AMDの次世代ハイエンドCPUシリーズ「Threadripper 9000」が物流データからその姿を現した。コードネーム「Shimada Peak」として知られるこのシリーズは、96コアの最上位モデルを含む複数のバリエーションで展開される予定である。

新たに採用されるZen 5アーキテクチャと改良されたTSMC製造プロセスが、前世代を超える効率と性能向上をもたらす見込みだ。最大192スレッドを誇る96コアモデルは、384MBのL3キャッシュを搭載し、現行の「7995WX」に匹敵する設計が特徴。

一方で16コアモデルはエントリーユーザー向けに設計されており、多様なニーズに応える構成が注目されている。TRX50またはWRX90チップセットに対応する可能性が高く、ユーザーフレンドリーなソケット互換性が予想される。公式発表は未だだが、2025年内の発売が期待されている。

Zen 5アーキテクチャの革新とその可能性

次期Threadripper 9000シリーズでは、AMDが新たに採用するZen 5アーキテクチャが注目される。このアーキテクチャは、前世代のZen 4と比較して、プロセッサあたりの効率と性能が大幅に向上するとされている。これを実現する鍵は、TSMCによる最新の製造プロセスにある。より高いトランジスタ密度を可能にする新技術により、同一消費電力での性能強化、あるいは消費電力を抑えながらの高い処理能力が期待される。

特に、96コアモデルが備える12のコアコンプレックスダイ(CCD)は、Zen 5アーキテクチャの特長を最大限に活用する設計だ。各CCDが8コアを搭載し、それぞれが独立して動作することで並列処理の効率を向上させる。この設計は、ワークステーション市場での用途を想定したもので、科学計算やビデオレンダリング、AIモデルのトレーニングといった高負荷作業に適していると考えられる。

AMDは、エネルギー効率を重視した設計を進めることで、次世代CPUの可能性をさらに広げている。これにより、業界全体における省電力技術の標準化が加速する可能性もある。こうした進化は、単なる技術革新に留まらず、企業が持続可能な成長を実現する上で重要な位置づけとなるだろう。

ソケット設計と互換性の影響

Threadripper 9000シリーズは、sTR5ソケットに対応すると予想されている。このソケットは、既存のStorm Peakモデルと同様に、TRX50またはWRX90チップセットをサポートする設計である。一方で、AMDがEPYC 8004シリーズで採用したSP6ソケットは、物理的な構造が類似しているものの、電気的配置が異なるため互換性はないとされる。この仕様は、プラットフォーム移行時の利便性を考慮した結果といえる。

特に注目されるのは、AMDがsTR5ソケットを少なくとも2世代にわたってサポートするとしている点である。これにより、ハイエンドプラットフォームへの長期的な投資が促進され、プロフェッショナルユーザーやエンスージアストに安心感を提供している。このような設計ポリシーは、過去に頻繁なソケット変更で不満を抱いた市場に対する配慮ともいえる。

独自の考察として、互換性の維持は技術革新とのバランスを取る重要な要素である。新ソケット導入による性能向上が期待される一方で、既存ユーザーへの影響を最小限に抑える設計方針は、AMDの市場戦略の一環であり、競合他社との差別化を図るものと考えられる。

ハイエンドからエントリーまで幅広く対応する構成

Threadripper 9000シリーズは、96コアのハイエンドモデルから16コアのエントリーモデルまで多彩な構成が用意される。この柔軟なラインナップにより、並列処理能力を追求するプロフェッショナル用途から、一般的なエンスージアスト向けの用途まで幅広いニーズに応えることが可能である。

特にエントリーモデルは、シングルスレッド性能を重視した設計が特徴である。これにより、軽量なマルチタスクやゲーム用途、さらにはミドルクラスのワークステーション環境にも適応する。一方、ハイエンドモデルは膨大なスレッド数とキャッシュ容量によって、データセンターや研究機関といった専門分野での利用が見込まれる。

このシリーズが市場に登場すれば、プロセッサ選択の幅がさらに広がることは間違いない。特に複数のワークロードを並行して処理する必要がある現代のコンピューティング環境において、Threadripper 9000シリーズがもたらすパフォーマンスは多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となるだろう。

Source:TechSpot