アップルは、2025年に自社開発の5Gモデムを初めて搭載したiPhoneを発売すると報じられている。これにより、長年パートナーシップを築いてきたクアルコム製モデムから脱却し、完全な独立性を追求する形となる。
第一弾の搭載モデルは、廉価版「iPhone SE」の新型と見られ、同時にTouch IDを廃し、Face IDを初採用する可能性も示唆されている。クアルコムは2026年までアップルにチップを供給する契約を結んでいるが、アップルの独自技術への転換は業界構造を変える可能性がある。
これにより、クアルコムはスマートフォン市場以外の分野への進出を急速に推し進める必要性に迫られる。一方、アップルは2019年にインテルのモデム事業を10億ドルで買収して以来、自社チップ開発を強化。サプライチェーンの刷新と新技術導入に向けた動きを加速させている。
アップルがクアルコム依存から脱却を図る背景
アップルが自社製5Gモデムを搭載したiPhoneの開発を進める背景には、クアルコムへの依存からの脱却がある。同社は2019年にインテルのモデム事業を10億ドルで買収し、モデムチップの内製化に向けた基盤を整えてきた。この動きは、部品調達コストの削減や技術革新を自社で制御することを目的としていると考えられる。また、独自モデムの開発は、クアルコムなどの他社に対する交渉力を強化する狙いも含まれているだろう。
さらに、過去の報道によれば、アップルはブロードコムと5G用高周波部品の共同開発を進める複数年契約を結んでおり、自社チップ開発の範囲をさらに広げる姿勢を見せている。これにより、同社のサプライチェーン戦略は大きな変化を迎えつつある。アップルのこうした動きは、スマートフォン市場の競争激化を背景に、製品の差別化と利益率の向上を狙うものと分析できる。
この取り組みにはリスクも伴う。モデムチップは高度な専門技術を要する分野であり、競争相手となるクアルコムや他のサプライヤーは依然として強力である。アップルが自社技術をどれほど迅速に完成させ、消費者に提供できるかが、今後の成否を左右するだろう。
クアルコムとスマートフォン市場の行方
クアルコムは、モデム技術のリーダーとして、アップルへの供給を収益の柱としてきた。同社は2026年までアップルにチップを提供する契約を結んでいるが、アップルの独立化により、収益の一部が失われる可能性が高い。これに対応するため、クアルコムはAI対応データセンターやラップトップ市場への進出を強化している。
一方で、クアルコムの主力事業であるスマートフォン市場は飽和状態に近づいている。特に、高価格帯のスマートフォン市場では、アップルが圧倒的なシェアを握っている。このため、同社が成長を維持するには新たな収益源の確保が急務である。ブルームバーグの報道によれば、投資家もこうした状況に注目しており、同社の多角化戦略がどこまで実現するかが問われている。
クアルコムにとって、アップルとの関係悪化は短期的にはリスク要因であるが、長期的には競争力のある技術で新市場を開拓する契機ともなるだろう。同社がこれをどのように乗り越えるかは、業界全体にも影響を与える重要なポイントとなる。
次世代iPhone SEに期待される進化
次期iPhone SEは、アップルの自社製5Gモデムを搭載するだけでなく、Face IDの初採用が期待されている。これにより、従来のTouch IDを廃止し、セキュリティ性能とユーザーエクスペリエンスの向上を目指すと見られている。Face IDはすでに高価格帯モデルで採用されており、SEシリーズへの導入は、アップルが廉価版市場でも先進技術を普及させる意図を示していると言える。
廉価版iPhoneは、多くのユーザーにとってアップル製品へのエントリーポイントとなっている。そのため、新型SEの成功は、同社の市場シェア拡大に直結する重要な意味を持つ。また、これが他社製品と比較してどれだけ競争力を持つかは、価格設定と技術のバランスに依存する。
アップルの次世代モデム技術がiPhone SEにどのような実用的メリットをもたらすのかは、依然として未知数であるが、独自チップの導入は競争力の強化に向けた重要な一歩であることに疑いはない。技術の完成度と市場の反応が、このモデルの成否を左右するだろう。