AppleがM3 Ultraを搭載した新型Mac Studioを発表したことで、Mac Proの立ち位置が一層不透明になった。従来、最も高性能なMacとされてきたMac Proだが、M3 Ultraを採用したMac Studioがスペック面で優位に立ち、拡張性の差以外に明確な優越点を持たなくなっている。
Mac Proはかつてプロフェッショナル向けの最上位モデルとして、拡張性と性能を両立していた。しかし、Appleシリコン移行後はCPUやGPUが統合され、拡張性が制限される中でMac Studioと競合する形になった。M3 Ultraが登場したことで、Mac Studioは処理能力やメモリ容量でMac Proを凌駕し、実質的にAppleの最強デスクトップとしての地位を確立しつつある。
M3 Ultra搭載Mac StudioがMac Proを上回るスペックを獲得

M3 Ultraを搭載した新型Mac Studioが登場したことで、Appleのデスクトップラインナップに大きな変化が生じている。特にMac Proとの比較では、スペックの逆転現象が起こっている点が注目される。
M3 Ultraは、M3 Maxを2つ統合することで高性能化したチップであり、CPUは32コア、GPUは80コアという圧倒的な処理能力を持つ。一方で、Mac Proに搭載されているM2 Ultraは24コアCPU、76コアGPUにとどまり、単純なスペック比較ではMac Studioの方が優れている。また、最大メモリ容量もMac Studioは512GBに対応するのに対し、Mac Proは192GBが上限となっている。この結果、ハードウェアの純粋なパフォーマンス面では、Mac StudioがMac Proを上回る構図となった。
さらに、ストレージ容量や外部ディスプレイ出力もMac Studioの方が充実している。最大16TBのSSDに対応し、最大8台の4Kまたは6Kディスプレイを接続可能だ。これに対し、Mac Proは最大8TBのSSD、6台の6Kディスプレイまでの対応にとどまる。従来、Mac Proは最もパワフルなMacとして位置づけられていたが、M3 Ultraを搭載したMac Studioの登場によって、その立場が揺らいでいる。
Mac Proの拡張性はもはや利点とは言えないのか
Mac Proが持つ唯一のアドバンテージは、PCIeスロットを活用した拡張性だ。しかし、Appleシリコンへ移行したことで、その優位性は大きく損なわれている。
従来のIntel Mac Proは、CPUやGPUの交換、RAMの増設が可能で、ユーザーの用途に応じたカスタマイズが行えた。しかし、Appleシリコンでは、CPU・GPU・RAMが一体化したSoC(システムオンチップ)構造となり、これらの要素は一切拡張できない。そのため、Mac Proに搭載されているPCIeスロットは、主にストレージカードやオーディオ・ビデオI/Oカードの追加にしか使えない。GPUの追加やアップグレードができない点は、クリエイター向けのワークステーションとしては大きな制約となる。
一方で、Mac Studioは本体の小型化を優先したためPCIeスロットを持たないが、Thunderbolt 5ポートを豊富に搭載し、外付けストレージや周辺機器との接続性に優れる。つまり、内部拡張ができないMac Proの優位性が薄れ、Mac Studioが拡張性を補完できる環境が整いつつある。Appleが今後、Mac Proの役割をどう位置づけるのかが重要になってくるだろう。
Mac Proは今後も存在し続けるのか
M3 Ultra搭載Mac Studioの登場により、Mac Proの将来に疑問が生じている。Appleが今後もMac Proを存続させるのか、それともMac Studioが最上位機種として統一されるのか、不透明な状況となっている。
過去の事例を振り返ると、Appleは2013年に円筒型Mac Proを投入したものの、拡張性の制限がユーザーの不満を招き、2019年に従来型のタワーデザインへ回帰した経緯がある。しかし、Appleシリコン移行後のMac Proは、Intel版と比較して大幅にカスタマイズ性が制限されており、プロ向け市場における価値が低下している。M3 Ultra搭載Mac Studioの登場によって、その価値はさらに揺らいでいる。
今後、AppleがMac ProにM4 Ultraや独自の高性能チップを搭載し、Mac Studioとの差別化を図る可能性はある。しかし、もしMac Studioが今後もUltraチップを搭載し続けるなら、Mac Proが存在する意味はさらに薄れてしまう。Appleがどのような戦略を取るのかは不明だが、現時点ではMac Proが優位に立てる要素は限られていると言えるだろう。
Source:9to5Mac