クアルコムは、高性能かつ長時間のバッテリー寿命を特徴とするSnapdragon X Eliteチップを引っ提げ、ノートパソコン市場で成功を収めた。

しかし、同社の次なる目標は、伝統的にAMDとインテルが支配するデスクトップCPU市場での地位確立だ。2025年を視野に入れ、CEOのクリスティアーノ・アモンはハイパフォーマンスデスクトップへの進出を明言。既存のx86チップと競争するArmアーキテクチャが注目されている。

一方で、課題も多い。クアルコムの過去のミニPCプロジェクトは「品質基準を満たさない」として中止され、競争力強化の必要性が浮き彫りとなった。また、デスクトップ市場ではノートパソコンでのバッテリー優位性が効力を失い、価格戦略や性能が勝敗を分ける要因となる。

加えて、Nvidiaが2025年にWindows向けArmチップを開発予定とされ、競争環境がさらに複雑化する見込みだ。

AMDとインテルという長年の覇者に割って入れるのか。それともクアルコムの挑戦は夢に終わるのか。今後の市場動向が注目される。

Snapdragon X Eliteの実力とその可能性

Snapdragon X Eliteは、クアルコムが展開するArmアーキテクチャを基盤としたプロセッサである。その性能は、Tom’s Hardwareが実施したGeekbench 6のベンチマークスコアで、AMDやインテルのチップを18~25%上回る結果を示した。また、このチップは16時間近いバッテリー寿命を持つMicrosoft Surface Laptop 7に搭載され、性能面だけでなく効率性にも優れている点で高評価を受けた。

しかし、これらの実績はモバイルデバイスに限定されている。デスクトップ市場においては、長時間のバッテリー寿命が購買層の主な決定要因とはならないため、モバイルでの成功をそのまま移行するのは難しい。

一方で、クアルコムが6月に予定していたSnapdragon X Elite搭載ミニPCの計画中止は、技術面での未成熟さを示唆する。しかし、その価格設定が899ドルと手頃であったことから、コストパフォーマンスを武器に市場での可能性を追求できる余地はあるだろう。

クアルコムのデスクトップ進出が成功するか否かは、性能の高さだけでなく、価格や互換性といった要素がどこまで競争力を発揮できるかにかかっている。

クアルコムが直面する最大の障壁

デスクトップCPU市場でのクアルコムの挑戦には、二つの大きな障壁がある。第一に、x86アーキテクチャの強固な支配力だ。インテルとAMDは、数十年にわたりデスクトップ市場を牽引し続けており、ユーザーやソフトウェア開発者からの信頼を確立している。

多くのゲームや業務アプリケーションがx86ベースで設計されており、Armアーキテクチャとの互換性が欠ければ、クアルコム製CPUは市場で十分な競争力を発揮できない。

第二に、新たな競争相手の出現だ。Nvidiaは2025年にWindows対応のArmチップを発表すると報じられている。同社はGPU市場で圧倒的な存在感を持ち、特にゲーマーやクリエイターから高い支持を受けている。これにより、クアルコムがデスクトップ市場での地位を築こうとする過程で、Nvidiaの進出が大きな妨げになる可能性がある。

これらの課題を克服するためには、性能や価格だけでなく、既存のソフトウェア環境への適応が不可欠である。

Armアーキテクチャの未来とクアルコムの可能性

デスクトップ市場におけるクアルコムのArmアーキテクチャ採用は、伝統的なx86アーキテクチャに対抗する新たな選択肢を提示するものである。現在のところ、Armアーキテクチャは効率性の高さが主な利点とされているが、デスクトップ向けCPUではその利点が直接的に活かされにくい。

その一方で、環境への配慮や消費電力の削減を重視するトレンドが加速すれば、クアルコムの取り組みが評価される可能性がある。

クアルコムのCEOであるクリスティアーノ・アモン氏は、デスクトップやハイパフォーマンス市場への進出を強調しており、同社が長期的視点で市場拡大を目指していることは明らかだ。また、Appleが独自のArmベースプロセッサで市場の一角を築いた実績が示すように、クアルコムにもArmの優位性を生かすチャンスは存在する。

独自の考えとして、クアルコムのデスクトップ進出が成功するためには、競争力のある価格設定とソフトウェア互換性の確保が鍵を握る。特に、ミニPCや低価格帯デバイスの分野で市場を開拓することで、既存の強豪に割って入る可能性が生まれるだろう。