QualcommはMWC 2025で最新の5Gモデム「X85」を発表した。最大12.5Gbpsのアップロード速度と3.7Gbpsのダウンロード速度を実現し、新たな5G AIプロセッサにより推論処理が30%向上するという。この発表を受け、CEOのクリスティアーノ・アモン氏は、Appleの独自モデム開発についても「懸念していない」とコメント。
Qualcommの最新5Gモデム「X85」の特徴と進化

QualcommがMWC 2025で発表した「X85 5Gモデム」は、通信速度の向上だけでなく、AI技術の活用にも重点を置いた最新モデルである。最大12.5Gbpsのアップロード速度と3.7Gbpsのダウンロード速度を実現し、従来モデルよりも接続の安定性が強化されている。また、新たに搭載された「5G AIプロセッサ」により、推論処理が30%高速化されるという。
このAIプロセッサは、電波が弱い環境でも最適な接続を確保するための技術として機能する。特に都市部や混雑したエリアでは、従来のモデムよりも効率的なネットワーク管理が可能になり、低遅延かつ安定した通信が期待される。加えて、Qualcommは省電力性能の向上にも注力しており、新しいプロセッサがエネルギー効率を高め、バッテリー消費を抑える役割を果たすとしている。
スマートフォン市場において、通信速度や接続品質は重要な要素である。今回のX85モデムの発表により、特に5Gネットワークを最大限に活用したいユーザーにとって、次世代のモバイル体験が大きく進化する可能性がある。Qualcommはプレミアムスマートフォン向けにこの技術を展開するとしており、今後発売されるAndroid端末にも搭載されることが予想される。
AppleのC1モデムの登場と今後の展開
AppleはiPhone 16eに初めて独自開発の「C1モデム」を搭載し、Qualcomm製モデムからの脱却を進めている。このC1モデムは、iPhone 16シリーズのQualcomm製モデムと同等の通信性能を持ちつつ、省電力性能の向上が図られているという。Appleは既にiPhone 17 AirへのC1モデム搭載を決定しており、2026年には全モデルが次世代の「C2モデム」に移行する計画を立てている。
特に注目されるのは、Appleが独自モデムを開発することでハードウェアとソフトウェアの最適化を進められる点である。iPhone専用の通信チップを設計することで、バッテリー消費の最小化や接続の安定性向上が期待される。さらに、Appleがミリ波(mmWave)5Gの対応を強化していることから、将来的に高速通信環境がさらに充実する可能性もある。
しかし、Appleのモデム技術が成熟するまでには時間がかかると考えられる。現時点ではC1モデムの性能は良好とされるものの、QualcommのX85のような最新技術には及ばない点もある。特にAIによる接続最適化や通信速度の面で、Qualcommの強みが際立つ。今後、Appleがモデム技術をどこまで進化させるのか、ユーザーにとっても関心が高まるところだ。
5Gモデム競争の行方 QualcommとAppleの優位性は
Appleが独自モデムを開発する中で、Qualcommの立場がどう変化するのかは大きな焦点となる。QualcommのCEOであるクリスティアーノ・アモン氏は、Appleのモデム開発について「懸念していない」とし、「モデム技術が重要である限り、Qualcommの技術は求められる」と自信を見せている。特に、最新のX85モデムはAIを活用した通信最適化を強化しており、AppleのC1モデムとの差別化を図っている。
AppleがiPhone向けにモデムを最適化できる強みがある一方で、QualcommはAndroid市場で圧倒的なシェアを持ち、技術革新のスピードも速い。特に、AI技術を活用した接続の最適化や電力効率の改善は、現在のスマートフォン市場において大きなアドバンテージとなる。
一方で、Appleが今後モデム技術を進化させた場合、QualcommがiPhone向けのモデム供給を完全に失う可能性もある。しかし、5G通信技術の発展が続く限り、Qualcommの存在感がすぐに薄れることは考えにくい。今後、AppleとQualcommのモデム競争がどのように展開されるのか、ユーザーにとっても注目すべきポイントとなる。
Source:9to5Mac