半分以下に落ちるケースも確認されています。

この記事では、A17 ProのCPU構造やiOSの電力管理、ProMotionディスプレイの仕組みまでをやさしくかみ砕きながら、「なぜ遅く感じるのか」を整理します。さらに、快適さを保ちながらバッテリーを節約する具体的な設定方法も紹介しますので、今の不満をスッキリ解消したい方はぜひ最後までご覧ください。

iPhone 15 Proで報告される「省電力モードのカクつき」とは何か

iPhone 15 Proで報告されている「省電力モードのカクつき」とは、単に動きが少し遅くなるというレベルではありません。多くのユーザーが「スクロールが引っかかる」「文字入力がワンテンポ遅れる」と感じる現象で、海外のユーザーフォーラムやAppleサポートコミュニティでも繰り返し話題になっています。

ここで重要なのは、“60Hzになること”と“カクつくこと”は別問題だという点です。iPhone 15 Proは通常120HzのProMotion表示ですが、省電力モードでは最大60Hzに制限されます。ただし、本当に問題視されているのはフレーム数そのものではなく、「表示のリズムが乱れること」です。

表示の違いを整理すると、体感の差は次のようになります。

状態 体感の特徴 ユーザーの印象
通常モード(最大120Hz) 滑らかで遅延が少ない ヌルヌル動く
60Hz固定(理想状態) 滑らかさは減るが安定 少し滑らかさが落ちる
省電力モード時の不安定状態 描画間隔が不均一 カクつく・引っかかる

技術的には、この「カクつき」はスタッター(stutter)と呼ばれます。一定の間隔で表示されるはずのフレームが、処理の遅れによって一瞬止まったように見える現象です。GPUやCPUの処理が間に合わないと、16.6ミリ秒ごとに表示されるはずの画面更新が崩れ、体感的に20fps以下のように感じることもあります。

Appleのサポート情報によれば、省電力モードではバックグラウンド更新や視覚効果、プロセッサ性能が制限されると説明されています。実際、9to5Macの検証やユーザー投稿のベンチマークでは、シングルコア性能が通常時より大きく低下するケースも確認されています。この性能低下が、UIの反応速度に直結していると考えられています。

さらに、iPhone 15 Proは120Hz表示を前提にアニメーションが最適化されています。そのため、急に60Hzへ制限されると、スクロールの慣性やアプリ切り替えの動きが本来の設計どおりに再現されず、違和感が強調されやすくなります。ネイティブ60Hzのモデルより「重く感じる」という声があるのはこのためです。

つまり、iPhone 15 Proで報告される省電力モードのカクつきとは、リフレッシュレートの低下+CPU性能制限+描画タイミングの乱れが重なった結果として起きる体感的な遅延現象です。単なる“バッテリー節約による軽い制限”ではなく、操作感に明確な変化が出るレベルのパフォーマンス変動であることが、多くのユーザー体験から浮かび上がっています。

60Hzに下がるだけではない?ネイティブ60Hz機より遅く感じる理由

60Hzに下がるだけではない?ネイティブ60Hz機より遅く感じる理由 のイメージ

「省電力モード=120Hzが60Hzになるだけ」と思われがちですが、実際はそれほど単純ではありません。多くのユーザーが「60Hz機よりも遅く感じる」と報告しているのは、単なる数字の問題ではなく、内部処理そのものが変化しているためです。

特に注目すべきなのは、フレームレートの低下と“カクつき”は別物だという点です。60Hzでも安定していれば滑らかに感じますが、フレーム間隔が乱れると一気に違和感が増します。

60Hzそのものが問題なのではなく、「安定して60Hzを維持できない状態」こそが遅さの正体です。

実際に報告されているベンチマーク結果を見ると、その理由が見えてきます。Geekbench 6の測定では、通常時と省電力モード時でシングルコア性能に大きな差が出ています。

