AMDは、2月28日に新型GPU「RX 9070シリーズ」の発表イベントを開催すると正式に発表した。また、噂されていた「RX 9070 XTの32GBモデル」について、AMDのゲームソリューション部門チーフアーキテクトであるフランク・アゾール氏が「そのような製品は存在しない」と明確に否定した。

CES 2025での発表を見送ったRX 9000シリーズだが、ようやく公式情報が公開されることになる。RX 9070およびRX 9070 XTの詳細は、米東部標準時2月28日午前8時(日本時間同日午後10時)のイベントで明らかになる予定だ。NvidiaのRTX 5070シリーズとの競争が激化するなか、AMDの新たなミッドレンジGPUが市場にどのような影響を与えるのか注目される。

RX 9070シリーズの発表に向けた期待と注目ポイント

AMDが2月28日にRX 9070シリーズの発表イベントを開催することが正式に決定した。この発表は、多くのユーザーが待ち望んでいたRDNA 4アーキテクチャ採用GPUの詳細を明らかにする重要な場となる。まず、RX 9070シリーズのパフォーマンスがどの程度向上しているのかが注目される。

RDNA 4アーキテクチャは、電力効率の向上やレイトレーシング性能の強化が期待されており、特にミッドレンジGPU市場での競争力を左右する要素となる。さらに、RX 9070 XTがどの程度のVRAM容量を持つのかも焦点のひとつだ。32GBモデルの登場が否定されたことから、16GBまたは20GBの構成となる可能性が高い。

また、価格設定も重要なポイントだ。NvidiaのRTX 5070 TiおよびRTX 5070と競合する形となるRX 9070シリーズが、どの価格帯で登場するのかは、多くのユーザーが関心を寄せる要素だ。AMDは、従来からコストパフォーマンスを重視した戦略を取ってきたが、昨今の半導体コストの上昇を考慮すると、価格競争がどのように展開されるかは未知数である。

さらに、発売時期も市場に影響を与える要素となる。RX 9070シリーズは3月上旬の販売開始が予定されているが、NvidiaのRTX 5070 Tiがそれよりも早く市場に投入される可能性がある。こうした状況が消費者の選択にどのように影響を及ぼすのかも、今後の焦点となるだろう。

RX 9000シリーズの戦略とNvidiaとの競争構造の変化

AMDの最新GPUラインナップであるRX 9000シリーズは、これまでのラインナップと異なり、フラッグシップモデルを最優先にするのではなく、ミッドレンジ市場に重点を置く可能性が高い。これは、AMDが従来の市場戦略を調整しつつあることを示唆している。

これまで、AMDはハイエンドGPU市場においてNvidiaと競争を続けてきたが、RTX 5090やRTX 5080のようなハイエンドモデルが市場をリードするなか、AMDはコストパフォーマンスを重視したラインナップを強化する方向にシフトしている。特に、ミッドレンジ市場では、価格と性能のバランスがより重視されるため、RX 9070シリーズがどの程度の市場シェアを獲得できるかが重要になる。

一方で、NvidiaのRTX 5070およびRTX 5070 Tiは、レイトレーシング性能やDLSSの強化が期待されており、AMDのFidelityFX Super Resolution(FSR)との技術競争がさらに激化することになる。AMDがどのようなソフトウェア最適化を提供し、ハードウェア面でどの程度のアドバンテージを持つのかが、今後の市場動向を左右するポイントとなる。

また、IntelもエントリーGPU市場で存在感を増しており、Arcシリーズが低価格帯での競争を激化させている。こうした状況のなか、AMDがミッドレンジ市場でどのような差別化を図るのかが今後の焦点となる。特に、電力効率や消費電力に関する最適化がどの程度進んでいるのかは、ユーザーにとって重要な判断材料になるだろう。

32GBモデルの否定が示す今後のGPU市場の展開

RX 9070 XTの32GBモデルが登場しないことが明確に否定されたが、これがAMDの今後の製品戦略にどのような影響を与えるのかも注目される。まず、現時点でのミッドレンジGPU市場では、32GB VRAMを必要とする用途が限られている。

一般的なゲーミング用途では、16GB程度のVRAMでも十分なパフォーマンスを発揮できるため、AMDがこの市場セグメントで無理に大容量VRAMモデルを投入する必要はないと判断した可能性がある。しかし、AIやコンテンツ制作の分野では、大容量VRAMを必要とするケースが増えている。

特に、クリエイター向けのワークロードでは、32GB VRAMを搭載したGPUの需要が高まる可能性がある。AMDは現在、32GBモデルの計画については否定しているものの、将来的にプロフェッショナル向けGPUとして展開する可能性は十分に考えられる。

一方で、NvidiaはAI向けのGPU市場で大きなリードを保っており、RTX 4090や今後登場するRTX 5090のようなモデルは、大容量VRAMを活かした用途に最適化されている。この点で、AMDがハイエンド市場でどのように競争するのかは不透明な部分が多い。

今後、AMDがプロフェッショナル向け市場にどの程度リソースを投入するのか、そしてゲーム市場とAI市場のバランスをどのように取るのかが、同社のGPU戦略を考えるうえでの鍵となる。

Source:Tom’s Hardware