SamsungのGalaxy Z Fold 6は、前モデルと比較して販売が約10%減少している。毎年のアップデートが魅力的でなかったことが一因と考えられるが、実際には折りたたみスマホ全体が直面しているより大きな問題がある。
折りたたみスマホは画期的な存在と見なされていたが、消費者の間で購入意欲は高まらず、その理由には高額な価格や既存の大画面スマホとの違いの薄さがある。こうした課題に対し、今後のソフトウェア面での進化が鍵を握っている。
折りたたみスマホに対する消費者の関心が薄れる理由
折りたたみスマホは画期的な技術として注目を集めたものの、実際の購入意欲は低迷している。Galaxy Z Fold 6を例にとっても、その存在に興味を持つ人は多いが、実際に購入に踏み切るユーザーは少ない。高額な価格設定が一つの要因であることは間違いないが、それ以上に問題なのは、折りたたみスマホが従来のスマートフォンと比べて、ユーザーに「必須」と感じさせるだけの差別化ができていない点である。
消費者は、折りたたみスマホの画面サイズや使い勝手に一時的な興味を持つものの、実際の使用感やメリットが現在のスマートフォンと大差ないと判断すると、購入のモチベーションが下がってしまう。また、画面が大きくなることで得られる利便性も、既存の大画面スマホとの差がさほどないため、わざわざ高い費用を払う価値を見出せないのだ。結果として、折りたたみスマホは「面白いが必要ではない」という認識が広まり、販売が伸び悩んでいる。
大画面スマホとの競合で見えてきた課題
折りたたみスマホは、画面を大きくすることで従来のスマートフォンとの差別化を図ろうとしている。しかし、現在のスマートフォン市場では、すでに6.8インチや6.9インチの大型ディスプレイを持つモデルが主流となりつつある。例えば、Galaxy S24 UltraやiPhone 16 Pro Maxなどは、大画面でマルチタスクや動画視聴に適しており、ユーザーはわざわざ折りたたみスマホを選ぶ必要性を感じなくなっている。
さらに、折りたたみスマホは大画面化のメリットを生かしきれていない部分も多い。特に動画視聴やゲームプレイにおいては、プラスチック製の画面プロテクターの存在が操作性を低下させてしまう。結果として、折りたたみスマホの「大画面」がユーザーにとって魅力的な機能ではなくなっているのが現状だ。このような状況では、既存のスマートフォンに対して折りたたみスマホが優位性を持つことは難しい。
高額な価格に見合う価値を提供できていない現状
折りたたみスマホの最大のハードルは、その高額な価格に対する価値がユーザーに伝わっていないことである。Galaxy Z Fold 6は約2,000ドルという価格設定だが、その価値を正当化する要素が不足している。折りたたみスマホは、従来のスマートフォンよりも重く、耐久性にも不安がある上に、カメラ性能の面でも劣ることが多い。このようなマイナス要素が積み重なり、ユーザーは「なぜ高いお金を払ってまで折りたたみスマホを選ぶのか」という疑問を抱く。
また、折りたたみスマホの最大の特徴である「画面を広げられる」こと自体が、実際の使い勝手に大きな差を生まないことも問題である。多くのユーザーにとって、折りたたみスマホは単なる「大きなスマートフォン」に過ぎず、独自の価値を提供できていない。このままでは、折りたたみスマホが高額なだけの存在として市場から淘汰されてしまう可能性が高い。
折りたたみスマホの未来を切り開くために必要なソフトウェアの進化
折りたたみスマホが市場で成功を収めるためには、ハードウェアだけでなくソフトウェア面での進化が不可欠である。単に画面を広げるだけでは、ユーザーに新たな価値を提供できない。例えば、Microsoft Surface Duoが示したようなマルチタスクの可能性を最大限に引き出すことが重要である。異なるアプリケーションを同時に表示し、効率的に操作できる環境を整えることで、折りたたみスマホならではのメリットを提供することが求められる。
さらに、AR(拡張現実)技術を取り入れたソフトウェアの活用も期待される。折りたたみスマホを開いた際にAR表示が可能となれば、地図情報やレビュー、店舗情報などを瞬時に表示できる新たな使い方が生まれるだろう。こうした革新的なソフトウェアの進化こそが、折りたたみスマホを「単なる大きなスマートフォン」から「新しい体験を提供するデバイス」へと変える鍵である。