2023年6月に登場したAMDのEPYC 9754は、128コアと256スレッドを備えたサーバー向けのハイエンドプロセッサであり、当初の価格は約11,900ドルであった。しかし、現在このプロセッサがeBayで70%オフの約3,500ドルという衝撃的な価格で販売されている。主に中国から出品されているこれらのCPUが、なぜここまで値崩れしたのか、その背景にはグレー市場の影がささやかれている。

発売からわずか数ヶ月で大幅値下げ:128コアのEPYC 9754

AMDのEPYC 9754は2023年6月に発表されたばかりのサーバー向けプロセッサである。このCPUは、128コアと256スレッドという圧倒的なスペックを持ち、データセンターやクラウドネイティブなワークロードに向けて設計された製品である。発売当初、その価格は約11,900ドルに設定されており、これはハイエンド市場向けの正当な価格とされた。

しかし、わずか数ヶ月後には市場で急激な値下げが見られ、eBayでは約3,500ドル、すなわち70%もの値引きで販売されていることが確認されている。この価格変動は異例であり、通常の市場動向とはかけ離れた現象である。AMDの公式サイトでは依然として元の価格が維持されており、特に短期間でここまでの値下げが発生した理由は不明確だ。

特に注目すべきは、これらのCPUが主に中国から出荷されている点である。未開封品や保証がない場合も多く、購入者には注意が必要だが、それでもこの価格で入手できることは市場に大きな衝撃を与えている。

なぜ中国の業者はこの高性能プロセッサを投げ売りするのか?

なぜ、これほどのハイエンド製品が中国から投げ売りされているのか、その背景にはいくつかの要因が考えられる。まず考えられるのは、グレー市場を通じた流通である。グレー市場とは、公式の流通ルートを経由せずに販売される商品であり、通常よりも低価格で流通することが多い。この場合、在庫過剰や廃棄リスクを避けるために業者が素早く在庫を処分している可能性がある。

もう一つの要因としては、中国国内の市場動向や規制の影響が考えられる。製造業者が余剰在庫を抱えた結果、海外市場に放出している可能性がある。また、サーバー市場における技術的な需要の変化や競合他社の製品による圧力も、価格低下の一因となっているかもしれない。

しかし、これらのCPUがeBayで大量に出回っている背景には、正規品であるかどうかや品質に問題があるのではないかという疑念も生じる。購入者はリスクを十分に理解した上で購入を検討する必要がある。

お買い得? グレー市場のリスクとその裏側

eBayで販売されているAMD EPYC 9754の価格は非常に魅力的であるが、グレー市場に特有のリスクも無視できない。まず、保証やサポートの欠如が大きな問題となる。公式の販売ルートを通じて購入した場合には、通常は製品保証やテクニカルサポートが付与されるが、グレー市場から購入した場合はこれらのサービスが受けられないことが多い。

さらに、偽物やリファービッシュ品が紛れ込んでいる可能性もある。外見は新品のように見えても、内部のコンポーネントが交換されている場合や、性能が劣化しているケースもある。特にサーバー用途で使用されるCPUは長時間の連続稼働が前提となるため、信頼性の低い製品を使用するとシステム全体の安定性が損なわれるリスクがある。

購入を検討する際は、出品者の評価や過去の販売履歴を確認することが推奨される。低価格に飛びつく前に、リスクと利益のバランスを慎重に検討する必要がある。

AMD EPYC 9754の特徴とパフォーマンス

AMD EPYC 9754は、そのスペックだけでも驚異的な性能を誇る。128コア、256スレッド、ベースクロック2.25 GHz、最大ブーストクロック3.1 GHzという数値は、現在市場に出回っている多くのプロセッサの中でもトップクラスである。このプロセッサは、特にクラウドネイティブなワークロードや高性能サーバー向けに設計されており、並列処理性能において他を圧倒している。

また、256MBのL3キャッシュを搭載し、TDPは360Wに設定されている。このTDPは、320Wから400Wの範囲で調整可能であり、用途に応じて電力消費を最適化できる点も特徴的である。これにより、大規模なデータセンターやクラウドサービスプロバイダーにとっては、コストパフォーマンスの面でも非常に魅力的な選択肢となる。

さらに、EPYC 9754はSP5ソケットに対応しており、シングルソケットおよびデュアルソケット構成での運用が可能である。この柔軟性により、さまざまなサーバー環境での使用が見込まれる。