Nvidiaの最新GPU「RTX 5070」が発売されたが、その存在感は限りなく薄い。通常、新型GPUの登場時には市場の動向や在庫状況が話題になるが、今回に限っては「本当に発売されたのか?」という疑問が先行している。
最大の問題は在庫不足だ。発売直後に市場に出回ったRTX 5070はほぼ皆無で、唯一確認された製品もメーカー希望小売価格を大きく上回る高値で販売されていた。さらに、一部の販売店ではそもそも在庫が存在しなかったことが判明しており、Nvidia自身が発売準備を十分に整えていなかった可能性が高い。
この状況は、これまでのRTX 50シリーズに見られた「紙発売(paper launch)」を超えるものだ。在庫のないGPUに対して高額な価格がつく状況に、多くのユーザーは落胆している。一方で、競争力のあるAMDのRadeon RX 9070シリーズと比較すれば、RTX 5070を選ぶ理由はますます見当たらなくなっている。
RTX 5070の在庫はなぜ消えたのか 発売日に実質入手不可能な現状

RTX 5070の発売は、通常の新GPUリリースとは異なり、ほぼ在庫が市場に出回らない異常事態となっている。発売直後に確認できた販売品はわずかで、一部の販売店ではそもそも入荷がなかったことが明らかになった。さらに、確認された限られた在庫も、メーカー希望小売価格(MSRP)より大幅に高い価格で販売されており、入手難易度が異常に高い状況が発生している。
この背景には、RTX 50シリーズ全体の供給問題がある。過去のRTX 5090やRTX 5080の発売時も、在庫不足が深刻化し「紙発売」と揶揄される状況が発生していた。しかし、RTX 5070ではそれを上回るほどの在庫不足が発生しており、一部では「本当に発売されたのか?」という疑問すら持たれている。
Nvidiaは公式には3月後半の発売と発表していたが、一部の地域では突然販売が開始された形となった。そのため、市場の準備が整わないまま発売された可能性が高く、流通や販売戦略の面で混乱が生じたと考えられる。この状況が続けば、RTX 5070の市場流通は今後も不安定なものとなり、入手困難な状態が長引く可能性がある。
RTX 5070の価格設定に違和感 Tiモデルとわずかな差に疑問
RTX 5070の市場価格が高騰している理由の一つに、公式の価格設定と実勢価格の乖離がある。メーカー希望小売価格(MSRP)は£539.99(約10万円)に設定されているが、発売直後に確認された製品の実売価格は£709.99(約13万円)と、大幅な上乗せが見られた。
この価格は上位モデルのRTX 5070 TiのMSRPよりわずか£20(約3700円)低いだけであり、価格差の意味が薄れてしまっている。本来、RTX 5070はコストパフォーマンスを重視する層に向けた製品であるべきだが、現状の価格ではその役割を果たせていない。
RTX 5070 Tiとわずかな価格差しかないため、わざわざ性能の劣るモデルを選ぶ理由がなくなってしまう。特に、価格重視のユーザーにとって、同じ予算でより性能の高いモデルが選べるのであれば、そちらを優先するのは当然の流れである。
この状況は、供給不足による転売価格の上昇とも関係していると考えられる。RTX 50シリーズは発売時に市場へ十分な数が投入されていないため、販売開始直後に価格が吊り上げられやすい。現時点では、RTX 5070の市場価格が落ち着く兆しはなく、今後もしばらくは高額な価格設定が続く可能性がある。
RTX 5070を買うべきか AMD Radeon RX 9070シリーズとの比較
RTX 5070は本来、ミドルクラスGPU市場の主力モデルとなるべき存在だが、現在の状況では購入を推奨しにくい。最も大きな問題は、供給不足による価格の高騰と、RTX 5070 Tiとの差が小さいことだ。こうした条件を踏まえると、同価格帯の競合製品であるAMDのRadeon RX 9070シリーズが、より魅力的な選択肢として浮上する。
Radeon RX 9070およびRX 9070 XTは、RTX 5070と同じく最新世代のGPUであり、性能面ではほぼ同等か、一部の用途では上回るケースもある。特に、レイトレーシングを重視しない用途では、AMDの製品がより優れたコストパフォーマンスを発揮する場面が多い。また、AMDの製品は発売当初から比較的安定した供給が確保されており、RTX 5070のような極端な在庫不足には陥っていない。
RTX 5070が本来の価格帯に落ち着き、在庫が安定すれば、再評価の余地はあるかもしれない。しかし、現時点ではRadeon RX 9070シリーズの方が安定した価格と入手性を備えており、より現実的な選択肢となるだろう。今後、Nvidiaが供給状況を改善しない限り、RTX 5070は「市場に存在しないGPU」として認識され続けるかもしれない。
Source:OC3D