次世代のグラフィックスカードRTX 5090およびRTX 5080に採用される12VHPWR/12V-2×6電源ケーブルが、過熱による溶解や焼損のリスクを抱えているとの指摘が上がっている。これは、過去にRTX 4090で発生した問題と同様の現象であり、Nvidiaが改良を施したとする新規格の電源コネクターにも不安が残る状況だ。

特に、電流を監視しバランスを取る役割を果たすシャント抵抗の削減が危険性を高めているとの分析があり、一部の専門家は電力供給の設計が安全性を犠牲にしていると警鐘を鳴らしている。また、12VHPWRコネクターのピン設計が定格ギリギリで動作するため、わずかなズレでも焼損につながる可能性があるという。

Nvidiaは正式なコメントを発表していないが、すでに一部のユーザーからケーブルの異常発熱が報告されている。RTX 50シリーズの購入を検討する際には、この問題が今後どのように推移するかを慎重に見極める必要がありそうだ。

RTX 5090の電源トラブルはなぜ発生するのか 供給電力の監視機能に疑問

RTX 5090の電源問題に関して、多くの専門家が指摘するのがシャント抵抗の削減による影響だ。シャント抵抗は、電流の流れを監視し、異常な電力供給を防ぐ役割を担うが、RTX 50シリーズではその数が削減されているという。

従来の30シリーズまでは、各電源コネクターごとにシャント抵抗が配置され、バランスの取れた電力管理が可能だった。しかし、40シリーズ以降はこの設計が簡素化され、特にRTX 5090のFounder’s Editionではシャント抵抗が1つにまで減らされている。

この設計変更により、電流の異常な偏りが検知されず、特定のワイヤやピンに過度な負荷がかかる可能性が高まる。特に12VHPWRコネクターは、6本のワイヤで600Wの電力を供給する設計となっているが、もし1本でも断線すると、残りのワイヤに過剰な負担がかかる仕組みになっている。

通常であれば、シャント抵抗が適切に配置されていれば、こうした異常が発生した際に電流制御が働く。しかし、RTX 50シリーズの設計では、異常が発生してもGPUがそれを適切に把握できない可能性があるという。

また、NvidiaはRTX 40シリーズの問題を受けて、12V-2×6コネクターを導入し、より安全性の高い設計を謳っていた。しかし、実際の運用では依然として電源供給の監視が十分ではなく、コネクター部分の発熱や溶解が報告されている。

これが設計上の問題なのか、それとも製造工程における品質のばらつきによるものなのかはまだ明らかではない。ただ、シャント抵抗の削減が結果的に電源トラブルのリスクを高めている可能性は否定できない。

12VHPWRコネクターの耐久性に疑問 ピン設計の限界とは

RTX 5090に採用されている12VHPWRコネクターは、従来の8ピンや6ピンのコネクターと異なり、よりコンパクトな設計が特徴となっている。しかし、ピンの許容電流がギリギリの設計となっているため、環境によっては故障が発生しやすいという指摘がある。標準的な8ピン電源コネクターは、各ピンが最低9Aの電流に耐えられるよう設計されており、余裕のある電力供給が可能だった。

一方、12VHPWRコネクターは、各ピンが最大8.5Aの電流を処理する設計となっており、600Wの電力供給に対してほとんど余裕がない。さらに、12VHPWRは最大375Wの電力を供給する仕様が基本となっており、それを超える600Wの供給にはソフトウェアの設定が必要となる。つまり、初期設計の時点で、安全マージンを極限まで削られている可能性がある。

加えて、コネクターが正しく挿入されていない場合、接触不良が発生しやすく、それが熱を持つ原因となる。Nvidiaは、RTX 40シリーズの問題を受けて、新しい12V-2×6規格ではピンの長さを延長することで対策を行ったが、それでもユーザーによる誤った接続や環境変化による影響を完全には防げていない。

加えて、Intelのエンジニアを名乗るRedditユーザーは、12VHPWRコネクターの内部設計が高負荷時に余裕のない仕様になっていることを指摘している。特に、電力供給のバランスが取れなくなった場合、1本のピンに通常以上の負荷がかかり、焼損する可能性があるという。これが事実であれば、NvidiaのRTX 50シリーズは、既存の電源設計の限界を超えた仕様になっている可能性がある。

RTX 50シリーズの電源問題は今後改善されるのか 代替策を考える

NvidiaはRTX 50シリーズの正式な販売開始に向けて、電源問題についての具体的な対策を発表していない。しかし、これまでのRTX 4090でのトラブルを考えると、販売後にユーザーからの報告が相次ぎ、後から修正が行われる可能性がある。

すでに一部のサードパーティ製グラフィックスカードメーカーは、独自に電源設計を改良し、シャント抵抗のセカンダリバンクを追加するなどの対策を講じている。例えば、ASUSのROG Matrix 4090やAstral 5090などのモデルでは、コネクターへの負荷を分散させる工夫がなされている。

現時点でRTX 5080や5090の購入を検討している場合、12VHPWR接続を使用しないモデルを選択するのも1つの方法だ。ただし、ハイエンドモデルではこの規格が主流となっており、選択肢が限られているのが現状である。また、12VHPWRの問題を回避するために、将来的には2本の12VHPWRケーブルを用いた電源設計の採用が求められる可能性もある。

もう1つの選択肢としては、しばらく様子を見て、実際の使用環境でどの程度の問題が発生するかを確認することだ。RTX 4090でも当初は大きなトラブルが話題となったが、時間が経つにつれて対策が進み、一部のモデルでは安全性が向上している。

RTX 50シリーズも、今後のファームウェア更新や製造工程の改良によって、安全性が改善される可能性がある。そのため、焦って購入するのではなく、レビューや実際のユーザーの報告を待つのが賢明かもしれない。

Source:Tom’s Hardware