GoogleがChromebook上でWindows仮想デスクトップを提供する「Parallels for ChromeOS」を終了する見通しが明らかになった。これに代わって、Googleが買収したCameyoのVirtual App Delivery (VAD)技術を活用し、Windowsアプリを直接実行する方向へとシフトしている。Parallelsの更新が18ヶ月以上途絶えていることからも、この動きは既定路線とされている。

Parallels for ChromeOSの終了が示唆される

Googleは、Chromebook上でWindowsアプリを実行可能にする仮想デスクトップソリューション「Parallels for ChromeOS」を終了させる見込みである。これは、Chrome Unboxedの報告によれば、同ソフトウェアの主要なアップデートが18ヶ月以上も行われていないこと、さらにプロジェクトそのものがすでに放置されている状態であることから、廃止が濃厚だとされている。

2020年にGoogleとParallelsが提携し、WindowsデスクトップをChromebook上で利用可能にしたこの実験的な試みは、期待を集めながらも、特に中小企業向けのソリューションとして広く普及することなく、その役割を終えようとしている。

一部の報道では、正式な終了の発表は年内に行われるとされており、今後、既存の利用者に対しては通知があると見られている。WindowsアプリケーションをChromebook上で利用するというコンセプトは、セキュリティやコスト削減の観点から非常に魅力的であったが、特に予算の限られたIntelやAMDのチップセットを搭載したデバイスでの性能向上に対する技術的な限界も指摘されていた。これにより、Parallels for ChromeOSの役割は事実上終焉を迎えようとしている。

Cameyoの買収による新たな方向性

GoogleはParallelsに代わる新たなソリューションとして、2023年にアプリケーション仮想化技術を提供するCameyoを買収している。この買収により、Windowsデスクトップ全体を仮想化するのではなく、個々のアプリケーションをChromeOS上で動作させることが可能になる技術「Virtual App Delivery(VAD)」の活用が進められる。

これにより、Windows OS全体を仮想化する重い負荷を避け、より効率的に特定のアプリケーションを動作させることができるという点が、Googleにとって魅力的な解決策となった。CameyoのVAD技術は2022年からChromeOSに統合されており、その成果は非常に好評であった。

その結果、Googleはこの技術を正式に自社の戦略に組み込むことを決定し、Cameyoの買収に至ったと考えられている。Parallels for ChromeOSが終焉を迎える一方で、Cameyoを活用したアプリケーション実行方式は今後さらに拡大することが期待されている。この動きにより、ChromeOSでのWindowsアプリ利用に新たな活路が開かれるだろう。

Virtual App Delivery (VAD)の未来

CameyoのVirtual App Delivery (VAD)は、従来の仮想デスクトップ方式とは異なり、Windowsアプリケーション単体を仮想化する技術である。これにより、従来のParallelsのようなフルデスクトップ仮想化に比べ、リソースの使用量が大幅に軽減される。また、Chromebookのような比較的低スペックなデバイスでも快適にアプリを動作させることができる点が特徴である。

さらに、VADはセキュリティ面でも優れており、Cameyoはゼロトラストセキュリティモデルを採用している。これにより、企業は安心して従業員にリモートワークを提供できる環境を整えることができるとされている。特に、セキュリティが重視される企業環境において、この技術は強力なツールとなることが期待されている。GoogleがCameyoを買収した背景には、こうしたセキュリティとパフォーマンスの両立が重要な要素であったと考えられる。

今後、VADがどの程度Chromebookユーザーに受け入れられるかは未知数だが、少なくとも現時点ではエンタープライズ向けに限られている。しかし、この技術が進化し、一般ユーザー向けにも提供される可能性は十分にある。

Chromebook上でWindowsアプリを実行する新たな可能性

Parallels for ChromeOSが終了する一方で、WindowsアプリをChromebook上で利用するというニーズは依然として存在している。CameyoのVAD技術は、そのニーズに応える新たな方法として期待されているが、現時点では主に企業向けのソリューションである。だが、ChromeOS上でWindowsアプリケーションを動作させる消費者向けの解決策が今後登場する可能性も指摘されており、この領域にはまだ発展の余地が残されている。

Googleは過去にも多くのプロジェクトを終了させた歴史があり、その「墓場」にParallelsが加わることになる。しかし、今回は単にプロジェクトを終了させるのではなく、Cameyoという代替手段を提供することで、Windowsアプリの利用をさらに推進している点が異なる。ユーザーにとっては、Cameyoが本当にParallelsの代替として機能するかどうかが大きな関心事となるだろう。

現時点で、個別のアプリを仮想化して実行するVAD技術がどこまで普及するかは不明だが、ChromeOSの新たな可能性を切り開く一手段として注目されている。