測定モード シングルコア 体感への影響
通常時 約2,900 UI処理に余裕あり
省電力モード 約700〜1,300 描画遅延・待ち時間発生

NotebookCheckなどの分析によれば、A17 Proは本来デスクトップ級に迫るシングルスレッド性能を持ちます。しかし省電力モードではその強みが大幅に制限され、UI描画に使われる処理能力が激減します。

ここがネイティブ60Hz機との決定的な違いです。60Hz固定のiPhoneは、その前提でアニメーションや処理負荷が設計されています。一方、Proモデルは120Hz前提でチューニングされているため、演算余力が減ると設計思想とのズレが生じます。

さらに重要なのがフレームペーシングです。Raph Levien氏の解説でも触れられている通り、60fps表示では16.6ミリ秒ごとに正確に描画される必要があります。しかし処理が間に合わないと33ミリ秒空く瞬間が生まれ、これが「一瞬止まった」感覚を生みます。

つまり、同じ60Hzでも次のような差が出ます。

・ネイティブ60Hz機:安定した16.6ms間隔で描画
・省電力モード時:16.6msを守れず不規則に遅延

この“不規則さ”が、単なる滑らかさ低下以上のストレスを与えます。

加えて、タッチ入力から画面表示までの遅延、いわゆるTouch-to-Photon Latencyも増えやすくなります。入力処理と描画処理が同じ限られたリソースを奪い合うため、指の動きと表示の間にわずかなズレが生じます。これが「粘る」「追いつかない」という感覚の原因です。

数字上は60Hzでも、内部処理の余裕が削られることで“安定性”が崩れる。これこそが、ネイティブ60Hz機より遅く感じる最大の理由なのです。

A17 Proの仕組み:PコアとEコアの違いが体感速度を左右する

A17 Proの体感速度を左右する最大のポイントは、搭載されている「Pコア(高性能コア)」と「Eコア(高効率コア)」の役割の違いにあります。どちらも同じCPUですが、設計思想はまったく異なります。

A17 Proは2つのPコアと4つのEコアで構成されるヘテロジニアス構造を採用しています。これはAppleが長年続けている設計で、Appleの開発者向けドキュメントでも説明されている通り、処理の重要度に応じてコアを使い分ける仕組みです。

項目 Pコア Eコア
役割 高負荷・即時応答処理 省電力・常時処理
特徴 高クロック・高IPC 低消費電力・効率重視
得意分野 UI描画・ゲーム・重い演算 バックグラウンド処理

Pコアは最大3.78GHzで動作し、NotebookCheckなどのベンチマーク分析によれば、シングルコア性能はデスクトップ向けCPUに迫る水準です。つまり、画面を触った瞬間に「一気に処理を終わらせる力」を持っています。

一方、Eコアは電力効率を最優先に設計されています。SNSのバックグラウンド更新や写真の整理など、急がなくていい処理をコツコツこなすのが役目です。消費電力は小さいですが、瞬発力ではPコアに及びません。

では体感速度にどう影響するのでしょうか。

iOSのUI処理は、多くがシングルスレッドで動きます。スクロール計算やアニメーション描画は並列化しにくく、1つのコアの性能に強く依存します。通常モードでは、この重要な処理がPコアに割り当てられます。

その結果、指を動かした瞬間に演算が完了し、フレーム生成までの余裕時間が生まれます。この「余裕」があるからこそ、120Hz表示でも滑らかさが維持できるのです。

しかし省電力モードでは状況が変わります。複数のベンチマーク比較では、Geekbench 6のシングルコアスコアが通常時約2,900から700〜1,300程度まで落ち込む例が報告されています。これはPコアが実質的に使われていない、あるいは大幅に制限されている可能性を示唆します。

UI処理がEコアに回ると、1フレームあたり16.6ミリ秒以内に終わらせるのが難しくなる場面が出てきます。その結果、描画間隔が乱れ、「カクつき」として知覚されます。

重要なのは、60Hzだから遅いのではないという点です。同じ60Hzでも、Pコアが動いている状態なら「キビキビした60Hz」になります。逆にEコア主体だと、数字上は60Hzでも体感は大きく異なります。

