AMDは、最新のRDNA 4アーキテクチャを採用したRadeon RX 9000シリーズを発表した。第1弾として、Radeon RX 9070およびRX 9070 XTが2025年第1四半期に登場する予定である。RDNA 4は、AI性能の強化やレイトレーシング機能の向上を特徴としており、ゲーマーにとって新たな体験を提供することが期待される。
しかし、モバイル向けのRDNA 4 GPUに関する情報は現時点で明らかにされておらず、ゲーミングノートPCユーザーにとっては、今後の展開が気になるところである。AMDのBen Conrad氏は、Notebookcheckのインタビューで、RDNA 4の戦略について「現在のグラフィックス戦略は、RDNA 4をデスクトップ市場に集中させることです。
そのため、将来的にはまずその分野で製品を展開することになるでしょう。もちろん、RDNA 4やそれ以降のグラフィック技術が、APUやその他の将来の製品を通じてモバイル市場にも展開されることは間違いありません。」と述べている。
この発言から、RDNA 4を搭載したモバイル向けGPUの登場は、しばらく先になる可能性が高いと考えられる。現時点では、AMDのモバイル向け戦略は、統合グラフィックスを備えたAPUに重点を置く方向性が示唆されている。ゲーミングノートPCユーザーとしては、今後のAMDの動向に注目し、最新情報を待つ必要があるだろう。
RDNA 4デスクトップGPUの発表が示唆するAMDの戦略転換
AMDがCES 2025でRDNA 4アーキテクチャを採用したRadeon RX 9000シリーズのデスクトップ向けGPUを発表したが、これまでの発表内容を振り返ると、同社の戦略に変化があることが見えてくる。通常、AMDは新しいGPUアーキテクチャを発表する際、デスクトップとモバイルの両方で展開を示唆するものだ。しかし、今回はモバイル向けGPUに関する言及が一切なかった。
これは単なる遅れではなく、AMDの市場戦略そのものに変化が生じている可能性がある。Notebookcheckのインタビューで明らかになったように、同社は当面の間、RDNA 4をデスクトップ市場に集中させる意向を示している。RDNA 3世代では、ノートPC向けのGPUも一定数投入されていたが、市場でのシェアを伸ばすには至らなかった。
特にNVIDIAのGeForceシリーズが高性能・省電力の両面で優位に立つ状況が続いたことで、AMDはモバイル市場での立ち位置を再考しているのかもしれない。加えて、今回の発表方法も異例だった。CES 2025の基調講演では一切触れられず、代わりにメディア向けの説明会で情報が公開され、さらに3月に専用の発表イベントを控えているという。
この動きからは、AMDがRDNA 4の発表に慎重になっていることがうかがえる。RDNA 4のパフォーマンスや消費電力の最適化に関する詳細がまだ明らかになっていないこともあり、同社がどのように新世代GPUを展開していくのか、今後の追加情報が重要になりそうだ。
モバイル向けRDNA 4 GPUが発表されない理由とは
では、なぜAMDはモバイル向けのRDNA 4 GPUを発表しないのか。その背景には、いくつかの要因が考えられる。まず、過去のモバイル向けRadeon GPUの採用状況が芳しくなかったことが影響している可能性がある。RDNA 3世代では、Radeon RX 7600SやRX 7900Mといったモバイル向けの製品が登場したものの、採用例は限られていた。
多くのゲーミングノートPCメーカーがNVIDIAのGeForceシリーズを選択し、AMDのGPUは市場で目立った存在にはならなかった。また、RDNA 4のアーキテクチャがモバイル向けに適していない可能性もある。AMDはこれまで、モバイル向けGPUの消費電力や発熱を抑えるための技術に課題を抱えてきた。
NVIDIAはMax-Q技術を活用し、高性能GPUを低消費電力で動作させる仕組みを確立しているが、AMDのRadeon GPUはこれに匹敵する技術を持ち合わせていない。結果として、ノートPCメーカーがAMDのディスクリートGPUを採用する動機が薄れている可能性がある。
さらに、AMDの戦略がAPU(Accelerated Processing Unit)にシフトしている点も見逃せない。最近のRyzenシリーズでは、統合グラフィックスの性能が向上し、APUだけで十分なグラフィックパフォーマンスを提供できるようになっている。
特に「Ryzen AI MAX “Strix Halo”」のような新世代プロセッサは、統合グラフィックスの強化が進んでおり、専用GPUが不要なケースも増えている。これらの要素を踏まえると、AMDは今後、モバイル市場ではAPUの強化に力を入れ、ディスクリートGPUの展開を抑える可能性がある。
ゲーミングノートPC市場におけるAMDの今後の展開
このような状況の中で、ゲーミングノートPC市場におけるAMDの今後の展開が注目される。現時点では、RDNA 4を搭載したモバイル向けGPUの発表がないため、今後の製品ラインナップがどうなるのかは不透明だ。ただし、AMDは過去にも遅れてモバイル向けのGPUを投入した事例があるため、RDNA 4世代でも後から追加される可能性は否定できない。
しかし、もしAMDがディスクリートGPUの提供を抑えるとすれば、ゲーミングノートPC市場における立場はさらに厳しくなるだろう。現在の市場では、ほとんどのハイエンドゲーミングノートPCがNVIDIAのGeForce RTXシリーズを搭載しており、AMDの存在感は薄い。
もしRDNA 4のモバイル向けGPUが登場しないとなると、AMDのノートPC向けGPU市場は事実上、Ryzen APUの統合グラフィックスに頼る形になる。一方で、AMDはAPUの進化によって一定の競争力を維持しようとしている。
「Strix Halo」などの次世代APUは、これまでの統合グラフィックスとは一線を画す性能を持ち、ローエンドからミドルレンジのゲーミングノートPC市場では存在感を発揮できるかもしれない。しかし、それでもハイエンドゲーミングノートPC市場において、NVIDIAに対抗するだけの強力な製品がないままであれば、ユーザーの選択肢としてAMDが後退する可能性もある。
最終的に、AMDが今後どのような形でゲーミングノートPC市場に関与していくのかは、次の数カ月間の発表にかかっている。RDNA 4のモバイル向けGPUが登場するのか、それともAPUによる戦略転換が進むのか、引き続き注目していく必要がある。
Source:HotHardware