AI GPUクラウドプロバイダーのGcoreは、フィンランドのテリアが運営するヘルシンキのデータセンターに新たなGPUクラスターを導入する。
このクラスターは1MW以上の計算能力を持ち、持続可能なエネルギーと高いセキュリティ基準が選定の決め手となった。
Gcoreは、柔軟な価格設定を採用し、契約後わずか1か月でクラスターの稼働を開始した。

GcoreのAI GPUクラウド導入の背景と目的

Gcoreは、AIやデータ処理のニーズが急増する中、高性能GPUを基盤としたクラウドインフラの拡充を目指している。特に、フィンランドのテリアが運営するヘルシンキデータセンターを選んだ背景には、同施設が提供する持続可能なエネルギーと優れたセキュリティ基準がある。これにより、Gcoreは環境に配慮しつつ、大規模なAIプロジェクトに対応する計算能力を提供することが可能となる。

Gcoreが導入するGPUクラスターは、1メガワット(MW)以上の計算能力を誇り、これにより、AIモデルのトレーニングやデータ分析におけるパフォーマンスを大幅に向上させることができる。近年、AI技術の進展に伴い、膨大なデータをリアルタイムで処理する能力が求められており、Gcoreはこの需要に応えるべく、同様の基盤を複数の地域に展開している。

また、テリアとの協力により、契約締結後わずか1か月でクラスターが稼働したことも特筆すべき成果である。この迅速な導入は、Gcoreが持つ技術力とテリアのデータセンターの柔軟なインフラ設計によるもので、これによりクライアントは即座に高性能なクラウド環境を利用できるようになった。

テリアとのパートナーシップによる持続可能なエネルギー利用

Gcoreがテリアのヘルシンキデータセンターを選定した大きな理由の一つは、持続可能なエネルギーの活用にある。このデータセンターは、水力、風力、太陽光といった再生可能エネルギーのみを使用して運営されており、環境負荷の軽減に寄与している。また、施設で発生する余剰熱は、ヘルシンキの数千世帯に暖房として供給され、地域社会にも貢献している。

テリアは、環境への配慮を企業戦略の中心に据え、EUの中でも競争力のあるエネルギー税制を活用しながら、効率的な運用を実現している。これにより、Gcoreはコスト効率の良いクラウド基盤を提供しつつ、持続可能なビジネスモデルを維持できる。環境に配慮した運用は、特に持続可能な開発目標(SDGs)に取り組む企業にとって魅力的な要素であり、Gcoreの選定理由にもつながった。

さらに、テリアとの提携により、Gcoreは柔軟な価格設定モデルを採用することができた。データセンターの運用に必要なエネルギー量に応じて料金が変動するため、需要に合わせた効率的なコスト管理が可能となっている。これにより、Gcoreは拡張性と経済性を両立したクラウドサービスを提供できるようになった。

データセンターの拡張と将来の展望

テリアのヘルシンキデータセンターは、2018年に24メガワット(MW)の容量で稼働を開始したが、将来的には100MWまでのIT負荷に対応できる設計がなされている。この拡張性は、急速に成長するクラウドサービスやAI技術の発展に対応するために不可欠であり、Gcoreにとっても大きな魅力であった。

現在、この施設は34,000平方メートルの広さを持ち、2024年5月にはさらに4MWの容量追加が発表された。この追加設備は2025年初頭に完成する予定であり、Gcoreを含む顧客の将来的な需要に応える準備が進んでいる。モジュール式の設計が特徴であり、必要に応じて迅速に設備を増設できることが、成長を続ける企業にとって大きな利点となっている。

また、テリアはデータセンターの無停電電源装置(UPS)をフィンランドの電力網に接続しており、必要に応じてエネルギーを供給することができる。この柔軟な運用体制により、安定した電力供給と持続可能なエネルギー利用を両立しており、エネルギー効率の向上に寄与している。Gcoreはこうした高度なインフラを活用し、顧客のニーズに応える高度なクラウドサービスを展開していく。

Gcoreのグローバル展開と今後の計画

Gcoreは、AIとエッジコンピューティングの分野で急速に成長している企業であり、ヘルシンキを含む世界各地でクラウドインフラの拡充を進めている。2024年には韓国にも進出し、NHNクラウドと提携して320基のNvidia H100 GPUを搭載したサーバークラスターを展開した。これにより、AIやデータ処理の高速化に向けたグローバルネットワークの構築が進められている。

Gcoreは、2023年にはルクセンブルクとウェールズにも同様のクラスターを導入し、エッジAIクラウドサービスの提供を拡大している。さらに、サーバーレスエッジソリューション「FastEdge」の導入により、エッジコンピューティングの利便性を大幅に向上させた。これにより、ユーザーは従来のサーバーインフラに依存せず、柔軟でスケーラブルなシステムを活用できるようになっている。

今後もGcoreは、AIとクラウド技術の需要が高まる中で、各地域でのインフラ拡充を継続する方針である。テリアとの提携をはじめとする戦略的なパートナーシップを通じて、より多くの企業や開発者に向けて、高度なクラウドサービスを提供していく計画だ。