2024年第3四半期のNANDフラッシュ業界は、ビット出荷量が2%減少したものの、企業向けSSDの需要急増により収益は前期比で4.8%増の176億米ドルに達した。特に企業向けSSDの価格は約15%上昇し、これが業界全体を牽引した。
一方、消費者向け製品の需要は低迷し、特にスマートフォン向けNANDフラッシュの注文が減少。今後、業界はさらに厳しい状況が予測され、特に消費者向け市場の低迷が影響を与えると見られる。
企業向けSSD需要の急増が業界全体の収益を押し上げる
NANDフラッシュ業界では、2024年第3四半期において企業向けSSDの需要が大きく拡大し、業界全体の収益が前期比で4.8%増加した。この成長の背景には、企業向けのデータストレージ需要の強さがある。特に、クラウドサービスやデータセンター向けのSSD需要が急増したことが、平均販売価格(ASP)の上昇に寄与したと考えられる。企業は大容量かつ高速なストレージの必要性が高まり、これが業界の収益成長を支えた。
一方で、企業向けSSDの強い需要は、製品の価格を押し上げたものの、消費者向け市場との対比が顕著になってきた。消費者向け製品の価格は、低迷する需要の影響を受け、控えめな成長にとどまっている。特に、個人向けのストレージ需要は、依然として低迷しており、企業向けと消費者向けの需要動向に明確な差が生じている。
専門家は、企業向けSSDの需要は今後も一定期間強いままであると予測しているが、消費者向け市場が回復しない限り、業界全体の需要は一層分岐し、さらなる不均衡が生じる可能性があると指摘している。
スマートフォン市場の低迷とその影響
2024年第3四半期には、特に中国のスマートフォンブランドが低在庫戦略を採用した影響で、スマートフォン向けNANDフラッシュ製品の需要が減少した。この動きは、スマートフォン市場全体の需要低迷と密接に関連しており、特に新製品発表のタイミングで在庫調整が行われるケースが多い。これにより、NANDフラッシュ市場におけるスマートフォン向け製品の注文は減少し、契約価格はほぼ前期と同水準にとどまっている。
中国市場における消費者の購買意欲が低調であることが、スマートフォン向けNANDフラッシュ需要の縮小に拍車をかけているとの見方が強い。特に、価格競争の激化により、メーカー各社は生産調整を余儀なくされている。これが、消費者向けのNANDフラッシュ製品の価格に影響を与え、全体的な市場収益の停滞を招いている。
一部の業界アナリストは、スマートフォン市場が回復するには時間がかかると見ており、当面はこの低迷が続く可能性がある。そのため、企業向け市場に依存する状況が続く一方で、消費者向け市場の回復を促進するためには、さらなるイノベーションや新しい製品戦略が必要とされるだろう。
NANDフラッシュ市場の今後と価格動向の予測
NANDフラッシュ業界は、2024年第4四半期に向けてさらなる課題に直面することが予測されている。TrendForceの予測によると、消費者向け市場の低迷を受け、全体的な需要は一層弱まる見込みだ。また、企業向けSSDの価格が安定する一方で、他の製品カテゴリでは価格が下降に転じる可能性があるとされる。このような状況が続く中で、NANDフラッシュの契約価格は全体的に低下し、業界収益は4Q24において約10%減少する可能性がある。
特に企業向けSSDは、一定の需要を維持するものの、消費者向け市場の回復がない限り、業界全体の成長は限定的になると考えられている。これにより、NANDフラッシュ業界は今後の需給バランスに影響を受ける可能性が高い。企業は、価格の安定を確保するために、新たな需要源を模索する必要があるだろう。
加えて、企業向けSSDに対する需要が引き続き強いものの、業界全体の収益成長を支えるには消費者向け市場の復調が欠かせない。今後は、企業向けと消費者向けの需要のバランスを取るために、両市場に対応した戦略が求められるだろう。