体感速度を決めているのはリフレッシュレートだけではなく、どのコアがUIを処理しているかという点が本質です。

つまりA17 Proの仕組みを理解すると、省電力モードで感じる違和感の正体が見えてきます。PコアとEコアの役割分担こそが、滑らかさとバッテリー持ちのトレードオフを生み出しているのです。

ベンチマークで見る性能低下の実態:シングルコア性能はどこまで落ちるのか

ベンチマークで見る性能低下の実態:シングルコア性能はどこまで落ちるのか のイメージ

省電力モード時の「遅さ」を感覚ではなく数字で見ると、その落差は想像以上です。とくに注目すべきは、シングルコア性能の急落です。

Geekbench 6の公開データやユーザー検証によれば、iPhone 15 ProのA17 Proは通常時と省電力モード時で、まるで別物のような挙動を示します。

測定条件 シングルコア マルチコア
通常モード 約2,900 約7,200
省電力モード 約700〜1,300 約2,400〜4,000

NotebookCheckやGeekbench Browserの公開値を基準にすると、シングルコア性能は最大で約75%近く低下しています。これは単なる「少し遅くなる」というレベルではありません。

興味深いのは、マルチコアよりもシングルコアの落ち込みが大きい点です。マルチコアはおおよそ半減にとどまる一方で、シングルコアは4分の1近くまで下がるケースも報告されています。9to5MacやReddit上のベンチマーク比較でも同様の傾向が確認されています。

では、なぜシングルコア性能がここまで重要なのでしょうか。

スマホの操作感、特にスクロールやアプリ切り替え、キーボード入力などは、ほとんどが「1本のメインスレッド」で処理されます。Appleの開発者向け資料でも示されている通り、UI関連タスクは高いQoS(User Interactive)で動作しますが、処理自体は基本的に直列です。

つまり体感速度はシングルコア性能に強く依存します。どれだけマルチコア性能が高くても、メインスレッドが遅ければ画面はカクつきます。

通常時のA17 Proは、シングルコア性能でデスクトップ向けCore i9-13900Kに迫る水準だとTom’s Hardwareが報じるほどの実力があります。しかし省電力モードでは、その強みがほぼ失われます。

スコア700〜1,300という数値は、数世代前のiPhone世代と同等クラスです。Proモデルを使っているにもかかわらず、内部的には“旧世代並み”のシングルスレッド性能で動いている計算になります。

ライトユーザーにとって重要なのは、ゲームや動画編集の性能ではありません。SNSのスクロール、ブラウザ表示、LINEの入力といった日常動作です。これらはまさにシングルコア依存型の処理です。

そのため、省電力モード時に感じる「粘る感じ」「指に追いつかない感じ」は、気のせいではありません。ベンチマーク上でも明確に裏付けられています。

数字で見ると、カクつきの正体は“体感の問題”ではなく、明確な性能断崖だとわかります。シングルコア性能がどこまで落ちるのかを知ることは、この違和感の本質を理解する第一歩です。

iOSの電力管理とQoSとは?省電力モードで起きている内部変化

iPhoneの省電力モードは、単に「動きをゆっくりにする機能」ではありません。内部では、iOSの電力管理システムとQoS(Quality of Service)という優先度制御の仕組みが大きく働いています。

Appleの開発者向けドキュメントによれば、iOSはアプリや処理ごとに優先度を設定し、それに応じてCPUコアを割り当てています。ここが、体感速度を左右する重要なポイントです。

省電力モードでは「どの処理を、どのCPUで、どれくらい急いで実行するか」が根本から変わります。

まず、通常時のiOSはヘテロジニアス構成のCPUを活用しています。高性能なPコアと、省電力なEコアを状況に応じて使い分けています。

項目 通常モード 省電力モード
UI操作 Pコア優先 Eコア中心
バックグラウンド処理 Eコア中心 Eコアに集約
タスク優先度 QoSに忠実 電力制約が最優先

ここで鍵になるのがQoSです。iOSでは「User Interactive」「User Initiated」「Background」などのクラスがあり、たとえば画面のスクロールやキーボード入力は最上位の“User Interactive”に分類されます。

