AppleがTikTokに年齢推奨を12歳から17歳以上へ引き上げるよう密かに要請していた事実が、サウスカロライナ州での訴訟により明らかになった。この要請は、TikTokが若者のメンタルヘルスへ与える影響に対する懸念が背景にあり、Appleの調査チームは同プラットフォームが「強烈で示唆的なコンテンツ」を含むと判断したとされる。

この件に対し、TikTok側は反発しており、一部の情報は再び非公開とされた。業界全体におけるユーザーの健康と福祉への配慮が問われる中、Appleの対応が注目される。

TikTokの年齢推奨引き上げの背景

AppleがTikTokに対して年齢推奨の引き上げを要請した背景には、若者のメンタルヘルスへの影響に対する懸念がある。報告によれば、AppleはTikTokにおけるコンテンツが「頻繁に強烈で成熟した、あるいは示唆的なもの」を含むとしており、未成年ユーザーに対して不適切な影響を与えるリスクがあると判断したようだ。

このため、AppleはApp Storeにおけるガイドラインをもとに年齢推奨の引き上げを検討し、2022年には調査チームを設置してTikTokの内容を分析していた。こうした対応は、Appleが未成年者の健康を重視し、他のアプリにも厳格なガイドラインを適用する姿勢を示しているといえる。だが、Appleの具体的な要請内容の全容は公開されておらず、業界内での対応にも議論を呼んでいる。

訴訟から浮き彫りになった業界の課題

Appleの要請に関する情報がサウスカロライナ州の訴訟により明らかになったことは、業界全体の課題として注目される。TikTokが抱える若年層ユーザーへの悪影響やプラットフォーム内での過剰利用について、複数の州での訴訟が提起されており、Appleの要請もその流れに加わるかたちで浮上した。

例えば、TikTokでは暴言や摂食障害に関するコンテンツが表示されており、米国と英国の未成年者ユーザーに対するポップアップアラートの分析では、1か月間で表示されたうちの50件に1件が暴言を含んでいたと報告されている。これに対し、TikTokの広報担当者アレックス・ハウレック氏は、漏洩された情報の公開を無責任であると批判しているが、既存の対策で十分かどうかは依然として疑問視されている。

ソーシャルメディアと広告収益の相関関係

TikTokは多くの未成年ユーザーを抱え、その利用時間に基づいて広告収益を生み出しているが、こうした収益モデルがメンタルヘルス問題に寄与している可能性がある。

多くのソーシャルメディアプラットフォームがユーザーの引き留めを図り、広告表示回数を増加させる仕組みをとっており、ユーザーがより長時間プラットフォームを利用することがビジネス上重要な要素となっている。だが、長時間の利用は、ユーザーに対する健康リスクを伴う場合があるため、こうした商業的な戦略と健康リスクとのバランスが問われている。