SiFiveは、最新のRISC-V開発ボード「HiFive Premier P550」の限定早期アクセス版の販売を開始した。このボードは、人工知能や機械学習をサポートする高性能なシステムで、最終的なソフトウェアリリースは12月に予定されている。今回のリリースは、限られた開発者がハードウェアを先行体験できる機会であり、今後のイノベーションを期待させるものだ。
SiFive、開発者向けに限定版ボードをリリース
SiFiveは、最新のRISC-V開発ボード「HiFive Premier P550」の限定早期アクセス版を発表した。限定数は100台ほどで、599ドルという価格で販売されている。このボードは、SiFiveが提供する64ビットのP550コアを搭載しており、これにより高性能な処理能力が実現されている。特に、人工知能(AI)や機械学習(ML)向けのニューラルプロセッサを備えており、エッジAIの分野でも大きな期待が寄せられている。
今回の限定版リリースは、12月に予定されている正式リリースに先駆けて、選ばれた開発者たちに早期にハードウェアを提供することが目的である。SiFiveは、Canonicalとのパートナーシップのもと、最終版であるUbuntu 24.04のサポートを目指しているが、現時点ではカスタムYoctoベースのLinuxディストリビューションが提供されている。
この限定版にはいくつかの制限も存在する。たとえば、搭載されている16GBのRAMや、まだサポートされていないニューラルプロセッサなどである。しかし、開発者たちはこのボードを利用することで、早期にRISC-Vアーキテクチャを活用した開発を進めることができるだろう。
ハードウェア性能の詳細と強化されたニューラルプロセッサ
HiFive Premier P550は、64ビットP550 RISC-Vコアを搭載しており、1.4GHzのクロック速度で動作する。また、Imagination社製のAXM-8-256 GPUが搭載されているが、このGPUのソフトウェアサポートは年内の提供が予定されている。他にも、32GBのLPDDR5メモリや128GBのeMMCストレージなど、開発者向けに高い性能を提供する仕様となっている。
特筆すべきは、ニューラルプロセッサの性能である。当初は13.3 TOPS(テラオペレーション毎秒)とされていたが、最終版では20 TOPSに向上している。これは、エッジAIや機械学習を行う開発者にとって非常に魅力的なスペックである。しかし、このニューラルプロセッサのソフトウェアサポートはまだ提供されておらず、具体的な対応時期については明らかにされていない。
これらのハードウェア性能により、HiFive Premier P550は高性能なRISC-Vボードとして位置付けられている。ただし、限定版での提供であるため、今後のソフトウェアサポートや正式リリース後の追加機能にも注目が集まる。
ソフトウェアサポートの遅れとCanonicalのUbuntuパートナーシップ
SiFiveは、Canonicalと提携し、最終的にUbuntu 24.04をHiFive Premier P550に搭載する予定である。しかし、現在提供されているのはカスタムYoctoベースのLinuxディストリビューションであり、すべてのハードウェア機能がサポートされているわけではない。特に、Imagination製のGPUやニューラルプロセッサのサポートは現時点で不完全であり、正式な対応は年末に予定されている。
このソフトウェアサポートの遅れは一部の開発者にとって不満かもしれないが、Canonicalとの提携はRISC-Vエコシステムにおいて重要な意味を持っている。RISC-Vアーキテクチャのオープン性やコラボレーションの精神を象徴するものであり、Ubuntuの採用は今後の開発に大きな影響を与えるだろう。
一方で、グラフィックス処理が必要な開発者には、AMDのRX500やHD6000シリーズのPCI Express対応GPUを利用することが推奨されている。このように、一部の機能は正式リリースまで制限されているものの、SiFiveは引き続きパートナーシップを強化し、最終的な完成度を高めていく方針である。
RISC-Vエコシステムの未来とSiFiveの新戦略
SiFiveは、RISC-Vエコシステムの拡大に向けた新たな戦略を打ち出している。同社は、「HiFive Partner」戦略と「HiFive Approved」プログラムを発表し、エコシステムパートナーと連携してさらなるシリコンソリューションを市場に提供する計画を明らかにした。これにより、RISC-Vの需要に応えるべく、多様なパフォーマンスレベルや価格帯のHiFiveボードを提供していく予定である。
この新しい戦略は、SiFiveの広範な製品ポートフォリオを強化するものであり、既に400以上のデザインが採用されている。同社は今後も、RISC-Vアーキテクチャに基づくプラットフォームを拡充し、多様なアプリケーションや市場に対応していくことを目指している。
また、SiFiveはこのパートナー戦略を通じて、スカラ演算やベクトル演算をサポートするボードの開発にも力を入れるとしている。これにより、RISC-Vの技術的進化はさらに加速し、エコシステム全体が一層発展することが期待されている。