通常であれば、このクラスの処理は高速なPコアに即座に割り当てられます。しかし省電力モードでは、優先度よりも消費電力の上限が優先されます。

その結果、本来は最優先で処理されるUIスレッドであっても、Eコアで実行されるケースが増えます。Geekbench 6の測定例では、シングルコア性能が通常時約2,900から700〜1,300程度まで低下する報告もあり、これはPコアが実質的に使われていない可能性を示唆しています。

さらに問題なのは、Eコアに処理が集中することです。バックグラウンドの同期や写真解析なども同じEコアで動いているため、UIと裏方処理が同じ“細い通路”を取り合う状態になります。

このとき起きやすいのが、優先度逆転に近い現象です。理論上はUIが最優先でも、実際にはEコアの空き待ちが発生し、わずかな遅延が積み重なります。これが「スクロールが引っかかる」「ワンテンポ遅れる」と感じる正体です。

つまり、省電力モードの内部では「性能を少し落とす」のではなく、電力という絶対ルールのもとでスケジューリング思想そのものが切り替わっているのです。

ライトユーザーの方にとっては、同じ60Hz表示でも機種によって滑らかさが違う理由がここにあります。数字のスペックでは見えない部分で、iOSは電力と体感速度のバランスを大胆に調整しているのです。

ProMotionとLTPOの盲点:可変リフレッシュレートがカクつきを増幅する仕組み

ProMotionとLTPOは、本来「なめらかさ」と「省電力」を両立するための先進技術です。しかし省電力モードでは、その可変リフレッシュレート機構が逆にカクつきを増幅してしまうことがあります。

ポイントは、「60Hzに制限される」こと自体よりも、可変であることにあります。Appleのサポート情報によれば、ProMotionは状況に応じて1Hzから最大120Hzまで動的に変化します。省電力モードでは上限が60Hzになりますが、固定60Hzになるわけではありません。

つまり、画面が静止していれば10Hzや1Hzまで下がり、操作が始まった瞬間に60Hzへ引き上げられる仕組みです。この「引き上げ」の過程が、体感上の引っかかりを生むことがあります。

状態 通常時 省電力モード時
最大リフレッシュレート 120Hz 60Hz
最小リフレッシュレート 1Hz 1Hz(可変)
タッチ開始時の変化幅 1→120Hz 1→60Hz

たとえば、ニュースアプリを読んでいて画面が静止しているとき、パネルは低Hzで動いています。そこから指でスクロールを始めると、一気にリフレッシュレートが上がります。

しかし同時に、CPU側ではEコア中心の処理に切り替わっているため、フレーム生成がわずかに遅れます。このとき、ディスプレイが60Hzに戻ろうとするタイミングと、GPUが新しいフレームを出すタイミングがズレると、1フレーム分の間が空いてしまいます。

Raph Levien氏が解説しているフレームペーシングの理論でも、16.6ミリ秒ごとに均等に描画されない場合、人間は強い違和感を覚えるとされています。60fpsを維持していても、間隔が不均一だと「カクつき」と感じるのです。

さらにOLED特有の性質も影響します。OLEDは応答速度が非常に速く、残像でごまかしてくれません。120Hz前提で最適化されたアニメーションを60Hzで表示すると、動きの粗さがはっきり見えてしまいます。

加えて、タッチサンプリングレートも動的に制御されている可能性があります。通常は高頻度で指の動きを検知していますが、省電力時は検知回数が減ることで、指の動きと表示の間にわずかな“間”が生まれます。

結果として起きるのは、単なる「60Hzの滑らかさ低下」ではありません。可変リフレッシュレートの切り替え、フレーム生成の遅延、OLEDの即応性が重なり、一瞬のフレーム落ちが強調される構造になっているのです。

