アップルのCEOティム・クックは、ナイキの取締役として約20年にわたりブランドを支えてきた。しかし2024年、ナイキは厳しい市場環境に直面している。クックは、同社創業者のフィル・ナイトや取締役会と共に、売上減少や競争激化といった課題に立ち向かい、新たな経営戦略を推進している。
ナイキの困難を乗り越えるクックの役割
ティム・クックは2005年からナイキの取締役会に参加し、現在では最も長く在籍するメンバーとなっている。2024年に入り、ナイキは市場の変化に直面し、売上の減少や新興ブランドとの競争激化などの困難に直面している。
クックは同社の取締役会のリード独立取締役として、経営再建のための戦略策定において重要な役割を果たしている。特に、同社の創業者フィル・ナイトや会長のマーク・パーカーと連携し、従来の経営戦略の見直しを提案。
ナイキの経営陣にベテランを再登用するなどの施策を進め、企業文化の再構築と市場シェアの回復を図っている。彼のアドバイスは、アップルで培った経営手法を応用し、ナイキの持続可能な成長に寄与している。
クックとナイキの長年の関係の始まり
クックがナイキの取締役に就任したのは2005年、まだアップルのCOOだった頃である。当時はiPhoneもまだ開発段階であり、クックの知名度は今ほど高くなかった。ナイキ創業者のナイトは、彼を「素晴らしい資産」と評し、取締役会における彼の貢献に大きな期待を寄せていた。
それ以来、クックはナイキの経営方針に多大な影響を及ぼし続けている。特に2019年には、業績の低迷と経営陣のセクハラ問題が表面化した際に、CEOのジョン・ドナホーと協力し、対策を講じた経験がある。この長年にわたる関係は、単なる取締役の枠を超え、クック自身の経営哲学を反映したものとなっている。
市場競争の激化とナイキの対策
2024年、ナイキは市場競争の激化により苦戦を強いられている。特に小規模な新興ブランドが台頭し、既存市場を侵食する中で、同社のシューズの需要が減少しているのが現状である。これに伴い、ナイキは今年前半に人員削減を余儀なくされた。
クックは、経営改革の一環としてナイキのベテランであるエリオット・ヒルをCEOとして復帰させることを推進し、経営陣の再編を図った。ヒルの復帰は、ナイキの文化を熟知したリーダーシップによる企業の再生を目指すものであり、クックが提唱する「コアプロダクト重視」の方針にも合致している。このような戦略で、ナイキは市場での地位を再構築しようとしている。
ナイキ経営再建の行方
ナイキの経営再建は現在進行中であり、その成功はクックのリーダーシップに大きく依存している。クックは、アップルでの成功体験を活かし、ナイキのデジタルエコシステムの再編や新たな成長戦略の策定に関与している。
特に中国市場におけるデジタル戦略の見直しや、新しいリテールデザインの導入など、実践的な改革を進めている。2024年第4四半期には前年同期比で10％の売上減を記録しているため、ナイキが再建を成功させるにはさらに大胆な施策が求められる。
クックと経営陣は、今後数カ月で新たな成長戦略を策定し、取締役会での承認を目指している。ナイキの未来は、彼らの決断にかかっている。