AppleはAirPods Pro 2に新たなソフトウェアアップデートを導入し、補聴器としての機能を追加する。このアップデートにより、耳の聞こえに問題を抱えるユーザーは手軽に聴力テストを実施し、AirPodsを補聴器として活用できるようになるのだ。
CNETの記者がこの新機能をいち早くテストし、実際の補聴器とどの程度の違いがあるのかを検証した。来週から米国とカナダで利用可能となるこの機能は、一般的な補聴器よりも手頃な価格で提供される見込みだが、その実力はどうだろうか。
AirPods Pro 2が補聴器に変わる瞬間
Appleは、AirPods Pro 2を単なるワイヤレスイヤホンから補聴器へと変貌させるソフトウェアアップデートを提供する。これにより、ユーザーはiPhoneやiPadを通じて簡単な聴力テストを行い、自身の聴力に合わせた設定で補聴器モードを有効化できる。
聴力テストは約10分で完了し、結果に基づいて特定の周波数を強調する設定が自動的に行われる仕組みだ。この機能は、耳栓を通じた通常の外音取り込みモードよりも高度であり、周囲の音をよりクリアに聞き取ることが可能になる。また、ユーザーは音の増幅量やバランスを細かく調整できる。
音量調整も容易で、外界の音とメディアの音量を別々にコントロールすることができる点も特徴的だ。AirPods Pro 2は単なる補聴器の代替ではなく、聴力の補助機能を多くの人に提供する新たな選択肢を示している。
Appleの補聴器テストと専門的な聴力検査の比較
Appleの聴力テストは、従来の専門的な聴力検査と比べると簡便でありながら、精度の高い結果を提供することを目指している。記者がニューヨークのコロンビア大学医療センターで実施したプロの聴力検査と比較した結果、両者の結果には大きな差がなかった。
Appleのテストも専門的な聴力検査と同様に、高周波数での聴力低下を検出できた。ただし、専門的な検査では言葉の聞き取りテストも含まれるなど、より包括的な診断が行われる。Appleのソフトウェアは、家庭での自己診断に適した手軽な選択肢を提供するものであり、必要に応じて専門的な治療を受けるための第一歩となるだろう。アプリ内での結果保存やPDF化による共有機能も、他の聴力診断ツールにはない利便性を備えている。
会話を強調する「Conversation Boost」機能の効果
AirPods Pro 2に搭載された「Conversation Boost」機能は、周囲の雑音の中でも特に会話を強調して聞き取りやすくする機能である。この機能は、特に人混みの中での会話や騒がしい環境で有効であり、話し手の声を優先的に増幅することで、コミュニケーションをサポートする。
実際、記者がバーでのテストを行ったところ、周囲の音楽や騒音の中でも話し手の声が際立って聞こえることが確認できた。この機能は、特に軽度から中度の聴力低下を持つ人々にとって役立つと考えられる。使用者は、会話をよりクリアに聞き取れるだけでなく、補聴器としての利用にも抵抗が少なくなるだろう。
また、ユーザーが自身の聴力に応じて音量や音のバランスを調整できるため、より個別化されたサウンド体験が提供されることも特徴である。
補聴器市場におけるAirPods Pro 2の立ち位置
AirPods Pro 2は、補聴器市場において革新的な位置付けを持つデバイスとなるだろう。その価格は250ドル程度と、市販の補聴器と比べて格段に手頃であるため、多くの人が気軽に利用できる。しかし、バッテリー寿命が6時間程度と短く、全日使用には向かないため、あくまで補助的な選択肢として考えるべきだ。
専門的な補聴器は数千ドルの費用がかかる場合が多く、特に重度の聴力低下には向いていないが、AirPods Pro 2は、日常的な利用や特定の場面での補聴サポートとして効果を発揮する。市場には他にもBoseやJabraなどのオプションが存在するが、Appleの強みはその手軽さと、既に広く普及しているデバイスとの連携性にある。