現代のPCには、個人情報や機密データが多数保存されている。これらのデータを不正アクセスから守るためには、Windowsが提供する強力な暗号化技術が不可欠である。特に、デバイスの盗難や侵入に対して、暗号化が施されていない場合、情報が簡単に漏洩するリスクがある。
Windowsの暗号化機能とは?
Windows 10やWindows 11には、システムドライブを暗号化するための強力な機能が標準搭載されている。通常のWindowsエディションには「デバイス暗号化」と呼ばれる機能があり、ビジネス向けのPro、Enterprise、Educationエディションではさらに高度な「BitLockerドライブ暗号化」が利用可能だ。このBitLockerは、システムドライブだけでなく、外付けドライブやUSBメモリなどのリムーバブルドライブにも対応している点が特徴である。
暗号化によって、デバイスが盗まれた場合でも、正しいサインイン情報がなければデータにアクセスできなくなる。たとえば、攻撃者がUSBメモリを使って別のOSを起動しようとしても、システムドライブが暗号化されていれば48桁の回復キーが求められ、これを入力できなければデータを読み取ることは不可能だ。データ漏洩を防ぐために、これらの暗号化機能を利用することは非常に重要である。
なぜ暗号化が重要なのか
PCに保存されているデータが暗号化されていない場合、攻撃者は様々な手法を用いてそのデータにアクセスできる可能性がある。デバイスが盗難に遭った際、あるいは一時的に離席した際でも、攻撃者は不正にOSを起動し、ハードディスクに保存されているファイルに直接アクセスしようとすることが考えられる。特に、個人情報や金融データなどの機密情報が含まれている場合、そのリスクは極めて高い。
暗号化が施されたドライブでは、これらの攻撃に対して非常に強力な防御が働く。システムドライブが暗号化されていれば、正規のログイン情報や回復キーがなければデータを読み取ることはできない。また、暗号化によって、たとえ攻撃者が物理的にハードディスクを取り出したとしても、内容が保護されているため、情報の漏洩は防がれる。このため、暗号化は現代のデジタル社会において不可欠な防御策である。
暗号化に必要なハードウェア条件
Windows PCでシステムドライブを暗号化するには、いくつかのハードウェア要件を満たす必要がある。まず、PCにはTrusted Platform Module(TPM)チップが搭載されていることが条件であり、TPMのバージョン1.2以上が必要である。また、システムはUEFIファームウェアを使用して構成されており、セキュアブートが有効化されていなければならない。これらの条件を満たしていない場合、BitLockerなどの暗号化機能は正常に動作しない。
ほとんどのPCは、2017年以降に販売されたものであれば、これらの条件を満たしている。また、TPMチップが搭載されているかどうかは、デバイスマネージャーで「セキュリティデバイス」を確認することで確認できる。この項目が存在しない場合、そのPCにはTPMが搭載されていないということになる。これらのハードウェア条件をクリアすれば、Windowsでの暗号化を容易に設定できる。
BitLockerを使った高度な暗号化の手順
BitLockerは、Windowsのビジネスエディションに搭載されている強力な暗号化ツールである。この機能を使えば、システムドライブだけでなく、外付けドライブやUSBメモリなども暗号化することが可能だ。BitLockerの設定は、スタートメニューから「BitLockerの管理」を検索し、表示されたウィザードに従って行うことができる。ウィザードでは互換性チェックが行われ、システムが暗号化に対応しているかどうかが確認される。
設定が完了すると、回復キーの保存が求められる。この回復キーはデバイスが何らかの理由で正しく起動しなかった際に必要となるため、安全な場所に保存しておくことが重要である。暗号化が開始されると、デバイス上のすべてのデータがBitLockerによって保護される。特に、外出先や共有デバイスでのデータ保護に非常に有効な手段となるため、積極的に利用すべき機能である。