ネイティブ60Hz機が比較的安定して感じられるのは、最初から固定設計で最適化されているからです。一方ProMotionは高性能を前提にしたダイナミックな仕組みであるため、リソースが制限されたときに“揺らぎ”が表面化しやすいのです。

可変リフレッシュレートは本来メリットですが、省電力モードでは「変動すること」自体が体感的なカクつきを増幅する要因になります。

数字上は60Hzでも、体感はそれ以下に感じることがあるのは、この同期ズレとフレームペーシングの乱れが重なっているためです。

ProMotionとLTPOは高度な技術ですが、条件が変わるとその賢さが裏目に出ることもあります。ここに、可変リフレッシュレートの見落とされがちな盲点があります。

タッチ遅延はなぜ起きる?Touch-to-Photonとタッチサンプリングレートの関係

スマホの「タッチ遅延」は、単に画面が60Hzになるから起きるわけではありません。カギを握るのがTouch-to-Photon(タッチ・トゥ・フォトン)という指標です。

これは「指が画面に触れてから、その結果が光として目に届くまでの総時間」を意味します。体感的な“サクサク感”は、この合計時間でほぼ決まります。

工程 内容 遅延の発生源
①タッチ検知 指の位置をスキャン タッチサンプリングレート
②CPU/GPU処理 スクロールや描画を計算 コア性能・負荷状況
③画面表示 フレームを更新 リフレッシュレート

たとえばリフレッシュレートが60Hzの場合、画面更新は約16.6msごとです。一方120Hzなら約8.3msです。これだけでも差はありますが、実はタッチサンプリングレートが下がる影響のほうが体感に直結します。

通常、ProMotion搭載機は120Hz以上の高頻度でタッチをスキャンしています。しかし省電力モードでは、消費電力削減のためこのスキャン頻度が引き下げられる可能性があります。Appleは詳細値を公表していませんが、ユーザー報告や挙動分析からも、反応がワンテンポ遅れる現象が確認されています。

ここで重要なのが、Touch-to-Photonは「足し算」だということです。

仮にタッチ検知が8ms、CPU処理が10ms、表示待ちが16msなら、合計は34msです。これが体感の遅れになります。もしタッチ検知が16msに伸び、さらにCPU処理もEコア中心で遅れれば、40msを超えることもありえます。

Touch-to-Photonは「画面のHz」だけでなく、「タッチ検知の頻度」と「CPUの応答速度」の合計で決まります。

Appleの開発者向けドキュメントでも、UI処理は高優先度QoSで即時実行される設計になっていると説明されています。しかし省電力状態では、この処理が高性能コアではなく高効率コアで処理されるため、指の動きと描画のズレが拡大します。

さらにLTPOの可変リフレッシュレートは、静止時には1Hz近くまで下がります。そこからタッチ入力で60Hzへ戻る際、CPU側のフレーム生成が間に合わなければ、最初の一瞬が“引っかかる”ように感じます。

つまり、タッチ遅延の正体は単なる「コマ数の減少」ではありません。タッチ検知頻度の低下+処理能力の抑制+表示同期のズレという三重構造が、ライトユーザーでもはっきり分かる“粘り”を生み出しているのです。

120Hzに慣れた指と目は、このわずか数十ミリ秒の差を確実に感じ取ります。それが「なんか重い」という直感の正体です。

Adaptive Powerの影響:気づかないうちに性能が抑えられている可能性

iOS 18以降で導入されたAdaptive Powerは、従来の「省電力モードをオンにしたときだけ制限する」という仕組みとは異なり、システムが状況を判断して自動的にパフォーマンスを調整するのが特徴です。

Appleのサポート情報でも、使用状況やバッテリー残量に応じて電力管理が最適化されることが説明されています。つまりユーザーが明示的に操作しなくても、内部では制御が走っている可能性があります。

この「見えない最適化」こそが、体感速度に影響を与えるポイントです。

従来の省電力モード Adaptive Power
手動でオン/オフ システムが自動判断
明確に性能を制限 段階的・予測的に調整
状態が分かりやすい ユーザーが気づきにくい

