AppleのiPhone 16 ProとGoogleのPixel 9 Proは、どちらも最新技術を駆使したフラッグシップモデルであるが、その製造コストには大きな差がある。iPhone 16 Pro MaxのBOM(部品表)コストは約485ドルであり、特に48MP超広角カメラやLTPO OLEDディスプレイ、A18 Proチップなどに多額の投資が行われている。

一方、Pixel 9 ProのBOMは約406ドルと抑えられており、ディスプレイやカメラでのコスト削減を図りつつも、AI機能を活用してパフォーマンスの高さを実現している点が特徴である。Appleは高品質なハードウェアに重点を置き、プレミアム感を提供することで価格を正当化しているが、Googleは費用対効果を重視した設計とソフトウェアの力でハイエンド体験を可能にしている。

両社のアプローチの違いは製造コストに顕著に表れており、同じハイエンド市場においても、AppleとGoogleが異なる方向性で競争していることが伺える。

iPhone 16 Proのコスト増加の背景にあるAppleの戦略

AppleはiPhone 16 Proの製造コストを大幅に増加させている。その原因の一つが、iPhone 15 Pro Maxと比較して32ドル増加した部品表(BOM)コストである。特に、48MP超広角カメラ、A18 Proチップ、LTPO OLEDディスプレイのアップグレードがコストを押し上げており、カメラやディスプレイにかけるAppleの投資は顕著である。

カメラはBOM全体の16%を占めており、Appleがユーザーに高解像度の写真体験を提供することに注力していることがうかがえる。また、A18 ProチップはApple独自のプロセッサであり、性能面でのアドバンテージを確保するための重要な要素だ。

Appleの製品には高級感と卓越したパフォーマンスが求められるため、ハードウェアの強化に多額の投資を惜しまない姿勢がある。その一方で、価格帯が高めに設定されることで利益率も高くなっている。消費者は、プレミアム価格に見合った品質とブランド価値を求めており、Appleはその期待に応えるために製造コストを惜しまない。

こうしたAppleの戦略は、競合製品との差別化を図るためにも重要であるが、プレミアム路線を維持し続けるリスクも伴う。例えば、他ブランドが同等の機能をより手頃な価格で提供した場合、消費者がAppleにこだわり続けるかは見通しが難しい。

Pixel 9 Proが目指す「費用対効果の高いハイエンド」

一方、GoogleのPixel 9 Proは、BOMを406ドルに抑えることで、iPhone 16 Proに比べて製造コストを低減している。Gizmochinaが報じた情報によれば、Pixel 8 Proに比べて約11%コストを削減している。Pixelの製造コスト削減の要因は、カメラやディスプレイなどの主要なコンポーネントにおいて、性能を維持しながらも費用を抑える工夫をしている点にある。

例えば、ディスプレイにはSamsung製のものを採用し、コストを75ドル程度に抑えているほか、カメラのコストも61ドルと比較的控えめである。GoogleはAIによる画像処理機能や音声認識といった機能で、ハードウェアのコストを補完している。

Tensor G4プロセッサは約80ドルのコストで、AppleのA18 Proチップに比べると低価格だが、Google独自のAI機能を支える重要な役割を果たしている。AI技術を活用してユーザー体験を最適化するGoogleのアプローチは、価格とパフォーマンスのバランスを重視した設計思想の表れである。

消費者にとっても、AI機能を駆使した快適な操作性が魅力となり得る一方で、ハードウェアに対する期待が異なる層にはアピールしにくい側面もある。

ディスプレイとカメラへの投資に見るAppleとGoogleの違い

AppleとGoogleはディスプレイやカメラにおける投資戦略で異なる方向性を見せている。iPhone 16 Pro Maxの6.9インチのLTPO OLEDディスプレイは、Appleのプレミアム戦略を象徴するものだ。Appleはユーザーに最高のビジュアル体験を提供するため、コストを惜しまない姿勢を見せ、ディスプレイに110ドルを投資している。

一方、GoogleはPixel 9 Proのディスプレイにおいても視覚品質の高さを意識しながらも、コストを抑えた選択をしている。また、カメラにおいても同様の違いが見られる。Appleは高品質なカメラでの差別化を図り、91ドルというコストをかけているのに対し、GoogleはAI機能を活用することで、61ドルのコストでも高品質な写真を実現している。

これにより、Googleはカメラの物理的な性能だけでなく、ソフトウェアの力でユーザーに優れた撮影体験を提供している。Appleのハードウェア重視のアプローチとGoogleのAIを駆使したアプローチは、それぞれ異なるターゲット層に訴求し、競争の舞台において異なる魅力を提供する結果となっている。