VRヘッドセットの課題の一つは、利用者ごとに設定をやり直す手間がかかることだ。Appleはこの問題を解決すべく、visionOS 2.4のアップデートを発表した。これにより、「ゲストモード」の導入で他者との共有が容易になり、さらに新しいiPhoneアプリ「Apple Vision Pro for iOS」を通じて、ヘッドセットを装着せずにアプリの管理や映像の送信が可能になる。

ゲストモードでは、ヘッドセットを装着した際に所有者のiPhoneやiPadに通知が届き、そこで承認を行うだけで利用を開始できる。加えて、利用可能なアプリを制限したり、視界をAirPlayで共有したりする機能も備えている。Apple Storeのデモ体験に近い仕組みとなっており、家族や友人との利用がスムーズになる。

また、iOS 18.4では、iPhoneからvisionOSのApp Storeを閲覧し、リモートでアプリのインストールが可能に。これまでヘッドセット内でしか確認できなかったシリアル番号や、度付きレンズのApp Clipコードの管理もiPhone上で完結できるようになる。

さらに、新たに発表された「Spatial Gallery」アプリでは、Appleが厳選した空間写真や動画、Apple TVの人気作品の舞台裏映像を楽しめる。これは、Vision Proの空間コンテンツの魅力を体感できるアプリとして4月にリリース予定だ。

Vision Proのゲストモードがもたらす実用性の向上

Vision Proの新機能「ゲストモード」は、ヘッドセットを共有する際の手間を大幅に軽減する。従来、別のユーザーが使用するたびに所有者が手動で設定を行う必要があったが、このアップデートにより、所有者のiPhoneやiPadで承認するだけでゲストがすぐに利用可能になる。さらに、特定のアプリのみを使用可能にする設定や、AirPlayを通じてゲストの視界を共有するオプションも提供される。

この仕組みは、Apple Storeのデモ機と同様の動作となるため、新規ユーザーがVision Proを試す際のハードルが低くなる。例えば、家族や友人が興味を持った際、すぐに体験できる環境が整う。また、企業や教育機関での活用においても、複数人での利用がスムーズになることが期待される。ただし、ゲストのプロファイルは30日間で消去されるため、継続的な利用には制約がある。

これまでVision Proは、個人専用のデバイスとして設計されていた。しかし、Appleはこのアップデートによって、ヘッドセットの利便性をより多くのユーザーに広げようとしている。特に、家族やパートナーとの利用シーンが増えれば、Vision Proの存在感はさらに強まるだろう。ゲストモードの導入は、単なる利便性向上にとどまらず、VRデバイスの新たな使い方を提案する大きな一歩といえる。

iPhoneアプリ「Apple Vision Pro for iOS」がもたらす新たな操作性

Vision Proの新しいiPhoneアプリ「Apple Vision Pro for iOS」は、ヘッドセットの操作性を大幅に向上させる。従来、visionOSのApp Storeの閲覧やアプリのインストールは、Vision Proを装着しないと行えなかった。しかし、このアプリを使用すれば、iPhoneから直接App Storeを閲覧し、リモートでアプリをインストールできるようになる。

また、iPhone上でVision Proのシリアル番号を確認したり、度付きレンズのApp Clipコードを管理したりすることも可能だ。これまでのように、ヘッドセット内で設定画面を開いて情報を探す手間が省けるため、より直感的な管理が可能になる。さらに、iPhoneからVision Proに映像を送信する機能も搭載されており、これまでにない活用方法が生まれる可能性がある。

このiPhoneアプリの登場は、Vision Proの操作をよりシンプルにし、ヘッドセットの使用時間を効率化するという点で大きな意味を持つ。特に、新しいアプリを試したい場合や、設定を変更する際にヘッドセットを装着する手間がなくなることは、多くのユーザーにとって歓迎されるだろう。Appleは、Vision Proの体験を「ヘッドセット内に閉じ込めない」方向に進化させており、今後のアップデートによってさらなる利便性向上が期待できる。

「Spatial Gallery」が示すAppleの空間コンテンツ戦略

Appleは、新たに「Spatial Gallery」アプリを発表し、Vision Proの空間コンテンツを強化する姿勢を明確にした。このアプリでは、Appleが厳選した空間写真や動画、さらには『セヴェランス』や『シュリンキング』といったApple TV作品の舞台裏映像が楽しめる。これにより、Vision Proのユーザーは、より没入感のある映像体験を手軽に楽しめるようになる。

「Spatial Gallery」の登場は、AppleがVision Proを単なるVRデバイスではなく、映像体験のプラットフォームとして発展させようとしていることを示している。Apple TVのコンテンツとの連携を強化することで、今後さらに多様な映像作品が空間コンテンツとして提供される可能性が高い。特に、映画やドラマの舞台裏映像が充実すれば、エンターテインメントの新しい楽しみ方が生まれるだろう。

このアプリは、visionOS 2.4の正式リリースとともに4月に提供される予定だ。Vision Proのハードウェア性能を活かした空間コンテンツの普及は、Appleの独自性を強調する重要な戦略となる。今後、さらに多くのコンテンツが追加されれば、Vision Proの価値はますます高まり、より多くのユーザーに訴求する可能性がある。

Source:The Verge