特に問題になるのは、「通常モードのつもりで使っているのに、内部ではパフォーマンスが抑えられている」ケースです。

バッテリー残量が少なくなってきたときや、消費が急増したとシステムが判断したとき、プロセッサの動作が段階的に引き下げられることがあります。

その結果、「今日はなぜかスクロールが重い」「アプリ切り替えがワンテンポ遅い」といった違和感につながります。

実際、ユーザーコミュニティでも「低電力モードをオンにしていないのに動作が鈍い」といった報告が複数見られます。これは明示的なLPMとは別に、予測アルゴリズムによる事前制御が働いている可能性を示唆しています。

とくにA17 Proのように高性能コアと高効率コアを持つ設計では、どのコアをどの程度使うかが体感速度を大きく左右します。

Adaptive Powerが保守的に働くと、高性能コアの出番が減り、結果として“軽いのに重い”という不思議な状態が生まれます。

Adaptive Powerはバッテリー保護には有効ですが、体感パフォーマンスとのバランスが常に最適とは限りません。

さらにややこしいのは、この制御が固定ではなく、日ごとの使用傾向や充電習慣によって変化する点です。同じ残量30%でも、前日の使い方によって制御のかかり方が変わる可能性があります。

そのため「昨日は快適だったのに今日は重い」という現象も起こり得ます。

ガジェットのライトユーザーにとっては、原因が見えない分、端末の劣化と誤解しやすいポイントです。

Adaptive Powerは賢い仕組みですが、“自動最適化=常に体感が良い”とは限らないという点を理解しておくことが重要です。

もし動作に違和感を覚えた場合は、バッテリー残量や電力関連の設定を一度確認してみるだけでも、原因の切り分けに役立ちます。

気づかないうちに性能が抑えられている可能性を知っておくだけで、端末との付き合い方は大きく変わります。

今日からできる対策:『フレームレート制限』を活用した快適設定術

「省電力モードにするとカクつく。でもバッテリーは節約したい」そんな悩みを今日から解決できるのが、アクセシビリティにある「フレームレート制限」の活用です。

これは単に画面表示を最大60Hzに抑える機能ですが、通常の省電力モードとは決定的な違いがあります。それはCPU性能を制限しない点です。

設定は「設定 → アクセシビリティ → 動作 → フレームレートを制限」をオンにするだけ。数秒で完了します。

項目 省電力モード フレームレート制限
画面リフレッシュ 最大60Hz 最大60Hz
CPU(Pコア) 大幅制限 制限なし
体感の滑らかさ カクつきやすい 比較的安定
バッテリー節約効果 大きい 中程度

NotebookCheckのベンチマークによれば、iPhone 15 Proは通常時シングルコア約2900ですが、省電力モードでは1000前後まで落ち込むケースがあります。これはUIの処理を担うPコアが実質的に使われなくなるためです。

一方、フレームレート制限はあくまで表示側の制御なので、タッチ操作やアプリ起動時には高性能コアがそのまま働きます。結果として「60Hzでもサクサク」という状態を作れるのです。

Tom’s Guideでも、60Hz固定にすることでバッテリー持ちが改善することが報告されています。表示の負荷は確実に下がるため、一定の省電力効果は期待できます。

ポイントは「CPUを縛らず、画面だけを抑える」ことです。これが快適さを守る最大のコツです。

特に効果を実感しやすいのは、SNS閲覧やWebブラウジング中心のライトユーザーです。動画やゲームを多用しないなら、120Hzの恩恵は限定的です。

さらに一歩踏み込むなら、ショートカットのオートメーションで「バッテリー残量30%以下になったらフレームレート制限をオン」にする設定も可能です。これなら普段は120Hz、必要なときだけ60Hzに自動切替できます。

省電力モードの“粘るような遅さ”に悩んでいるなら、まずはこの設定を試してみてください。数字以上に、操作の気持ちよさが変わるはずです。

参考文献