MediaTekが開発中の最新ARMベースSoC「MT8196」が、次世代Chromebookに搭載される可能性が浮上している。最近公開されたGeekbenchのスコアによれば、このチップは既存のChromebook向けプロセッサを大幅に上回るパフォーマンスを発揮している。特に、GPU性能やAI処理能力の向上が顕著で、Intel製プロセッサを採用した高性能モデルすら凌駕する可能性が指摘されている。

現時点で最速のChromebookはIntel Core Ultra 7搭載モデルだが、MT8196を搭載した「Navi」と呼ばれる開発ボードのスコアは、それを超える数値を記録した。MediaTekは、スマートフォン向けSoC「Dimensity 9400」を基にMT8196を開発しており、その高い処理能力がChromebookにも反映されることが期待される。

一方で、Intelの次世代チップ「Panther Lake」が登場すれば、その勢力図は変わる可能性もある。市場では、高性能ARMベースのChromebookが普及することで、消費電力の低減や静音性の向上といった利点が広がるとの期待も高まっている。

MT8196が搭載されたモデルが正式発表される時期は未定だが、2025年春のイベントでの発表が有力視されている。Chromebook市場に新たなリーダーが誕生するか、今後の動向に注目が集まる。

MT8196が示すARM Chromebookの新たな可能性

ARMアーキテクチャを採用するChromebookは近年着実に進化を遂げてきたが、MediaTek MT8196の登場によって、その流れが加速する可能性が高まっている。これまでのChromebookは、主にIntelやAMDのx86プロセッサを搭載するモデルが高性能機の主流だったが、MT8196のベンチマーク結果を見る限り、ARM系のプロセッサがトップクラスの性能を発揮する時代が目前に迫っている。

ARMチップの利点として挙げられるのが、省電力性と発熱の少なさである。Intel Core Ultra 7を搭載したChromebookは高い処理能力を誇るが、消費電力が大きく、バッテリー駆動時間の面では不利になりがちだ。一方、MT8196はスマートフォン向けのDimensity 9400をベースにしているため、エネルギー効率に優れ、ファンレス設計のデバイスにも適していると考えられる。

加えて、最近のChrome OSの進化により、ARMベースのチップでもパフォーマンスをフルに活かせる環境が整ってきた。AndroidアプリやLinuxアプリの対応が進み、Chromebookの活用範囲が広がる中で、MT8196のような高性能ARMプロセッサが登場することは、プラットフォーム全体の進化にも大きな影響を与える可能性がある。

現時点では、MT8196を搭載した実機の登場時期は明確になっていないが、もしこの性能が正式に証明されれば、ARM Chromebookに対する見方が大きく変わることになるだろう。


Geekbenchスコアが示すMT8196の実力とは

MT8196のGeekbenchスコアは、過去のChromebook向けARMプロセッサと比較しても異例の高さを記録している。特に、シングルコア・マルチコアのスコアがIntel Core Ultra 7と同等、もしくはそれ以上という結果は、これまでのARM Chromebookでは考えられなかったことだ。

これまでChromebook向けのARMチップといえば、MediaTekのKompanioシリーズが代表的だったが、パフォーマンス面ではx86系のチップに一歩譲る形となっていた。しかし、MT8196は基本的にDimensity 9400をベースにしており、スマートフォン市場でQualcommのSnapdragon 8 Gen 3と肩を並べるほどの実力を持つ。

そのアーキテクチャをChromebook向けに最適化することで、従来のARMベースChromebookの性能を大幅に引き上げることが可能になったと考えられる。また、GPU性能に関しても大きな進化が見られる。

Chrome OSは近年、Webアプリだけでなく、ゲームやクリエイティブ用途にも対応する方向へ進化しており、GPUの性能がより重要になっている。MT8196に搭載されるGPUは、スマートフォン向けのハイエンドGPUと同等の性能を持つ可能性があり、これがChrome OS上でどれほどのパフォーマンスを発揮するのかも注目されるポイントだ。

ただし、ベンチマークスコアはあくまで理論上の数値であり、実際の使用感は最適化の程度やデバイスの設計にも左右される。MT8196搭載のChromebookが実際に市場に出た際、どれほどの快適な動作を実現できるのか、今後の発表が待たれる。


Intelの新世代プロセッサ「Panther Lake」との競争が鍵に

ARM系プロセッサの台頭が目立つ一方で、Intelも次世代プロセッサ「Panther Lake」の投入を準備している。Intelはこれまで長年にわたり、Chromebook市場においてx86アーキテクチャの強みを活かしてきたが、MT8196の登場によって状況が変わる可能性がある。

「Panther Lake」は、Intelの新アーキテクチャを採用し、特にAI処理能力や省電力性能の向上が期待されている。これにより、従来のIntel製プロセッサよりもモバイルデバイス向けの最適化が進み、Chromebookにも適したプロセッサとして登場する可能性が高い。しかし、現時点ではGeekbenchなどのベンチマークスコアが出ておらず、実際の性能がMT8196を上回るのかは未知数だ。

また、Chromebook市場の今後を考える上で重要なのは、ARMとx86のどちらが主流になるのかという点だ。AppleがMacにMシリーズのARMプロセッサを採用したことで、ARMアーキテクチャの可能性が一気に広がったのと同様に、Chromebook市場でもMT8196のような高性能ARMチップが定着すれば、今後のハードウェア設計の方向性が大きく変わるかもしれない。

最終的には、価格、消費電力、実際の動作速度など、さまざまな要素が絡み合ってユーザーの選択が決まる。MT8196が示したパフォーマンスが本物であれば、ARM Chromebookの未来はこれまで以上に明るいものとなるだろう。

Source:Chrome Unboxed